東三局

「猫カフェは如何デスカ~」


「……」


「猫カフェは如何デスカ~」


「(スイッ)」


「猫カf」


「(ダッ)」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「Why?! 日本人、ミンナ猫アレルギーナンデスカ? ショックデース」


「そういう理由わけじゃないわ。皆、忙しいだけよ……けど、こんなに可愛いのに」


「にゃぁ」


「ソウデスヨネ。とってもカワイイデ―ス!! あ……ソウイエバ、姫川さんが辞められてもう半年デスカ。北岡サン、何か知りませんカ?」


「そうね、最後に会ったのが辞める日……辞表を受け取った時だったわね。確か『目的が見つかった』って言っていたわ」


「目的? ソーだったんですネ。うーん。姫川サンって普段ナニをしていたんデスカネ」


「んー。確か趣味が雀荘巡りって言ってたような。昔の記憶だから定かではないけど」


「ジャンソウ?」


「ほら、麻雀をするところよ」


「オウ! マージャン!! 聞いたことありマース! 北岡サンはマージャンやったことあるんデスカ?」


「昔にね。少し触った程度よ……もしかしたら彼女、雀荘で働いてるんじゃ」


「アハハハハ。そんな、マッカーサー」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「いらっし」


「オーマイガ!! 北岡サン、居ましたヨ! 姫川サンデース!!」


「噂は本当だったのね」


「え? あ、シャンディちゃんに北岡さん。お久しぶりです」


「ん? 姫ちゃんの知り合い?」


「はい。前に働いていた職場のオーナーと同僚です」


「へ~そうなんや。ワイあの凛々しそうな眼鏡の子、好みやわぁ」


「いや、あの元気がいい子もなかなか」


「姫川サン。探しましたヨ!! 戻って来てほしいデス! カムバーック!!」


「ごめんね。ちょっと、待ってて。すぐ終わらせるから」


「姫ちゃん。『すぐ終わらせるから』って酷くない?」


「そうやでぇ。おじちゃんたち、ひめちゃ」


「立直!」


「どひゃー。立直かいな!」


「おいおい、まさか」


「一発自摸!! 4000・8000。ラストです」


「す、すごい」「?」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「紅茶とメロンソーダです」


「ありがとう」「サンキューデース!」


「ごめんなさい。急に来ちゃって」


「いえいえ。私も一言声をかけるべきでした。でもどうしてここが分ったんです?」


「それはデスネ。ここいらで、デラベッピンの女雀士がいるって噂を聞いたデース。時期的にも合うし、何しろ容姿が姫川サンにそっくりだったんで、もしやと思ったデース。左目のほくろの位置とかそっくりだったネ」


