最終話 正しい聖女さまの出来上がり
「汝、ティアラ・レーネス・レガリアは、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことをここに誓いますか?」
「はい……誓います」
「汝、アルジェンド・アンテーゼ・ティターニアは、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことをここに誓いますか?」
「はい、誓います」
「ならばその証しとして、二人の熱き抱擁を皆と神の前にお示しください」
アリスの誘拐事件から約二年。
兼ねてより噂されていた姉様とアルジェンドの結婚式当日。二国間の同盟を象徴する二人の結婚は多くの国民から祝福された。
「ふぁぁ、眠いよミリィ」
「ちょっと、姉様の大切な式になに眠たそうな顔をしているのよ」
一時はロベリアの不完全な術のせいで言葉を失ったアリスだったが、テレスティアの聖痕と、姉様の術のお陰で無事完治。その後、姉様を主体とした儀式にアリスが力を増幅させる形で、ドゥーベにかけられた血の呪いを解くことができた。
本当ならば声を取り戻せたアリスに任せればいいのだが、豊穣の儀式のように大規模なものは体に大きな負担がかかってしまう。そのため18歳を迎えていないアリスには難しいだろうとの判断から、姉様が儀式を執り行い、聖戦器を保有したアリスがサポートする形が取られたのだ。
まぁどちらかというと、セリカさんとの約束の方が強かったのではあるが。
「ふぁぁぁ」
「ちょっと、なに貴女まで欠伸をしているのよ」
「だって、話がながいんですもの」
まったく、何処までこの子はアリスに似ているのよ。
眠たそうにしているアリスの隣で、同じく欠伸をして眠たそうな顔をしているテレスティア。
未だアリスにセリカさんの事情を説明してはいないが、本能的に惹かれてしまった二人はいつの頃からか、「お姉さま」「テレスちゃん」と呼び合うようになり、今じゃすっかり仲良し姉妹となってしまっている。
「はぁ、何だかアリスが二人に増えた気がするわ」
現在目の前で粛々と進行していく結婚式。思い返せばこの二年の間で色んな出来事が風のように過ぎ去っていった。
ドゥーベの大地に掛けられた血の呪いを浄化してから約1年後、めでたく18歳を迎えたアリスは、レガリアの大地を浄化すると共に国を代表する聖女となった。
もともとアリスなりにもある程度の状況を把握してはいたのだろう。国の状態を知り、聖戦器まで作った挙句ドゥーベ国すら救ってしまったのだ。その上でレガリアでの儀式では姉様がサポートに回り、アリス主導のもとで行われたのだから、自分が聖女の座につくのは簡単に想像できるというもの。
その後、各国の要請のもとに大陸全土を浄化しに回り、この大陸から全ての血の呪いが消滅したのがほんの数カ月前。
これで何百年もかけた聖女達の役目も終わりを告げた。今後、聖女の役目は国の象徴として崇められていくことだろう。
「それにしてもなんで私が聖女になるのよ」
アリスに聖女を継承したことで姉様は引退。これからはドゥーベ王国の聖女としてその席につくんだとか。
レガリアとしては聖女の血を他国へ出すのはどうかと議論しつづけてきたが、ドゥーベの聖女であるアリスがレガリアにおり一国で二人の聖女を抱えるのは、今後情報が漏れた際の対応で批判を受けるだろうとの判断で、この度めでたく結婚となった。
それがなぜいきなり私が聖女になるという話になったかというと、この大陸を救った聖女はレガリアだけものじゃないと、多くの国々から多数声が上がってしまい、現在アリスは大聖女だ、白き天使だのと数々の異名で呼ばれている。
つまりアリスはレガリアだけの聖女ではなく、大陸全土から慕われる聖女に格上げされてしまい、その空いてしまった空席に私が着いてしまったというわけ。
まぁ、本来聖女の与えられた役割はもう存在しないからね。豊穣の儀式は必要なくなったし、力を行使しろと言われれば大概のことはアリーアルを介して出来てしまう。
どうやらこのアーリアル、私が思っていた以上のチートアイテムだそうで、癒しの奇跡は使えるわ、魔法のような技が出せるわで、私でもなんちゃって聖女が出来てしまうというのだから驚きだ。
