草木の囁きが聞こえてくるような世界描写

大人のために、大人の書き手が子供を書くと、子供がちょっと大人びるのはふつうのこと。

誰かが考える異世界は、今その人がいる場所を基点として構築されるのだから、現代日本が垣間見えるのは普通のこと。

それを避けられないならとをいっそ舞台設定として取り込んだ転生物ですが、それによってできるようになった横紙やぶりをしないために、かえって描かれる世界に重層感が生まれています。

夜の花の香や市場の食べ物、ただの子分ではない友人と家人。子供の視点から見えるものが、周到に張り巡らされた伏線に導かれながら躍動します。

伏線はいつか表に出るのでしょうか。水脈は地表に出ないからこそ持てる価値もある、としてこのまま進むのでしょうか。

先が気になりつつも、好きな散歩道に足が逸れるように、もう一度読み返してしまう、そんな小説です。

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