第32話 アトランティスの街並み

【水の惑星・アーウォース】

《罪の大陸・アトランティス》


 第三期生一同は、深海で圧倒的に存在感を放つ国に、目を奪われつつアマミノの跡に付いて行く。そして、その大陸の淵。何十mはある城門の前にたどり着いた。

 その城門の前には、当然のことながら門番がおり、着物の上に不自然に鎧を着た女性が、門の淵に2人づつ付いている。アマミノはそのうちの右にいた2人に話しかける。


「アマミノです。 地球の侵略者を連れ、戻りました」

「話は聞いています。 どうぞ……」


 すると、城門がうなり声をあげながら少しづつ開き、人が通れるほどの大きさまで開く。アマミノはその門番に感謝を述べると、一同に軽く頷いた。通っても良いということだろう。

 第三期生たちは緊張のあまり声も出ず、静かに門を通り過ぎていった。綸先輩はというと、何度も通っているのか平然としていた。

 門を通り過ぎると、外から薄っすら見えた透明の半球が目の前に現れた。


「これは何なのですか?」


 梨花がアマミノに質問を投げかける。アマミノは梨花の質問に対し、その半透明な半球を叩き、実演しながら説明をする。


「これは空気の層です。 元は地上に住んでいたので、その名残みたいなものです」


 すると、玲一が物珍しそうにその空気の層に手を触れる。


「アトランティスの技術……。 思っていた通り凄まじいですね」


 アマミノはキョトンとした顔で、手を顔の前で横に振る。


「違いますよ。 これは姫様の特殊な能力です」


 そしてアマミノはそのまま玲一に、訂正を重ねる。


「そもそもアトランティスの技術はそんなに高いものはないですよ。 地球の文化で言うと、中世辺りの文化レベルですかね」

「うそぉ!!」

 

 玲一は自分の想像と違ったアトランティスに驚愕し、その後残念そうに肩を落とす。その様子を見ていたアマミノが、顔を引きつりつつ謝罪する。


「はよ行くぞ変態2号!」


 綸先輩が玲一を蹴り、空気の層の中に飛ばした。玲一は、空気の層に入ったことにより、地球と同じように地面に叩きつけられ擦られていく。10mほどスライドしたところで止まったが、玲一は動かない。


「ありゃ、死んだか?」

「死んでません」


 綸先輩の冗談に素早く反応する玲一。とりあえず、大事には至ってないようだ。そして、玲一は痛がる様子もなく立ち上がと目の前の光景に呆気を取られる。


「な、何これ……」


 玲一の反応が気になる第三期生一同は、皆順に空気の層に入っていく。

 そこに広がっていたのは、明らかに地球とは全く異なった文化を突き進んだであろう渦を巻いたような建物や、オレンジ色の炎が立ち並ぶ街の風景だった。

 まるでファンタジー世界に来たような感覚に陥ってしまいそうなその光景は、再度第三期生たちを釘付けにした。


「すっごーーーい!! 私ここに住みたいかも☆」

「確かにすごいわね」

「こんな世界があるとは……。 宇宙はまだまだ広いということか」

「すごいですね綸先輩。 “罪の大陸”なんて言葉が想像できないです」


 美大、梨花、怜雄、槐がそれぞれ反応すると、後から空気の層に入ってきた綸先輩が、ドヤ顔をしていた。


「フフフッ……。 期待通りの反応だな! よかったなアマミノ。 とりあえずは国を潰されずに済みそうだぞ」

「不謹慎なことを言わないでください。 でも、気に入ってもらえて本当に良かったです」


 アマミノも満足げな顔をし、ホッと胸を撫でおろす。

 すると、街の奥からガシャガシャと金属、というより鎧がぶつかる音を立てながら大軍が近づいてくる。その中には、ここに来るまでの間に別れたモアナマや一緒にアマミノといた者たちがいるのが確認できた。彼女らは門番の人たちと同様に、着物の上に鎧を着ており、剣や盾、槍といった武器まで装備していた。

 何事かと警戒する第三期生たちは、各々臨戦態勢に入る。その姿を見た、他の者より角が異様に長い先頭の女性が急いで頭を垂れる。


「本日はアトランティスにお越しいただき感謝する。 我々は、あなた方と戦争するつもりは微塵もございません。 なので、そんなに身構えないでください」


 梨花はその異様な光景に対し、疑問を唱える。


「武器も整え、鎧も着ている。 本当に信じていいのかしら?」


 先頭の女性は顔を上げ、その眼差しで梨花に理解を求める。


「これは一大事の為です。 こちらもそれなりに警戒しているということです。 私たち“龍国軍”の勤めでございます」

「ふうん……。 まぁ、私たちはそちらから見たら悪者ですものね」


 そういうと梨花は、発現させていた能力を解いた。それに続き、第三期生達は臨戦態勢を解き始める。

 そして、一同が能力を解き終わるのを確認すると、戦闘にいた女性がまた頭を垂らす。


「挨拶が遅れてすまない。 私は。 この龍国軍の大将を務めている者だ。 今回は、あなた方侵略軍の送迎に参りました」


 すると、その大軍の後ろから現れたのは、地球でいう馬車のようなものなのだろうか。見たこともない馬と龍が混ざった様な黒が特徴的な生物が2匹、とても長い屋形を引いている。

 一同はサネイラに勧められるがまま、その馬車に乗り込み水龍人達の姫がいる城へと向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ようこそ侵略者側へ!! 霜月 京 @ShimodukiMiyako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