もっとも、これが出来るのは姉様以上の力が眠っている私だから出来るそうなのだが。
『『『ワァーーー』』』パチパチパチ
式典が終わり、姉様とアルジェンドがみんなの祝福を受けながら退場してく。
ここで少し、ロベリア達のその後を紹介したい。
ドゥーベ王国は新たな王を迎え現在復興に取り掛かっている。
長年あの王制に苦しんできただけあり、国内の状態は最悪。今は前国王の血筋から新たな王を迎え、レガリアの監視のもとで正しく国が運営されている。
そんな中で現在復興に力を注いでいるのがロベリアとシオンの二人。
二人はアリスの誘拐を企てた罪を償い、自由の身となった後もドゥーベ王国のために働いている。おそらく二度と表舞台には立てないだろうが、ティターニア公爵家がそんな二人を援助しているので、心配するようなことは起こらないだろうとのこと。今回の一件で、正式にティターニア公爵となったアルジェンドが言うのだから間違いないだろう。
そして一人残されたライナスだが、残念なことに彼は最後の最後まで強硬な態度を示してしまい、遥か西にあるアルタイル王国の聖女に頼み、彼の王族時代の記憶を消去した上で国外追放とされてしまった。
なんでもあの国には現在も聖痕を継承している聖女がおり、彼女の術で今回の執行となった。
まったく驚いたわよ。血の呪いを浄化するためにあの国を訪れたのだけれど、聖痕を継いだ聖女はいるわ、彼女を守る聖獣がいるわで、思わずどんなチート国家なのよと、軽く言葉で突っ込んだものだ。
まぁ、そんな彼女もここにたどり着くにまでに色々悲しい出来事もあったらしいから、一方的な意見をぶつけるのはどうかとは思うけどね。
そうそう、妙にアリスと意気投合しちゃったのはやはりチート同士惹かれあってしまうのだろうと、軽く付け加えておく。
最後にドゥーベ国王と王妃であるマグノリアだが、レガリアでの幽閉の後にドゥーベ側に送還。その後貴族裁判に掛けられることとなる。
罪状自体はハッキリと発表はされてはいないが、長年国民を苦しめた罪と、レガリアへの戦争を強引に推し進めた罪とで、十数名の家臣達と共に北にあるという監獄へと送られていった。
またマグノリアに関してはセリカさんを奴隷商人に売った罪や、母親である前聖女を死に至らしめた罪、そして私たちの母でもあるレガリアの王妃暗殺に関わったとして死罪が決まっている。
思い返せばレガリアの聖女暗殺さえ考えなければ、セリカさんは今もこの場に生きており、アリスが世界を救う存在にはならなかったと思うと、少々複雑な気分になってくる。
どうやらマグノリアは当時隣国の聖女であった母様に、嫉妬してしまったのだという。自分は聖女の力を失いこんなにも苦しんでいるというのに、隣国の聖女は国民から慕われ確実に国の繁栄に貢献している。
自分が求め望んだ未来の姿いがまさにすぐ近くにいるのだ。嫉妬してしまう気持ちもわからないでもないが、そんな理由で殺される身になれば死罪でも足りないと思うのは当然であろう。
もっとも国の繁栄のために豊穣の儀式を行っていたのはセリカさんで、私達や母様を守ったのもまたセリカさんとカリスさんではあったのだが。
こうしてドゥーベ王国が絡む一連の事件は解決したこととなる。
パタパタパタ
幸せを象徴する白い鳥が大空へと羽ばたいていく。
「おめでとうございますティアラ様」
「お義姉さま、お義兄さま、おめでとうございます」
たくさんの祝福の声が飛び交う中、教会を背にした姉様が幸せいっぱいの笑顔を皆んなに向ける。
自分より強い力を持った義妹を前にし、それでも己に課せられた使命を全力で駆け抜けていったお姉さま。ここにきてようやく背負い続けてきた荷物を下ろせたのかもしれない。
「そーれー」
『キャァーーーー』
姉様が投げたブーケが天高く舞い上がり、落ちていく。
女性達は黄色い声を上げながら、落ちていくブーケを手にしようと必死に軌道を追っていき、一人の女性が今まさに手に取ろうとする瞬間……、びゅーー、ふわふわ、ぱふっ。
「………………」
『キャァーーーー!!』
見事に私の腕に収まると同時に女性陣から大きな歓声が向けられる。
「ちょ、今の軌道はあきらかにおかしいでしょ!」
思わず隣のアリスに文句をいうが、当の本人は吹けない口笛でごまかす始末。
絶対いまのアリスが何かをしたよね!
