検査官のリーに、AIデイビッドは不思議なことを問う。これは不具合なのか、それとも。最初の一文、デイビッドの問いで一気に物語に引き込まれます。デイビッドの目に映り、彼の言葉で表現される世界は、色彩豊かで美しい。検査官と検査対象という立場であれ、築かれていく関係。なのに、外部の勝手な事情で――。最後のリーの質問に、デイビッドは何と答えるのか。多くの方に読んでいただきたい、素晴らしいSFです。
AIの発する、冒頭の奇妙な質問からぐっと引き寄せられます。そこから、AIと人間の脳の違いについて説明を挟みながら、その質問がエラーによるものなのかどうかに、主人公が迫っていきます。SFですが、舞台がいま私たちのいる現在ととても近い位置にあるので、もしもこのようなことが起きたら、私たちはどうするのかを、問いかけられているような気持ちになりました。