第31話 罪の大陸・アトランティスへ向けて
【水の惑星・アーウォース】
《アトランティスに向けて》
第三期生と綸先輩、アマミノの計7人はアトランティスに向けて泳いでいた。だが、水をかき分けるように泳ぐのではない。少しバタ足の動作をするだけで、機体に取りつかれている小さなモーターが作動し、前へ推進力を与えてくれる。これによって第三期生と綸先輩は、その重い機体を水中に浮かべられている。
以前、綸先輩とアマミノは楽しく会話をしていて、それを眺める第三期生一行。どうにも今回の作戦について腑に落ちない怜雄が動き出す。
「あの……会話中すまない」
ダメだ。怒った顔を無理に笑顔を作り変えようとしているせいで、昔のヤンキーのような顔になっている。
それを不快に思った綸先輩が、怜雄と同じ顔をして返す。
「なんやデカブツ! 空気読めや」
急に雰囲気がガラッと変わってしまいオドオドしだすアマミノ。怜雄は、そんなことお構いなしに話を続ける。
「話だ。 俺らはアトランティスのこと何も知らないんだが」
そう言うと怜雄は、アマミノを横目で見る。アマミノは、その鋭いまなざしにビビってしまい、声も出せない状況になってしまった。
「(ミカさん、機体に顔を付けたのは間違いなのでは……)」
すると綸先輩が、背負っていた槍で怜雄を勢いよく叩く。怜雄が叩かれたことも驚きだが、それよりも驚いたのはその速さだ。槍を掴んだところまでは見えたが、そこからは一瞬で、何が起きたのか分からなかった。
「戯け! いちいち私の愛人を脅すでない。 お前は自分の顔を見たことがないのか」
綸先輩は今にも泣きだしそうなアマミノを頭を撫でながら慰め始める。アマミノが落ち着いたところで、震える声で話をする。
「あ、アトランティスは、今は水龍人達が集う国です。元はそこの人が知っている通り、地球にあった大陸の一つです……」
………………。
「それだけか……?」
怜雄は、あまりにも簡潔に話されてしまい、思わず口を挿む。それを見かねた綸先輩が、頭をくしゃくしゃと掻きむしり、アマミノのを除け代わりに話し始めた。
「お前らはアトランティスを知らんのか?!! あの古記にも書かれていた伝説の大陸だぞ」
玲一以外の第三期生たちが頭を横に振る。なぜだか、玲一だけは嬉しそうに勢いよく頭を縦に振っていた。それはもうヘドバンの様に……。
「はぁ~。 アトランティスは罪の大陸だ。 その昔、神域者の長“ゼウス”の怒りを買って、沈められたとされている。 だが、本当は沈められたんじゃない。 地球から消された。 つまり、この星へと転移させられたのだ。 神域者たちも、もう二度とこの忌々しい大陸を見たくなかったんだろうな。 そして、いつの日か利用価値が見いだせる可能性があると踏んで、
その話を聞いた玲一がまた興奮した。
「だから地球のどこを探してもなかったのですね!! なるほどなるほど」
「落ち着け変態2号!」
先ほどの怜雄同様、玲一にも綸先輩からの怒りの槍が飛んできた。その光景はいつの日か見た撫子先輩の様にも思えた。
「(そういえば、綸先輩は撫子先輩と知り合いっぽかったし、似たのかな)」
「んあ? 槐、撫子がどうした」
どうやら槐の心の声は漏れていたみたいで、撫子先輩について綸先輩から問われる。
「いえ、何だか似てるなぁ~っと思いまして」
「そりゃ教え子だからな」
「えっ! ってことは綸先輩って結構なおと……」
美大が綸先輩の聞いてはいけないであろう事を喋ろうとした瞬間、また槍が見えない速度で飛んでくる。槍の餌食はこれで3人目となった。
「女ならわかるだろ。 そのことは聞いていかんぞ」
「は、は~い☆ でも痛すぎ―!」
これまでにない恐ろしい微笑みと眼差しを、ものともせずいつもの明るい笑顔で答える美大。さすがはミカの娘、そこら辺の耐性はもっている。
一同は、そんな話を続けながら数十分泳ぎ続けると目の前に、ぼんやりと広範囲に広がる白い光が見えた。そして、その光の方に近づく。
「皆さん、もうすぐでアトランティスに着きます」
そして、光が一層強くなるのを感じ、目を閉じる。
次の瞬間、閉じた目を再び開くと、そこには水中に不可思議と海底へと繋っているであろう大地の上に、光と白い外壁が特徴的な国・アトランティスが、透明の半球に包まれ眼下に広がっていた。
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