第38話:最終章65歳のパパ誕生(201809-12)

まさか65歳で子供を授かるとは夢にも思わなかった。 七郎は、生まれてきた女の子をみて、複雑な感情が頭の中を駆け巡った。


 1つ目は、この子を見て孫を見てるような奇妙な感じ。 現実なのか夢を見ているのかわからない不思議な感覚に襲われた。

 2つ目は、この子のために何をすべきか、良い教育を受けさせたい。勉強を教えて上げて自立できる様にしたい。

 3つ目は、投資の方法を伝授して食いっぱぐれないようにしてあげたい。

 4つ目は、いっぱいお金を残して上げたい。


 どんどん、湧き上がってくる妄想に悩まされた。そんな、空想を打ち消すように恵子が帰りが遅いわね、私こんなに大変な思いをして頑張ってるのに、まったくもうと怒りだした。40歳越えの出産って大変なんだから、この貸しは、後で、きっちかえしてもらうからねと息巻いていた。こんな大変事をさせて、この野郎と、軽く七郎の頭をたたいた。七郎が、ご苦労さん大変だったねとやさしく彼女の頭をなでると堰を切った様に目に涙があふれた。彼女として今まで経験したことのない痛さ、つらさだったのだろう。そして頑張って分だけ汗のように涙でストレスを発散したのだろうと思うと急に、愛おしくなった。


 この出来事を考えると今まで生きてきたことが走馬燈のように、頭の中を駆け巡った。生まれて何もわからないうちから多くの大人に、いろいろ覚えさせられた。

 物心ついた6歳の時に家族全員で米国旅行に行くのを楽しみにしていたのに風邪・インフルエンザになり、高熱で、うなっていて、1人だけ日本に残された事。かえりのお土産を楽しみに待っていたのに、家族全員が飛行機事故という不幸な出来事で1人ぼっちになり悲しかった事。


 横浜の外人学校に入り友達になったティムのお父さんのリチャードとの運名的な出会い、彼は、実の子以上に可愛がってくれ、厳しく人生を生き抜くすべを教えてくれた。リチャードとRCH家の援助で不自由ない生活ができた。

更に木下家の巨額の遺産の事。それを元手に巨万の富を築いたこと。


 本当に悲しかった事。最初の妻・サリーや、恩人リチャードの死。巨額の富を前に何をすべきか考えあぐねた日々。最後に巨万の富を与えてくれた多くの幸運に感謝して、その幸運に恵まれなかった人々にチャンスを与える事が自分の巨万の富を有効活用することだと悟り「入間の里」学生寮を私費を投じて設立した事。

 このご褒美なのか本当に身近にいた新しい妻との結婚、彼女の父との悲しい別れの次にサヨナラ満塁ホームランのような、65歳にして、女の子の誕生という幸運。


 こう考えてみると人生悪い事の後には良いことがある、「禍福は糾える縄の如し」幸運を独り占めしないで幸運に恵まれない人に与えれば、又、幸運がやってくる。「禍福己による」こういう事を七郎は、身をもって知った。


これで、全編終了です。読んでいただき、誠にありがとうございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

華族とロスチャイルドの末裔 ハリマオ65 @ks3018yk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