迷子のラムネ

@mimoza3

第1話

歩いていたら、足元にハートが落ちていた。

ラムネ菓子みたいに小さくてほんのりピンクに光っているのがひとつ。

それを拾うと少し先にまた同じものが落ちているのが目に入った。

それも拾う。

次も拾う。

ぽつぽつと大体まっすぐにハートは落ちていた。

赤に近い色なのもあれば、白くくすんだ色もあったが、みんなピンク色で。

あっという間に片手では持てないほどになった。

被っていた帽子に入れる。

しばらく歩いて拾っているとすぐに帽子もいっぱいになった。

ポケットに入っていたエコバッグにもいれてまた歩き、拾い始める。

まだまだ途切れる様子はない。

そのうちエコバッグからも溢れてしまい、リュックにも入れることにした。汗が伝い落ちていく。

かなり歩いた後、リュックもいっぱいになった。

かなり重い…。

それでもまだハートは落ちている。

ポケットに突っ込んでいく。

しばらくしてハートは途絶えた。

ハートのせいで私はぼんやり光っている。

その光は目の前の大きな青いハートを浮かび上がらせた。

見上げるほどの大きなハート。

氷のように冷たくて固いハート。

扉がある。

コンコンコン。

音が響く。

息は白い。

汗が一瞬で消えた。

返事は無かったがドアを開けて中に入る。

不思議と怖くはなかった。

ごく普通のワンルームにタイル張りの床で、冷蔵庫の中みたいに寒かった。

中央には人がガラスケースの中で眠っていた。

白い花に囲まれて…まるで棺桶のよう。

白雪よりも肌は青白く息もしてないように見えた。何だか胸がぎゅ、となって私は持ってきた暖かいハートを彼女に、と思った。

でもガラスケースは1人では持ち上げられそうにないし、隙間は少しもない。

周りに石はあるけれど、ケースを割れば彼女が怪我をしてしまう。

ケースに触れると指先がくっついてピリリとするほど冷たかった。

ガラスではない。

このケースは氷でできている。

なんて透明で綺麗な氷だろう!

氷ならハートの暖かさで溶かすことができるかもしれない。

持ってきたパートを少し乗せてみたが、しばらくしても氷のケースは穴を開ける様子を見せない。

私はハートを増やし、氷を溶かそうと懸命に試したがことごとく跳ね除けられた。

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