「今のは無効よ、やり直しを要求するわ!」
ブーケトスに果たしてやり直しが存在するのかどうかはしらないが、明らかな不正は(一応)聖女として認めるわけにはいかないだろう。
「別にいいんじゃありませんか? アリスが不正を行ったという証拠もありませんし、仮にアリスが風をおこしたとしてもこの子はすでに神のような存在ですわよ」
「そうだね、アリスちゃんの仕業なら神の御意志として受け取らなきゃだね」
コラコラ、リコもルテアもなに言ってるのよ。
二人の言う通りアリスは神的な扱いだけれど、それとこれとは話が別でしょ。
「おめでとうございますミリアリア様」
「これで心置きなくアストリア様とご結婚できますね」
「おめでとうございます」
わぁーーー
ブーケを受け取ってしまった私に参列者から祝福の声が向けられる。
「ちょっ、待ちなさいって、私とアストリアはまだそんな関係じゃないんだって!」
「何言っているのぉ、お姉さまの次はミリィの番でしょ」
「そうですね、早くアストリア様とくっついちゃってください。そうすれば私がアリスお姉さまを独占できるんですから」
「ちょ、アリスこそ何言っているのよ。あとテレスティアはどさくさに紛れて何さらっとアリスを独占しようとしてるの!」
必死に抵抗するも二人に冷やかされ、顔を真っ赤にしながら抗議する。
そらぁー、アストリアとは全然進展はしていないけれどさ……もじもじ
「ふふふ」
「あははは」
無邪気に笑う二人の妹。家族であり、親友であり、かけがえのない存在が一人、一人と増えていく。
やがて姉様に子供ができ、私やアリスにも子供ができるだろう。だけど今のこの気持ちだけは……。
「ミリィ」
「何よ、これ以上揶揄うと本気で怒るわよ」
「だいすき」ちゅっ
ーーー エピローグ ーーー
☆伝説の七英雄の一人 剣聖の王女 ミリアリア・R・レガリア
伝説の大聖女と共に世界を救った七英雄として、また大聖女が最も愛した女性騎士としてその名を歴史に刻むこととなる。
レガリアの王都にある七英雄のモニュメントには、なぜか彼女だけが大聖女のとなりに祀られている。
伝承では幼馴染である七英雄の一人と結婚、沢山の子宝に恵まれながら幸せに暮らしたとされている。
大聖女を除くと彼女のみが聖戦器を授かっていないが、何故か他の英雄達より大きく活躍が描かれており、最も大聖女に近しい存在として伝わることとなる。
噂では彼女もまた大聖女から聖剣を授かっていたとも囁かれてはいるが、『彼女と共に埋葬された』、『生みの親でもある聖女に返した』などと様々な憶測が飛び交い、多くの学者達を悩ませ続けているという。
☆伝説の七英雄の一人 神剣の王 エリクシール・R・レガリア
伝説の大聖女と共に世界を救った七英雄として、また大聖女の兄としてその名を歴史に刻むこととなる。
彼が行った決断のおかげで、大陸全土にかけられた血の呪いが浄化されたというのは余りにも有名。
国境を飛び越え、すべての国の浄化に携わったとして今も多くの人々から賞賛されているという。
噂では大聖女とは血の繋がりがなかったとの話だが、詳細は不明。
彼が授かった神剣エルドラムは、今もレガリア城の地下で眠り続けているという。
☆伝説の七英雄の一人 弓の女神 ルテア・エンジウム
天弓アルジュナに選ばれたことにより公爵家を継ぐこととなる。
彼女が治める領地には大聖女の母となる女性が祀られ、今も多くの人々がこの地を訪れている。
伝承ではかなりの人見知りだったとされているが、幼い頃に大聖女と出会いその運命を大きく変える。後に大聖女から授かった聖戦器で世界を救った。
噂ではかなりの巨乳だったというが、真相は謎のままである。
☆伝説の七英雄の一人 聖剣の剣士 ジーク・ハルジオン
父親である騎士団長の引退後、若くしてその席を引き継ぐ。
歴史書には一人のメイドと結婚したと記載されているが詳細は不明。噂ではメイドに扮していたのは大聖女様だったとも言われているが、世界を救ったとされる大聖女がメイドの姿をするのか? そもそも大聖女にメイドの仕事が出来るのか? 等と、今も大きな議論がなされている。
彼が授かったとされる聖剣アーリアルは数々の物語の主役に取り上げられ、大聖女を救った剣としてその名を歴史に刻むこととなる。
☆伝説の七英雄の一人 星槍の騎士 アストリア・ストリアータ
剣聖の王女とされるミリアリア王女の想い人として、その名を歴史に刻むこととなる。
王女を題材とした物語では多くの女性を魅了したと描かれているが、次第にミリアリア王女の一途な恋に惹かれ合い後に結婚。これまでの己の行動に反省し、幸せに過ごしたとされている。
本人が生きていれば大きな誤解があると言われそうだが、真相を知るものは何一つして残されてはいない。
