Apple Watchに心房細動履歴機能
■心房細動履歴を閲覧できるようなった
2024年5月22日から、Apple Watchの対応機種で心房細動履歴を閲覧できるようになりました。医薬品医療機器総合機構(PMDA : Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)の承認が得られたからです。Apple Watchでは、以前から心電図を計測して表示する機能がありました(欧米では2018年から、日本では2020年から)。
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/ResultDataSetPDF/166359_30600BZI00010000_A_01_01
上記リンクは、添付文書と呼ばれるもので、承認を受けた医療機器は必ず参照できるようになっていなければなりません。これを見ると、今回の承認がApple Watchというハードウェアではなく、プログラムに対するものであることが分かります。
医薬品や医療機器を扱う法律は、かつて「薬事法」と呼ばれていましたが、2014年からは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称を「薬機法」)と変わっていて、Apple Watchで動作するプログラムも対象になっています。今回の承認は、Apple Watchに搭載されているプログラムが薬機法の規定にそったものであると認められ、医療機器として使うことができることになったということです。
一方で、薬機法は広告に対しても厳しい基準を設けているので、「心房細動も見つけられる。そう、Apple Watchならね」なんてCMはできないでしょう。
■心房細動とは?
私たちの心臓は、電気によって拍動しています。この膨張と収縮の際に発せられる微弱な電気信号を計測する機器が心電図です。心電図では、心臓の発する電気信号が、波形となって表示されます。
健康診断で、胸や手足に吸盤を貼り付けた状態でしばらく横になる検査がありますが、あれが心電図検査の一種で、12誘導心電図検査と呼ばれるものです。Apple Watchのように端子がひとつしかないものは、1誘導(単誘導)と言います。
心電図で計測すると、健康な人の場合規則正しい波形が取れますが、心臓に何らかのトラブルを抱えている場合には、波形が乱れてしまいます。この乱れた波形を不整脈といい、中でも心房が細かく震えることによって起きる不整脈を「心房細動」といいます。
心房細動によって、血の塊である血栓ができることがあります。血栓が血流によって脳へと運ばれ、そこで血流を止めてしまうと脳閉塞を引き起こす可能性があります。つまり、心房細動を放置すると、脳閉塞のような重大な病気になるリスクが高まるのです。高齢者や肥満・高血圧の人、糖尿病を患っている人などは心房細動になる可能性があり、心房細動の有無をチェックすることが望ましいのですが、問題は、心房細動が“いつ”現れるかわからないことです。たとえば、1日に30分だけ心房細動が起きている場合、健康診断で行われる短時間の心電図検査でそれを見つけることは、とても難しいことです。
いつ発生するかわからない心房細動を調べるには、長時間(24時間~7日間かそれ以上)の心電図検査が必要です。長時間の心電図検査を行うためには、ホルター心電計やパッチ型心電計が利用されます。
■過去7日間のデータをチェック
Apple Watchの心房細動履歴は、「心房細動を示唆する不整脈のエピソードを特定し、過去の心房細動の負荷の推定値をユーザーに提供する。」ということなので、Apple Watchで長時間の心電図検査をして、心房細動と思われる波形があれば知らせるというものでしょう。心房細動が検知されたら、医療機関への受診をお勧めします。
ただ、Apple Watchを信頼し過ぎるのも問題があるかも。Apple Watchに検出されないからといって心房細動が出ていないとは限りません。高齢者や糖尿病患者、肥満などの人は、息切れや動悸がするなど身体に異常を見つけたら、専門医に相談してください。
科学技術の雑ネタ 水乃流 @song_of_earth
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