第3話

飛行機、といっても、空調のきく貨物室。

ここで、8時間近くは、けっこうキツかった。でも、女の人は、ボクをこうして飛行機に乗せるため、かなり前から、いろいろ準備してくれていた。予防接種や、その証明書、飛行機の貨物室に合わせたケージの購入など……。


とにかく、ボクは、無事日本につき、女の人とも、飛行機から降りた後、トラブルなく再会し、女の人と一緒にタクシーに乗って、女の人の実家に向かった。


初めて見る、日本という国。

タイとは、やっぱり違う。


気候が違って、タイより温度が低いのはもちろんだけど、空気、というか、匂いが違う。


タイの、日本に比べたら、ねっとりした空気の中で生れ育ったボクには、なんとも言えない、違和感がある。


今は、日本の春なんだそうだ。

女の人が言ってた。

日本は、春夏秋冬、といって、めまぐるしく季節が変わるんだって。

タイは、雨季と乾期はあるけど、温度は、一年中そんなに変わらなかったのに。


言い遅れたけど、ボクは、ペルシャ系。

つまり、毛が長い、長毛種。

日本の夏、かなり蒸し暑いらしいけど、ボク大丈夫かなぁ。


いろいろ考えてたら、女の人の実家、というところに着いた。


タクシーから降りて、家の中に入ると、

「ももちゃ~ん❗️待ってたのよ~❗️」

と、年配の女の人の、裏返った声がした。

ボクのご主人のおかあさんらしい。


でも、ご主人のおかあさんと会う前に、そして、一緒に生活するはずの、2人の日本の猫と会う前に、ボクには、見えてしまった。


胸とおなかに少しだけ白い毛がある黒猫と、アメリカンショート模様の2人の猫が、玄関にひっそりと、でも、しっかりと、座っていた。

目が合った瞬間、ボクにはわかった。

この2人は、ボクにしか見えてない。

他の人には、この家のおかあさんもふくめて、見えてない。


黒猫の方が、先にボクと目が合い、

「ようこそ。」

と言った。

アメショ模様も

「こんちは。よく来たね、遠いとこから。」

と、挨拶してきた。

「はじめまして。」

と、ボクは返した。


この2人が何者なのか、まだよくわからないけど、悪いかんじはない。


この家の、生きている方の2人の猫達は、ボクを見て、固まっている。

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猫目線 @rucho

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