彼が授かった星槍スターゲイザーは今も公爵家の地で眠りについてるという。
☆伝説の七英雄の一人 光杖の軍師 アルベルト・ライラック
彼の名は歴史の中に埋もれることとなる。
彼が残したとされる偉業は決して小さくはないのだが、姉が王妃となったり、妻が伝説の聖女の友人だったりと、余りにも周りの人間が大きく記されているため、本人が行った数々の政策はやがて姿を消していくこととなる。
彼が授かったとされている光杖ユフィールは、今も国の繁栄のためのシンボルとなっている。
☆大聖女の友人 リコリス・アルフレート
大聖女の日常を描かれる際にかならず登場する少女の一人。
性格はかなり気難しい少女だとされているが実は自分を隠す為の仮面で、本当は友達思いで気の優しい性格だったとされている。
聖戦器伝説では度々大聖女となる少女を励まし、最後までその身を通して大聖女に尽くしたという。
彼女を題材とする物語は、今も多くの女性から愛し続けられているという。
☆伝説のメイド ココリナ
伝説の大聖女を語る上で、彼女の存在は避けて通ることは出来ないだろう。
元は貧しい庶民の出とされる彼女だが、幼少の頃に大聖女と出会いその資質を次第に開花させていくこととなる。
伝承では数々のピンチの際に大聖女を守った、剣聖の王女のお見合いを成功させたなどと、多種多様な伝説が描かれており、今もメイドの中のメイドとしてその名を歴史に刻むこととなる。
レガリアでは年に一度、優秀なメイドにはココリナ賞が贈られているという。
☆伝説の大聖女の姉 ティアラ・レーネス・レガリア
伝説の大聖女の姉としてその名を歴史に残すこととなる。
噂では実の姉妹ではなかったとされているが詳細は不明。彼女がいなければ伝説の聖女は生まれなかったと言われるほど、彼女の存在は大きかったという。
後にドゥーベ王国の公爵家に嫁ぎ、二国間の同盟に大きく貢献したという。
歴史書には壮大な恋愛の元で結ばれたとされているが、実は聖女の座を降りた為に必要となくなった国から、無理やり政略結婚させられたと言われているが、詳細は不明。当時のレガリアがわざわざドゥーベに嫁がせるのはおかしいとも言われているが、事実が書された記録は何一つ残されてはいない。
☆伝説の大聖女の母 フローラ・レーネス・レガリア
伝説の大聖女の生みの親としてその名を歴史に残すこととなる。
王家に残された聖書には、実は聖女との血のつながりはなかったとされているが詳細は不明。
聖女には別の母親がいたという説も大きな議論も沸き起こっているが、長い歴史の中で未だ真相は謎のままである。ただ、二人の間には確かな親子愛があったことだけは事実である。
彼女が残したとされる日記は、『正しい聖女のつくりかた』として今も多くの人々が目にする物語となっている。
もしかすると大聖女誕生に一番貢献したのは彼女の教育だったのではと、一部の歴史研究家からはそう囁かれている。
☆聖母 セリカ
歴史書にはフローラ・レーネス・レガリアの別名だと記されているが、詳しいことは不明。実は聖女の母は別人だったとか、元はドゥーベ王国の聖女だったとか、数々の憶測が囁かれているが、彼女が書き残した数々の言霊のおかげで、現代魔法が生まれたことは紛れもない事実である。
☆悪の聖女 ロベリア
伝説の聖女を語る上で、彼女の名前を避けて通ることはできないだろう。
一人の少女が大聖女と呼ばれることになった原因であり、ドゥーベ王国の腐敗時代の象徴とされた悪しき聖女。
その正体は魂を悪魔に売った母親に、無理やり従っただけのかわいそうな少女だったというが、彼女と双子の兄が少女に呪いを掛けたことは紛れようもない事実。
最後は少女を助けにやってきた6人の聖戦士たちにより無事救出され、大聖女に目覚めた少女により助けられることになるが、物語の中では救出された直後にその罪を償い、自ら命を絶ったとされている。
噂では命を絶ったというのは国民への目隠しで、実は大聖女の保護の下で国の繁栄の為に尽くしたとも囁かれている。
☆悪の王子 ライナス
ロベリアの双子の兄と言われている悪しき王子。
母親に無理やり従わされていたロベリアとは違い、自らの意思で悪魔に魂を売った王子は、双子の妹でもあるロベリアと共に一人の少女に呪いをかける。
やがて助けにやってきた6人の聖戦士たちによって討伐されるが、彼が掛けた呪いは少女だけに留まらず、今もなおドゥーベ王国の地に深く刻まれているのだという。
以降、レガリアでは双子を忌み嫌う存在とされ、双子が生まれた場合、その片方の子供を里子に出す風習が根づいたのだという。
☆伝説の大聖女 アリス
長年人々を苦しめてきたとされている血の呪いを浄化した伝説の少女。彼女の成し得た数々の偉業はこの大陸に多くの伝説を残した。
