異世界しましたが……なにをしましょうか?

チタン

第1話 はじめまして?

 金色の髪の毛がせわしなく揺れている。

 銀の花飾りがきらきらと光を映してきらめいた。

 女の子かな?

 かわいらしいフリルをつけたワンピースはピンクと白のボーダー柄で子供らしいと思う。昔は私もそんなものを着ていたかもしれない。

 私の目の前にあるテーブルにコトリと小さく木製のボウルが置かれ中にはスープとそこから頭を覗かせる小さく切った具材たちが見える。


 女の子に視線を向けると少しだけ慌てて目を泳がせてからにぱっとはにかみを見せる。

 善意で用意してくれたのだろう。

 おかゆのような見た目で、渡された同じく木製のスプーンで掬って口に入れる。


 味は薄かったけれど、芋のスープのような味だった。

 二口目を食べてお腹がすいていたのを今更のように思い出した胃がもっともっと、と腕の動きを占拠してふと我に返ったときにはきれいさっぱりなくなっていた。

 ごちそうさま。

 小さく心の中でつぶやく。

 果たして、ここはどこなんだろう?


 女の子に聞こうとするけれど声がうまくでない。

 この部屋は本の中で見たような古い建物で、私が生活していた場所とは大きくちがうみたいだった。

 女の子はボウルを片付けようと手にもってすたすたと部屋の外に消えていく。

 私もそのままでは申し訳ないと立ち上がって後を追うけれどやっぱり見慣れない建物だ。

 木材を基礎にレンガや石などを使っている。かなり田舎なんだろうか? だけどなんでここに居るのかだけは分からない。


 女の子はキッチンのような場所に行くがボウルとスプーンを置いてすぐに出てきてしまった。

 幸い咄嗟に物陰に隠れてやりすごしたけれどちょっと驚かせたいという子供っぽい欲求のせいだ。

 少しだけ自責の念を抱きつつ、私は猫のように好奇心のされるがままだった。


 すこし毛色の違う場所にたどり着いた。

 石造りの部屋で他の場所より頑丈そうな場所で、ちょっとやそっとでは崩れそうにないけれど何をしに行ったのだろう?


 少しだけ間をおいてから確認のために顔を覗かせる。

 女の子がかがんで何か地面に描いてるみたいだった。

 図形? 複雑で、直線だったり曲線だったり文字だったりするそれがなんなのか全然わからないけれど魔女のようだ。

 

 声をかけようとして、でもやっぱりでない。

 中に入ったことでよく見えるようになった部屋は荷物が山のようになっていてその一つにぶつかってしまう。

 積んだ本の一つがゴトリと音を立てた。


 女の子があわてて振り返って驚く。

 わたわたと手を身振り手振りしてから床に落ちている紙一枚とペンを拾ってから何かを書く。


『はじめまして』

 かわいらしい丸文字が並んでいる。

 

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異世界しましたが……なにをしましょうか? チタン @titan73

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