第3話
姉がOLになって2年後、私も特に将来に希望もなく大学にあった職場案内から適当な会社を選び就職した。
結局あの時の姉の美容師になるという発言の真意は分からなかった。
正月、一人暮らしの家から実家に帰省すると昔と同じように姉がぼーっとした顔でこたつに入りみかんを食べていた。
私も同じようにしてみかんを頬張る。
すると突然姉が
「私さ、菖ちゃんが羨ましかったの。」
突然の発言と内容に驚いていると、
「可愛い髪の毛にしてメイクして彼氏作って、私には無いものをもってたから。」
そんなもの姉が欲しがっていたとは思いもしなかった。
「だから学校ごと菖ちゃんに譲れば、もっと菖ちゃんが楽しく暮らせるかと思って。」
美容師事件の裏はとてもあっさりしていた。
「いや、私からすればお姉ちゃんの方が本当になんでも持ってたよ。この世に敵とか無さそうなくらい。」
私が必死に訴えると
「うん。だって私天才だったもん。つまらないよ、天才少女って。友達できないし。」
なんだか脱力してしまった。私の永遠のライバルは本当に昔から何も考えていなかったのか。
私は姉は内心ほくそ笑んでいて私のことを存在すら忘れるほどどうでもいいと思い、見下しているんだと思っていた。
家族も同級生をも思うままに出来るほどの魅力を持っていた天才少女は、妹に気を使って学校まで辞めようとしていた。
今でも姉は私よりもなんでも持っているけれど、私はもう気にするのを辞めようと思った。私の彼氏だって本当はお姉ちゃん狙いで私と付き合っていたのに。何もわかっていないこの人は。
一瞬外で風が吹いた。やかましい正月の特番の音とともに家族で年越しそばを食べた。
人生で初めて母の料理が美味しいことに気づいた。
それからずっと後、私はまだ独身でバリバリ小さな会社で働いている。
姉はというと一流企業で社内結婚をし、今ではイギリス支店の立ち上げを任されているそうだ。
結局なんでも持ってるじゃないか。
やっぱり憎んでも憎みきれない。私も早く結婚したい。
東京では桜の花が散り乱れている。もうすぐ夏だ。そっちはどうですかお姉ちゃん。
きょうだい。 @kaname0707
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