最終話 運用例  ダクラ高原3

ごきげんよう。崔浩である。

最終話が、予定外に

大きくなってしまったぞ。


では、前前話、前話を踏まえ、

さっくりと厨二台詞を捏造してみよう。

前話に示したあらすじの、各局面における

各キャラクターの台詞である。


しかし、うっかり「星見」を

物語のかなり中核に絡めてしまったな。

言うまでもないことであるが、

別にここまで星見と世界観とを

リンクさせてやる義理など、

諸氏には無いのでな。



○厨二台詞ライブラリ

※無用の用語濫造を避けるため、

 恒星群については、中国のそれを

 まるまるで運用している。



「天蓋に瞬く、大いなるダクラの尊顔は拝し得ぬ。だが高原の民よ、余には卿ら一人一人の顔ならば見ることが叶う。約しよう、余は卿らと共に在る」

 ――プロローグ、ツェンツェ戴冠の辞より。



「老人星より天狼星に向け、影が過ぎりました。祭主に於かれましては、ゆめ天狼将ラゲイの動向をお見逃しになりませぬよう」

 ……

「副教正が奏ぜられた天象、下官は寡聞にして聞き及んでおりません。如何なる折の天象にありましょう」

「昨年よ」

「さく……?」

「求むらるは、星ではない。ダクラの安寧である。天狼将ラゲイは凶星ユスーフの輩である。徒に彼の者を放置せば、神殿は辺境より擾乱の憂き目を被ろう」

 ――第一部プロローグより。

 イェルゲの、神殿の最高権力者「祭主」への奏上。また奏上にまつわる、副官が抱いた疑念への理論開陳。



「星の神のお顔はわかりません。けれども、母上の顔はわかります。私は、母上の笑顔が好きです」

 ――第一部より。

 高原の行く末を占い、憂えるポルヌラと、飽くまで実直にポルヌラへの思慕を言明するツェンツェ。



「ユスーフは客星であったのか? 否、否である。寡人は思うのだ。ユスーフは帝星であった。我らは、帝を支え切らなんだ」

 ――第一部より。

 ラゲイの、ユスーフへのコメント。ただし、告白と言うよりは詐術のレトリックであった。



「天上のメディスを、スファーが食う。にもかかわらず、スファーは滅ぼされることもない。忌み嫌われていながらも、だ。

 ツェンツェ。おれは信じられないんだよ。神殿の奴らの言葉が。奴らの言葉には、虚飾しかない」

 ――ムユルマの言葉。ツェンツェが「なぜ自分を助けてくれるのか」と言う問いに対して。なお太陽をメディス、月をスファーと呼んでいる。


「凶星より生まれるは、所詮は凶星か!」

 ――ツェンツェの素性が露見したときの、ある神殿兵の言葉。


「見ろ、ガルカンテの外套がはためいている……やはり、ツェンツェを放置すべきではなかったのだ」

 ――同じく、ある神殿兵の台詞。ツェンツェと神殿との間に戦端が開かれたとき、オーロラが南天を覆った。ガルカンテは伝説上の魔王。ということにした。


「集う三星を、スファーが食う。全く、天もツェンツェを嘉しおるか。ならば、それで良い。奴柄が光ってくれさえすれば、天狼の牙もまた光に溶けよう」

 ――ツェンツェの名声が大きくなる中、ラゲイがムユルマを思い起こしつつ、笑う。


「星々のことは、地べたを歩くおれには分からんよ。だが、お前たちとは血を、酒を交わした。それが全てだ。あるいは、おれの元に遣わされた星々が、お前たちなのかも知れんがな」

 ――神殿軍との戦いが苦境に陥る中、ツェンツェが仲間に対し、檄を飛ばす。


「天の宮殿もまた、人の解釈に過ぎぬ。真に天を知るは、ただ天のみ。哀れよな、気付けぬラゲイも、……天命を全うし得ぬ、我も」

 ――イェルゲ、処刑直前。ラゲイの行く末を推し量り、皮肉と自嘲を織り交ぜ、笑う。


「何故だ、ムユルマ……何故!」

「人の誂えた、天の形。それに縛られるあなたに導かれては、神殿の民は真なる天の光条に焼き尽くされましょう。咎められるべきは歪なる天の形。人ではないのです。けれども、貴方では、それを受け止められない」

「真なる天だと……あの小僧(※ツェンツェ)が、それだとでも言うのか!」

「分かりませんよ、貴方ではね」

 ――ムユルマの、ラゲイ暗殺直前のやり取り。


「昨夜、天床より角宿に向けた星散が観測された。驕傲なる東奸、ツェンツェに対し、ダクラが怒りをお示しである。ダクラの民よ、天に唾する賊徒は、天の元に夷滅せらる定めにある。惜しむべきは、ダクラの愛をこそ受けられぬ事である。此は聖戦である。汝らの刃にて、天下に義を示すべし」

 ――最終決戦直前。ムユルマによる、神殿兵たちに向けた檄。



○終わりに


以上、如何に厨二台詞を強化するか、

この一点のための考え方のヒントとして、

本講座を送らさせて頂いた。


概要にも乗せたが、当講座は飽くまで

「てきとうに運用するための最低限」

である。


オリジナルの体系を運用するときに、

このベースが把握できていると

割とスムーズに構築できるでしょう、

と言うものであり、

中国の歴史的占星術とは、

まったく別のものである。


それはそれで奥深く、

面白いものではあるがな。

しかし、この部分は

意識しての切り分けが必要であろう。


最後に、もう少し

中国的占星術的な話に踏み込みたい、

とお考えの方に向け、

一つのサイトを紹介しておく。


天文占書 検索

http://temmon.org/index.php


中国語、漢文の良いところは、

割とてきとーに読んでも

意味を拾えなくもないところであろう。


詳しく拾うためには精密な読み込みも

必要とはなろうが、

飽くまでオリジナル体系の参考、

と言うのであれば、

上記サイトに、当講座の語句を

放り込んで検索、

何となく把握する、でも良いだろう。



最後に、諸氏の厨二テキストライフの

充実を祈念し、当講座、閉幕とする。


では、またいずこかにて。

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崔浩先生の「厨二のための星見」講座 ヘツポツ斎 @s8ooo

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