オレンジDAYS

斎藤さくら

第1話

ジューーー

フライパンで焼かれる目玉焼き。


チンッ

勢いよく飛び出る4枚の食パン。


美味しそうな香りと音が朝の食卓に広がる。


「よしっと!」

テーブルには様々な大きさの入れ物に綺麗に盛られたお弁当があった。


〇私、椿 若葉。


「みんなー!朝ごはんできたよー!!」

エプロンをした少女が大きく声を張り上げると少ししてドタドタと階段を降りる音が聞こえる。



〇仕事で海外にいってるお父さんとお母さんの代わりに毎朝兄弟の食事とお弁当を作るのが私の日課なの。



「おはよー!ワカちゃん」

「おはよー!ふあぁ」

元気な少年と、少し目を擦りながら青年が降りてきた。

「おはよう!隆兄、奈緒くん」

明るい笑顔を向け、朝食をお皿に盛りながら少女は言葉を返す。


「もう!隆兄だらしないよ〜!」

「仕方ないだろ。昨日も遅かったんだから〜」

「あはは、、」

「わっ、いい匂い!!」

飛び跳ねるようにして奈緒と呼ばれた少年はリビングに入っていく。

「いつも悪いな、若葉。」

「ううん、平気だよ!お料理作るの楽しいし」

「そっか、、。」



「わー!お弁当も豪華だー!嬉しいな〜」

「あれ?ハルは?」

エプロンを外しながら少女は問いかける。


〇そして、もう一つ、、、


「ハル君ならまだ寝てるよー」

「部屋の目覚ましなってたと思うけど、よくあれで起きないよなー」

「全くだよ」


軽くため息をつくと、少女は階段の下に足を運び、先程より少し大きめな声で声をかける。

「ハルー!朝だよー!起きてー!朝ごはん冷めちゃうよー!」


ピピピピピ

その声に返ってきたのは彼の部屋で彼を起こそうと頑張っている目覚まし時計の音だった。


「全く。」

「2人とも先に食べといて」

トタトタトタ

腰に手を当て、リビング2人に声をかけると勢いよく階段を上がっていった。

「若ちゃんも毎朝大変だ」

「いいからお前は早くたべろ。今日朝練だろ」

「ふぁーい」


〇それは、、


ピピピピピ

階段を上がってすぐ、その扉の向こうからは目覚まし時計の音が聞こえる。


トントントン

「入るよ」

ガチャ

「ハルー!おきなさーい!!」


〇この部屋の主、椿 悠を起こすこと。


ドアを開けるなり大きな声で少女はその部屋の主を起こそうとする。


漫画や部活のユニホームが転がった部屋の奥、目覚まし時計の音を国もせず、少年は気持ちよさそうに寝ていた。

「くああ、くああ」


「はぁー。またこんなに散らかして。」

少女は部屋の中に入ると、ベッドのそばに行き、鳴り響いていた目覚まし時計をチンッと止める。


「ハールー!朝よ、今日も朝練あるんでしょ。早く起きないと遅刻するよ」

体を揺すりながら声をかける。

「んん。」

「ハルー」

「うるせえなー。あと、5分」

「、、、。」ブチ


少女の中で何かが切れた。

「あと5分って、5分で起きたことないでしょうが!いい加減起きなさい!」

少女は彼の布団を引っ張り上げた。

「!!」



「おい!何しやがんだ!」

「いつまでたっても起きないからでしょうが!何回起こしたと思ってんのよ!」

「うるせえ!後5分っつったろうが!可愛くねえ妹だな!」

「妹も何も同い年でしょうが!」

ぎゃいぎゃい

ドタドタ


「また始まった、、、」

「毎朝賑やかだねー」

下で先に朝食を食べていた2人がいつもの事のように呟く。


ドタドタドタ

「もう!早く食べちゃって」

「わーったよ」

喧嘩をしながらも2人は階段を降り、リビングに入ってくる。


「おはよー!ハルくん」

「うっす」

「おはよう!遅刻するなよ」

そう言いながら、隆一はお弁当を器用に包んで持っていく。

「んーー」

「あ、隆兄もう行くの?」


悠の朝食準備をしていた若葉は、隆一が身支度をして玄関に向かったのに気づき、慌てて追いかけた。


「今日もまた遅くなるの?」

座って靴を履く隆一に後ろから声をかける。

「ああ。悪いな、今日も先に夕飯食べておいてくれ」

「りょうかい」

「若葉」

「ん?」

隆一は鞄を持って立ち上がるとポンと若葉の頭に手を乗せた。

「あんま無理すんな。来週からはまた食事当番交代な!」

「大丈夫だよ」

「じゃあ、行ってきます!」

「いってらっしゃい!」


「いってらっしゃーい」

「いってらー」

リビングから弟達の声を聞き、隆一は家を出ていった。


「わかちゃーん!」

ドウ

「わっ!」

手を振り、笑顔で隆一を送った若葉の後ろから奈緒が飛びついてくる。

背中にはリュックと共にサッカーボールの入った袋が担がれていた。

「僕も、いってくるね」

「もう?今日は早いね」

「うん!ミーティング今日は先にやるみたい」

「そっか。お弁当持った?」

「もっちろん!じゃあ行ってくるね!」

「うん!いってらっしゃい!」


続いて奈緒が家を出ていった。

2人を見送り、若葉はリビングへと戻る。


「んーー。俺もそろそろ行くかなー」

腕を宙にぐーんと伸ばすと、悠は席を立つ。

「はい、お弁当」

「さんきゅ」

先ほどの喧嘩は何処へやら

若葉からお弁当を受け取ると、鞄とバスケットボールの入った袋を持ち悠も玄関へと向かう。


「じゃあ俺先に行くから、お前も遅れずに来いよ」

「はーい」

「んじゃ、いってくる」

「いってらっしゃい」


パタン


「さ、洗い物とお掃除したら私も学校行かなくちゃ」

見送りが終わると若葉はそう呟き、またリビングへと戻っていた。



〇これが私たちの日常ー

しかし、この日常が変わってしまうなんて

思ってもみなかったーーー

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