第2話

ボクを市場で引き取ったのは、日本人の女の人だった。

最初は、その人が話していることが、全然わからなかったけと、だんだんわかるようになってきた。

その人は、チュウザイインという身分で、タイにいるんだそうだ。

一人暮らしでさびしくて、なんとなく出かけた市場でボク達を見かけて、ショウドウガイした、と言っていた。

でも、ショウドウガイした日の夜、日本のその人のおかあさんに電話して、自分が飼えなくなったら引き取ってほしい、と、半ば強引に、半ば泣き落しで、頼み込み、なんとか承知してもらったらしい。

そんなことより、ボクは、狭くて暗いところから、一気に明るく、それなりに広さのある部屋につれて来られて、最初はちょっと勝手がわからなかったけど、すぐに馴れて、部屋の真ん中で、おなかを上向きにして寝ころんだりしてみた。ノビノビできて、気持ちいい。

女の人は、そんなボクを見て、大きな目をもっと大きくしてビックリした後、ゲラゲラ笑っていた。

その晩、ボクの名前は、もも太に決まった。

日本の昔話の、モモタロウ、という主人公からとった名前だそうだ。


2年後、ボクは飛行機に乗っていた。

その人の予想どおり、その人が日本に帰ることになり、ボクはその人のおかあさんの家に引き取ってもらうことになった。

その人のおかあさんの家には、おとうさんと

、日本の猫が二人いるそうだ。

「もも太の方が、全然立派だから、堂々としてればいいよ」と、女の人は言っていた。


日本の猫なんかは気にしないけど、飛行機で8時間近くもかかる遠いところに行くのは、さすがにボクでも、やはり、不安だ。


新しい家や、おかあさん、おとうさんは、どんなふうなんだろう。

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