第16話 高揚


「起きてください!!王!」 


いつもより何時間も早く叩き起こされる。 

さらにソフェルの青ざめた顔を見て何かあったとスリーは悟る。 

「何かあったのか!」 

怒鳴る様に何があったか聞くと、怯える様な小さな声で 


「スラムの住人達が攻めてきました」 


ソフェルは今にも泣きそうにな顔でこちらを見つめてくる。 

他の騎士や軍人なども相当慌てており、王の命令が無いと何もできない様な無能に成り下がって

いた。 

つくづく無能な奴らだと思う。 

しかし彼らとて王宮の人間だ。 

その才能を評価し、俺がわざわざ連れてきた奴もいる。 

命令を出せばいい様に働く。 

「すぐさま迎え撃つ用意をしろ!!1人残らず殺せ!!」 

「了解!!」 

命令を出せば後は優秀な奴らだ。 

なんとかしてくれるだろう。 

「流石です王は。この状況で冷静な判断を出せるなど」 

「これしきのことで怯えていたらこの国を背負えん」 

適当な事を言うとソフェルは感動したのか、俺に人一倍尊敬の目線を送ってきた。 

「いいからお前も配置につけ」 

そう言い捨て俺はこのだから去る。 

「了解しました!」 

そう言いソフェルは部屋から出る。 

昔はもっとしっかりしていたのだが、いまでは俺に心酔するガキだ。 

さっきの適当な言葉でもアイツの中での俺の株があがるんだから、困ったものだ。 


しかし驚いていない事は本当だ。 

むしろ嬉しいくらいだ。 

今まで一度も逆らわなかったスラムが逆らった。 

そこには誰か中心的な人物がいると考えられる。 

その人物はどうしても俺を殺したいらしい。 

そして4月10日に開戦、もう確定の様なものだ。 

向こうからわざわざ死ににきてくれるとは有難い。 

探す手間が省ける。 


遂に始まるのだ、殺し合いが。 

待ちくたびれた。 

俺は早く全員を殺し現実に帰りたい。 

そうワクワクしながら過ごしてきた。 

ここは天国だ。 

人間は死ぬと天国か地獄に行くと言われている。

どうやら本当らしい。 

ここでは使い捨ての部下はいくらでもいるし、金にも困らない。 

この2年の歳月をかけて僕の現実世界に帰る事のワクワク感は、次第に他の転生者達を圧倒的な力

の前で膝まさせるワクワクになっていた。 

だから僕は今嬉しいのだ。 

自然と口元が緩んでしまう。 

やっと殺せるのだ。 

この力の前になす素手なく死んでいく転生者の姿を思い浮かべるとワクワクが止まらない。 

敵がすぐそこまできた。 

しかしその敵とは真逆に、遠くに1つの軍団が見える。 

恐らくそこにいるのだろう。 

このゲーム最初の犠牲者が。 

スリーは窓からその軍団を見上げ、指をさしながら囁く 


「おまえは何番だ」

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