無詠唱魔法とコンパイル済みの使い魔
僕の戦いもそろそろ終わりそうなんだ。そうなんだ。ついに1冊分の原稿を書き終わりそうなんだ。ゴールはもうすぐそこさ。長かった……。だから、このタイピングもとりあえずは今回で終わりにしようと思うんだ。もう、ゴールが見えてるから、それが僕の背中を押してくれるからね。まったく僕ってば単純だよ。
最後に僕が伝える事は、無詠唱魔法についてだよ。うん、呪文を唱えないで魔法の効果だけ発動させるあれ。高位の魔術師のみが使える事になってるあれね。あれ、嘘だから。呪文を唱えないで何か起こせるわけないじゃん! 魔法じゃないんだから。って今の魔法は比喩表現としての魔法だからね? 魔法は魔法じゃありません。ちゃんと準備しとかないと何かを起こすのなんて土台無理な話さ。
無詠唱魔法っていうのは、とどのつまり、どれだけ呪文が発動するまでの時間を短くできるか、って考えが根底にあるんだ。一番単純なのは、すっごい早口で唱える事。うん。なんだかんだこれだよね。でも、これは無詠唱には程遠いから今回の話には関係ないかな。
一番大きな仕組みは、
あらかじめ利用するだろう魔法を、あらかじめ世界言語化しておいて、そのままの状態で発動スイッチだけを作っておくんだ。そして、それを利用する際は、ごく短い呪文でスイッチを入れるだけ。これなら、ため息ひとつ分くらいの詠唱ですぐに魔法が発動するのさ。これが無詠唱魔法の正体ってわけ。才能だけでなんとかしてるんじゃないよ。あらかじめ真面目にコツコツ下準備してるんだ。偉いよね。
単なるプロシージャ・マジックはコンパイルの手間がかかってしまうんだけど、変換済みの世界言語、いわゆる使い魔はそのプロセスをすっ飛ばす分変成速度も高速さ。うちのブタみたいな呪文を聞くのが好きな触媒動物はブーブー文句言うんだけどね。
使い魔型のスタイルの弱点は、やっぱり状況変化への対応が弱い点かな。なにせその場の状況を見て呪文を編むわけじゃないからね。あらかじめ用途を想定して、使い魔を傍に置いているわけだから。状況変化に対応する事を考えると、何体もの使い魔を用意しておいて、それを限られたマナの中で常に繋ぎ止めておかなくちゃいけない。維持のコストが高くなっちゃうんだよ。
だから、このタイプと戦う時は、突拍子もないバカバカしい事をやっちゃうのがいいかもね。そしたら、その場で対応するために一から呪文を編むしかない。でも、マナはもうある程度占有してしまっている。後手後手になったところで、こっちから一気に攻撃するんだ。
ハックするなら、使い魔のスイッチへの「名前」を書き換えちゃうのもアリだね。名前を奪うのはいつだって強力さ。
でも、このタイプの魔導士と戦う場合は、もうひとつ気を付けなくちゃいけない事がある。それはね、無詠唱魔法と見せかけて、実はトラップ型の魔導士っていう事が結構あるんだ。
トラップ型の魔法は、常にある
このタイプの場合は、監視してる事象を早めに見切る事だね。そこさえ避ければ、ずーっと監視を続ける使い魔を使役するためのマナも、体力もただのコストになってしまうってわけさ。
それか、もし君が強力な防御呪文を編めるなら、わざと事象を踏んで、踏み続けて、リソースを奪ってしまうという手もある。このタイプの使い魔って、自分でもすぐに止められないんだよ。無駄打ちさせて疲れた所をバン! さ。
さてさて、とりとめもなく魔法とプログラミングの話をしてきたけど、そろそろお別れの時間だね。コンテスト、頑張ってね。いい結果がでるとといいね。僕も残りの原稿、頑張るよ。
短い間だったけど、付き合ってくれてありがとう。君は気付いてなかったかもしれないけど、僕のこの歯磨きみたいな準備体操みたいなタイピングテキストを読んでくれる事って、それ自体が凄く僕の背中を押してくれる要因になってたんだ。凄く助かった。
さあ、じゃあお互い本来の場所に戻ろうか。僕らは歩き続けなくちゃいけない。そりゃ、時には立ち止まるけどさ。でも、君だって歩き続ければいずれどこかに着くって事は知ってるだろう? その場所はまた新たな戦いの場所でイーッってなる事だってあるかもしれない。ううん、きっとある。嫌だなあ。
その時はまた、いろんな方法で僕らのお尻を叩いて、進んでいくのさ。その方向は前じゃないかもしれないけどね。でもね、歩くんだよ。僕の足で。そして君の足で。
なーんて、それっぽく〆ようと思ったんだけど、僕ってば駄目な奴だからね、きっとまたこういう歯磨きとか琥珀色のモチベが必要になってくるのさ。今だって「〆」という自動変換見て、うっ……って思ったくらいさ。その時はまた、付き合ってね。それじゃあ、また。僕が、本当に君が思っているよりも君に感謝していることを忘れないで。サンキュー麗しの魔法使いさん。Cya!
はみがき魔法と琥珀色のプログラミング 吉岡梅 @uomasa
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