ジゴワット! ――接頭辞の話

 SF映画「バックトゥザフューチャー」は、いつまでも色あせない名作ですね。過去にタイムスリップしてしまった主人公マーティが、未来に帰るため(まだタイムマシンを管制させていない)ドクに助けを求めたとき、タイムトラベルに必要な電力を聞いてドクが叫びます。「1.21ジゴワット!」と。

 実はこの台詞、ギガワットと間違いというのは有名な話です。映画が作られた1985年当時は、まだギガなんてつく単位は知名度が低かったからだそうです。


 今ではギガgigaは良く耳にしますが、何を表しているか説明できますか?


 ギガは、10の9乗、十億を意味する(接頭語)です。接頭辞は単語の先頭にくっついて意味を補完する文字のことで、ギガのようにSI単位と伴に使われる接頭辞は、「SI接頭辞」と呼ばれ、倍数・分数を表します。厳密に言えば、SI以外の単位にも接頭辞は使われます。SI単位単位については、「たんたん、単位 ――SIの話(https://kakuyomu.jp/works/1177354054885557884/episodes/1177354054895088865)」を参照してください。


 たとえば、長さを表すメートル(m)の場合、千倍はキロメートル(km)、千分の一はミリメートル(mm)となります。キロ(k)やミリ(m)が、SI接頭辞です。接頭辞を使うことで、数字を短く表記できるというメリットがあります。なお、接頭辞は重ねては使われません(二重接頭辞の禁止)。「キロキロメートル」とか「マイクロミリメートル」という使い方はしません。今はね。で、二重接頭辞が使えないと困るのが、キログラムです。キログラムは千倍を意味するキロが付いた状態でSIとなっています。でも、「キロキログラム」は使えないので、接頭辞を付ける場合にはグラム(g)を基準にします。「ミリグラム(mg)」とかね。


 さて、SI接頭辞はSI以外にも使われると書きましたが、最近でもっとも身近な接頭辞といえば、通信量(データ量)を表すギガ、ギガバイトでしょう。しかし、コンピューター業界では、昔からデータ量に付ける接頭辞で問題があるのです。

 キロは千倍を表す接頭辞ですが、1キロバイトkBは1000バイトbyteではなく1024バイトなんです。これはデータが「0」「1」の二進法で扱われるためで、2^10=1024なんですね。接頭辞が大きくなるほど誤差が大きくなってしまうので、ちゃっと理解していないといけません。いや、でも四半世紀前には、まさかペタなんて接頭辞を当たり前に使う世界が来ようとは思ってもいなかったのでしょうが。

 なので、データ量の接頭辞はSI接頭辞ではなく「2進接頭辞」を使おうという動きがあります。……全然普及していませんが。語呂が悪いからなぁ。キビ(KiB)、メビ(MiB)はともかくギビ(GiB)、テビ(TiB)、ペビ(PiB)はなぁ。

 なので、通信量などデータ量に関する表記を読み解く場合には、注意が必要になります。


 ちなみに、1.21ジゴワットならぬ1.21GWは、原発一基分程度の電力量だとか。映画の舞台となった1955年では、これだけの電力を生み出すことは厳しいでしょうね。一方で、雷の電力量はさまざまなので、必ずしも1.21GWを得られるとは限りませんし、言うなれば“野生の電気”なので、現代の機械にそのまま流すのは危険です。ドクのデロリアンには、優秀な整流装置が付いていたんでしょうねぇ。


 今晩(2020.06.12)、日テレの金曜ロードショーで「バックトゥザフューチャー」が放送されるので、急いで書きました(^_^;)いや、接頭辞の話は書こうと思っていたので、いいのですが。

 ちなみに、今回はセルビデオ版ということで、マーフィーは三ツ矢雄二ではなく山寺宏一版だそう。ちょっと楽しみですね。

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