「そうだったんだ……(田中さんか木村さんね)」


「姫川さん。紅茶、頂くわね」


「どうぞ」


「うーん、いい香り。頂きます……! この紅茶を淹れたのって姫川さん?」


「え? はい、そうですけど」


「美味しいわ。そういえば、お茶淹れるの上手かったわね」


「ありがとうございます。普通に淹れただけなんですけど、まさか褒めていただけるとは」


「! ……た、確かに、このメロンソーダ美味しいデース!! キンキンに冷えてやがりマース!!! 犯罪的デース!!!」


「ど、どうも」「うふふ。そっくりね」


「……姫川さん。ウチでまた働かない?」


「にゃんにゃんカフェにですか?」


「えぇ」


「そーデス! 戻って来てほしいデース! 姫川サンが辞められて、その日の売り上げからずーっとガタ落ちネ。半分以上の客が消えマシタ!」


「そ、そうなんですか?」


「えぇ、全部本当なの。だからってワケじゃないけど、ヘルプでもいいからウチに顔出してくれない? お願い!」


「お願いシマース!」


「そんな、顔をあげてください。ヘルプですか? うーん、今週の土曜日は確か……たぶん大丈b」


「掛け持ちは規約違反だぞ。姫川」


「せ、先輩!」


「お取込み中のところ失礼します……最初に渡したろ? 〈麻雀プロたるもの麻雀で稼げ by店長〉って」


「え? あれって確か」


「ちょっといいデスカ。ここの店長さんデスカ?」


「いえ、私は只のメンバーです」


「そーデスカ。なら、店長サンを呼んできてほしいデース」


「生憎、茅場かやばは席を外しておりまして。そろそろ帰ってくると思うんですが、何時になるか」


「そうナンデスカ。残念デース」


「そうでしたか。シャンディちゃん。これ以上の長居は迷惑になるわ。また別の日にしましょう」


「OKデース」


「二人とも、待ってください」


「「?」」


「私たちと麻雀打ちませんか?」


「え?」「オゥ?」「姫川?」


「せっかく来てくださったんですもの。ね、やりましょ? 話しながら楽しく打ちましょうよ」


「こちらとしては構わないけど、迷惑にならないかしら」


「打てますよ。たった今、最後の客が帰ったところです。お時間があればの話ですが」


「そうなんですか? なら、一回だけ」


「決まりですね。ではこちらへどうぞ」


「あのーワタシ。マージャンのルール分りまセーン」


「なら、俺が……店長!」「おかえりなさい」


「……(コクリ)」


「なんか、機嫌悪そうデース」


「怒ってるわけじゃないわ。普段から無口なの」


「ソウナンデスカ」


「夜分遅くにすみません。私、にゃんにゃんカフェという猫と触れ合う喫茶店で」


「(コクリ)」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「マージャン。楽しみデース! 店長サン。サポートよろしくお願いシマース!(コクリ)」


「お手柔らかにお願いしますね」


「今回は勝たせていただきますよ。先輩!」


「どうだろうな(ここも随分賑やかになってきたな。全部、お前のおかげだよ……姫川)それでは、始めますか」


「はい」「了解です」「OKデース」


「「「「よろしくお願いします」マース」」」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「立直!」


「Wow! 早いデース」「(! やっぱり)」


「一発自摸! 2000・4000です」


「流石デース!」


「(……姫川さん。貴方の癖見切ったわ。必ず立直宣言牌は河……場に見えている字牌。安牌を持っていること。そして……狙うなら、また彼女が立直するとき。攻撃を繰り出すその瞬間。狙うわよ、その一瞬の隙を)」


「(……聴牌だけど。まだ姫川彼女はイーシャンテンなはず。立直はお預けね)」


「見たことない漢字だらけデース! (トントン)え? これデスカ?」


「立直」


「(ドラの自摸切り立直? 何故、今になって立直なんだ)」


「北岡サン。早いデスネ。(トントン)……これデスカ?」


「(スッ)……」


「(……姫川さん。入ったわね、立直が来る)」


「立直!」


「ロンよ」


「え?」


「2600」


「!? (一・四・二の索子三面張、なお且つ平和を崩しての地獄待ちの北だと。なんて麻雀だ。姫川の攻め方、手配の構築、聴牌読み、山読み。全部読まなきゃこんな芸当出来ない。なんなんだこの女性ひと……おもしれーじゃねーか)」


「ロン。3900」


「(また、姫川の余り牌……確定だな。数回見ただけで特徴を見抜くとは)」


「また、北岡サンデスカ。ベリーストロングネ」「北岡さん。強すぎです」


「ありがと。でも、姫川さんも手強いわ。つい本気出しちゃった」


「(北岡? まさか!)……お強いですね。麻雀はどちらで?」


「昔、家族麻雀をやっていたので。その影響で」


「なるほど。この対局が終わったら、ぜひご指南して頂きたいですね。宜しければ姫川も一緒に」


「え、私もですか?」


「そんな。プロの方に教えられるほどでは……あ、自摸。4000は4100オール」


「(……強い)」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「(負けてるとき大体こういう時は、ドラもなく手牌もバラバラ。跳自摸が条件だって言うのに。オーラスでの跳自摸条件……七対子か。あわよくばメンホン七対子……張った。現状、七対子のみ……やるしかない) 立直! (ドラが乗れば勝ち、乗らなきゃ……)」


「自摸デース!」


「「「!?」」」


「でも、これ本当にアガリデスカ? バラバラデース」


「バラバラ? まさか!?」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「……って言うことがあってさ。ラスの俺は彼女たちに酒を……お、来た来た」


「お疲れ様です」「ヘーイ大将! ヤッテル?」「どうも」


「お待たせしました……!?」


「北岡さん。どうしたんですか?」


「……お、お父さん」


「え? ってことは、マスターって北岡……まさか、元裏プロの北岡きたおか誠司せいじ?!」

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