第三次世界大戦の末、激減した人間を支配しようと目論む「世界管理組織」
彼らは超能力者「トランセンド・マン」の力を用い、実力にて世界を管理下に置こうとしていた。それに反対する組織は団結し、「自由」を旗印に戦う。
二つに分かれた人類。両者のトランセンド・マンがぶつかり合い、相争う。
争いの果てに、彼らが掴む未来は「管理」か「自由」か。
疾走感あふれるアクションシーン。まるで目の前で戦っているかのように、凄絶に戦闘は繰り広げられる。詳細に作り込まれた世界観が、リアリティを生み出し、さらに彼らの戦いを迫真たるものにしている。
壮大なスケールでありながら、それを存分に表している、サスペンス巨編だ。
■SFを基盤とした物語創造において新エネルギー新素材新概念、それらを物語のスタート地点とした作品はある意味王道だ。具体名は挙げないが我々はそれらの作品を知っている。だが多くは時間的尺と言う制限に阻まれ細かな点は描かれない。見る者の想像の余地に委ねられる。だがこの作品は違う。根本が異なるのだ
■新素粒子、新物質、新兵器――王道のSFワードを種として作者はまず丹念かつ濃密に世界の根幹となる背景世界を神の視座で描きぬく
■次いでその世界に生きる者の過酷な現実を戦いの最前線の姿から映し出す
■作者に対して敬服するのは〝小説〟と言う媒体で許される限界へと、意味変質的とも言える丁寧さで紙面に刻みつける姿勢だ。その執念に敬服である
■だが物語は一人の少年の出現をもってSF的闘争世界を生きるヒーローの出現を予感させてくれる。アダムとソレを囲む人間性あふれる仲間たちの絆がそれだ。これもSF娯楽大作の王道である