第5話 ハジマリ

よく晴れた空。

日はポカポカと地上をあたため、小鳥のさえずりが耳に届く。


問、今の状況を一語であらわせ。

答、   平和

みたいな。なんてことない春の一日。


でも、現実は<平和>とは遠くかけ離れていて。


人類は今、衰退の一途を辿っていた。

なにもここ数年というわけではない。

もうずっと。何百年という長い時間、人類は魔物によって苦しめられてきた。


魔物は人間を玩具おもちゃだとしか認識していない。

いや、魔物じゃないから本当のところは知らないけれど、でもヤツらが本気で人類を滅ぼそうと思い、行動しているなら、人類なんて今頃絶滅種に認定されているから。


でも、それもしょうがない。

魔物と人間の間にはあまりに大きな性能差という壁が立ちはだかっているのだから。

魔物は個体差の激しい生き物だが、いわゆる雑魚、モブレベルでも人間の20倍の身体能力を持つとされている。

奴らが本気を出したら......。それこそ、「さよなら人類」への一方通行は免れない。


しかも、奴らは異常に自然治癒能力が高いときた。

斬っても斬っても大抵の傷ならものの数分で全回復。

一定のダメージを負わせるまで奴らは再生をくりかえす。


これじゃあ、る気が萎えるのも必然。

いや、る気があってもれないもんはれないのだけれど。


浅黒く、皮膚が溶けたような、肌を持つ醜い魔物。

どこから来たのか、何が目的なのか、一切不明。

弱点、無し。

魔物の生態、未知。

知能、極めて高い。


そんな化けモンが跋扈するセカイの中。

人類は、そのとどまることを知らない向上心と好奇心と傲慢を武器に、魔物に対抗するための術を、魔物に怯えなくてすむ自由な日々を求めて。


そうして生み出されたのが、光芒こうぼう軍。

彼らは残った人々をまとめ上げ、セカイの端の都市に退魔結界を張った。

それが300年前。

結界に囲まれた小さなセカイとはいえ、光芒こうぼう軍の働きにより人類は束の間の平和を手に入れて。



そして、今日は光芒軍付属光幻高等軍事学校こうげんこうとうぐんじがっこうの入学式で、

今はその入学式のあとのクラス開きの最中だった。


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宇宙《きみ》に捧げる鎮魂歌《レクイエム》 群青 澄華 @spica13

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