中には信じられない夢物語なども存在していたり、実はレガリア王国が作り上げた幻の少女だとも囁かれてはいるが、彼女が残したとされている5つの聖戦器は今も色あせることなく受け継がれ、レガリアの歴史上に度々登場しては国の危機を救ったとされている。
伝承には生涯独身を貫き大陸の平和のために祈り続けたとされているが、実は各国の目を誤魔化すためのカモフラージュで、今も彼女の血を引き継いだ一族が存在しているのだと囁かれている。
☆聖王国 レガリア
伝説の聖女を生んだ国としてその名を歴史に残す。
聖女が残した聖戦器は四つの公爵家と王家に保管され、深き眠りにつくこととなる。
レガリアに伝説あり、大聖女アリスが産み出したとされる聖戦器は、彼女の望み通りに眠りへと付き、今もなおレガリアの大地を守り続けているという。
後にノースランドと呼ばれる公爵家には聖剣アーリアル、ウエストガーデン公爵家には星槍スターゲイザー、イーストレイク公爵家には天弓アルジュナ、サウスパーク公爵家には光杖ユフィールが眠り、王家には神剣エルドラムが国の繁栄を願い今も眠り続けているのだという。
—— Fin ——
ーーー 数百年後 ーーー
「お世話になりました」
「本当に行くのか? リリーナ」
「えぇ、私はミレーナを、妹を助けに行かなければなりません」
「ですが、ミレーナ様はお姉さまの事をご存じないのですよね? それでも行かれるというのですか?」
一人の少女に向き合う二人の男女。
突如進行してきた帝国軍にレガリア王国は応戦。だが裏切りによりウエストガーデンの国境は突破され、戦場はレガリア国内へと移ってしまった。
そんな中、ここノースランドでは北のドゥーベ王国を牽制しつつ、帝国軍との戦闘の準備が急ピッチで進められている。
「フィーナ、ミレーナが私の存在を知らないのは私が望んだ事よ。この国で双子が生まれた場合、片方を里子に出す風習があるわ。でも私は両親を恨んだ事なんて一度もない。だけど、だけどね、そんな生き別れの姉がいるとしればあの子はどう思うかしら? きっと自分を責めてしまうと思うのよ。だから物心がついた時に私がお願いしたのね。ミレーナには私の存在を話さないでくださいって」
「で、ですが、それじゃ余りにもお姉さまが」
「大丈夫、私にはジークハルト様とフィーナがいるわ」
フィーナと呼ばれている少女はうっすら涙を浮かべながら、リリーナという少女に抱きつく。
「せめて、せめてミリアリア様が使ったとされるこの聖剣のアーリアルを。剣聖の王女と言われるミリアリア様の血を引くお姉さまに」
「いいえ、それは貴女が持っていて。私には両親から頂いたこの槍がある。それに私は槍の扱いには自信があるけど、剣の扱いは苦手なの」
「でも……」
「もう行くわ」
「あぁ、必ず生きてまた会おう」
「えぇ、ジークハルト様もお元気で」
こうして私は自ら顔と名を隠し旅立っていく。初めて見る妹を救うために。
夜明けのレガリアへと続く
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これにてアリスとミリィの物語は終了となります。
思い返せばなんの知識もない状態で書いた物語でしたが、余りにも酷い文章だった為に思い切って書き直したのがこの改正版となります。
出来るだけ旧作の内容に近づけながらも、オリジナルストーリーをふんだんに盛り込んだ為に、このような長編となってしまいました。
中には描きづらかった話とか結構ありましたが、無事完結までたどり着けたのは皆さまに読んでいただいているんだという、気持ちが励みとなりようやくここで完結を迎えることとなりました。
本当にここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
ラストのおまけストーリーは聖女シリーズの外伝である『夜明けのレガリア』の冒頭シーンです。もしご興味があるようでしたら一度ご購読をと、少し宣伝を入れてみたりして・・・。
次回作は予てよりお伝えしております通り、もう一つの世界『お仕事シリーズ』となりますが、書きたい内容が膨らんでしまい、プロットを一から書き直すこととなりました。
新作のご披露はその後、数話書きためてからとなりますのでもう暫くお待ちくださいませ。
それでは余り長々と書いても嫌われそうなので、この辺りで締めたいと思います。
本当に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。それでは次回作でお会い出来ますように。ごきげんよう。
【改正版】正しい聖女さまのつくりかた みるくてぃー @levn20002000
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