たんたん、単位 ――SIの話
たとえば、言葉も違えば文化も違う者同士が交易を行おうとする場合、重要となるのは“単位”です。少なくとも、両者が互いの単位を交換するレート(率)を持っていれば、交易もスムースに進むはずです。単位とは、いわば基準、ものさしなのだと思います。
かつて、さまざまなものが単位として扱われてきました。たとえば、穀物の種、為政者の身体の長さ等々。フィートやインチ、カラット、グレーンなどの単位として、現在に繋がっている単位も数多くあります。
さて、過去さまざまな単位がそれぞれの国ごとに作られてきましたが、“基準”となる単位があやふやだったり、政治家の思惑で変わったりしては困ります。そこで、全世界で統一された標準の単位として生み出された単位が「SI」、国際単位系です。SIはフランス語の“Système International d'unités”に由来しています。
SIでは、長さの単位として「メートル(m)」、質量の単位として「キログラム(kg)」、時間の単位として「秒(s)」、電流の単位として「アンペア(A)」、温度の単位として「ケルビン(K)」、物質量の単位として「モル(mol)」、光度の単位として「カンデラ(cd)」、以上七つを基本単位としています。それぞれに、定義がきちんと決まっています。かつては、メートル原器・キログラム原器のように、実際の物質を基準にしていましたが、原器同士でも誤差があることや、経年変化で長さや重さが変わってしまうなどの問題から、変化しない(と考えられる)基準となっています。長さは光が進む距離を元にしていますし、時間はセシウムを基準にしています。
記述方法も決まっていて、基本は小文字のローマン体で書かなければなりません。ただし、人名に由来するものは、大文字にします。アンペアやケルビンがそうです。
SIの基本となる七つ以外の単位は、単位を組み合わせて表します。速度は、時間当たりにどのくらいの距離を進むかということなので、長さを時間で割った単位、すなわちm/sと表すことができます。このように単位を組み合わせて作られた単位を「組立単位」といいます。
組立単位の中には、固有名詞を持つものもあります。力を表す組立単位は、m・kg・s^-2なのですが、長いし書くのが面倒。そこで「ニュートン(N)」という単位が使われます。また、仕事量は力×距離なので、N・mと表されますが、これを「ジュール(J)」という単位で置き換えることができます。例を挙げてみましょう。
固有名詞を持つ組立単位
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N | ニュートン m・kg・s^-2
J | ジュール N・m m^2・kg・s^-2
W | ワット J/s m^2・kg・s^-3
Pa | パスカル N/m^2 m^-1・kg・s^-2
Hz | ヘルツ s^-1
V | ボルト W/A m^2・kg^-1・s^4・A^-1
T | テスラ Wb/m^2 kg・s^-2・A
SIでもなく、組立単位でもない単位は「非SI」と呼ばれます。容積を表す「リットル(L)」や重さを表す「トン(t)」は、非SIですね。非SIには、SIと併用が認められるものとそうでないものがあります。上記の例で表した単位は、併用が認められている単位です。
SIのような国際的な単位とは別に、習慣的に使われている単位もあります。アメリカのヤード・ポンド法が有名ですね。これが実にやっかいで、容量を表すオンスは、アメリカとイギリスで量が違ったりします。マイルもそうですね。陸のマイルと海のマイルで距離が違います。日本にも尺貫法がありますから、他国のことは言えません。畳のサイズなんて京間と江戸間で違ったりしますし。
単位が混在することは、実はとても危険なことです。実際に、整備士が燃料の単位を取り違えて旅客機のエンジンが止まる事故が起きています。尺や貫といった単位が一部でしか使われなくなった日本とは異なり、ヤード・ポンド法が生活に深く根ざしたアメリカがSIに切り替えることは容易ではありませんが、少しずつ移行しようとしています。
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