第17話 理不尽
朝日が昇る。
今この時戦いの幕が切られた。
この戦いは、このゲームの運命を大きく作用することとなる。
王宮を包囲していた革命軍達が一斉に圧しかかる。
この一年、スリーの王としての実力不足が響き国の兵士達は才能はあるものも、兵器だけに頼る
役たたずへとなりさがってしまった。
しかし、スリーには王としての才能は無いものの、司令官としての才能はあった。
的確の指示に冷静な状況判断、役立たずをスリーは使いこなしていった。
しかしスラムの住民も負けてはいない。
この一年間血の滲むよう様な訓練をしてきたのだ。
戦闘能力は申し分なく国の兵士達にも負けを劣らない。
戦況はほぼ互角と言ったところだった。
見ただけではの事だが。
そう、スラムの住民はこの一年で体だけは磨いたのでは無い。
彼らは約一年同じメンバーで戦ってきた。
その一年で築き上げられたものは、友情や信頼なのでは無い。
愛だ。
人間の最高の感情である愛。
この一年で彼ら、彼女らはそれを築き上げたのだ。
愛にも色々な形がある。
性的な愛や仲間を思う愛、家族愛なんかもある。
そして愛を通じて彼らは繋がっているのだ。
言葉を交わさずとも、ジェスチャーをしなくても、いつ他の同士達がどのようにな行動をとるの
かがわかるのだ。
そのため、圧倒的に革命軍の方が連携率が高かった。
戦いにおいて連携はとても重要な事である。
スポーツでもそうだ。
連携できていないと、まとまりがなく、パスが繋がらない。
対して、王国の兵士達はゲームの駒である。
スリーの命令を聞き、それを忠実に実行する。
勿論それでも連携が取れないとは言わない。
しかしこの駒の数を一斉に操り戦わせるとなると、相当なスキルがいる。
人間離れしたアニメの主人公の様な才能が。
勿論スリーの生前は普通の男だ。
異世界にきたからって才能がつくわけでもなく、記憶が無かった10年何をしてきたわけでも無い。
その為、全体に配慮が回らず、連携が取れない。
開戦から2時間程で初心者が見てもわかるくらい王国側が不利になっていた。
革命軍の誰もがこう思った。
『いける』
そう思いながら輝かしい未来に向けて、革命軍は戦い続けた。
『いける』
私もこの時確信した。
この戦いは私達の勝利だと言うことを。
相手はもうジリ貧だ、推していくだけで王の首を取れると思った。
お母さん、待っていてね。私が必ずお母さんを光の当たる場所へ導いてあげる。
そしてまた皆んなで遊ぼう。
ファルは母から貰ったボタンを握りしめそう囁く。
さて、現実とは理不尽なものである。
できると思った事が出来ないなんて事はザラにある。
いや、むしろその事の方が多いかもしれない。
成功すると思っていた事が失敗するなんてよくある事だ。
地面に亀裂が入り、鼓膜を吹き飛ばす様な轟音が聞こえる。
様々な瓦礫が飛び散り空から降ってくる。
それはまさに空爆だった。
王国の兵士、革命軍関係なしにその命を蝕んでいく。
その砂けむりに紛れて死の間際に6人の悪魔を見る。
その悪魔達とは・・・・
ポクは革命軍1番隊の下っ端である。
そんなポクは密かに1番隊の隊長、ファルに好意を寄せていた。
革命が終われば告白も・・なんてことも考えていた。
ポクもこの状況を見て自分達の勝ちを確信していた。
しかしその時、空から流星が降ってくるのをポクは見た。
そこでポクの意識は途絶える。
目覚めた時は全て終わった後だった。
そして、ポクは周りを見渡す。
「あぁぁぁぁっ・・あぁぁっ!」
言葉にならない声が込み上げてくる。
大きな悲しみと怒りだった。
周りには見分けもつかないほどミンチになった仲間達と、ギリギリ誰だかわかる死体が倒れてい
た。
愛する尊敬すべき隊長の、変わり果てた姿がそこにはあった。
死者達の神頼み 琴吹 晃 @akirakotobuki
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