第2話
私の父は、比較的明るい性格で若くして親になった事もあり、学校行事に来ると「お父さん来てるよ!はなちゃんパパはいつもかっこいいね」と周りの友達に言われるような自慢の父だった。
私には物心がついた時から母親がいなかった。それでも父と父方の祖父母にたくさん甘やかし大事に大事に育てられ、周りの友達がお母さんと手を繋いで歩いてるのを見ても、母親がいない寂しさなんて感じた事はなかった。幼稚園の園行事には父が仕事を休んで必ず駆けつけてくれた。熱を出して親が呼び出されれば祖母が急いで来てくれた。私にはそれがごく当たり前で日常だったのだ。この先もずっとそれが変わることなんて予想すらしていなかった。
幼稚園の卒園式の日、いつものように父が来てくれた。「卒園おめでとう」と書かれたバッチを左胸につけ、誇らしげに父の元に駆け寄った。
「卒園おめでとう、はな」
私の事を抱き上げながら父は続ける。
「紹介したい人がいるんだ」
そう言った父の後ろには、背丈は小さく華奢な体つきをした女性が立っていた。茶色に染め上げられた髪が太陽に当たって綺麗に揺れる。
「はじめまして、はなちゃん。急で驚かせちゃったかな。百合子って言います。よろしくね。」
私は初めて見た彼女と父の顔を交互に見て「よろしくね」と父の首に抱き着きながら小さく呟いた。子供と言うのは、親の変化を簡単に感じ取れるように出来ているのだろうか、父が連れてきたその女性が単なる友人ではない事に言われなくとも納得できた。
小学校への入学までの間の春休み、幼稚園に通っている間まで住んでいた祖父母宅から父の勤め先が借りている社宅へ引っ越すことになった。お腹が申し訳ない程度に小さく膨らんだあの女性と共に。
さがしもの @iq69__
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