天文学の単位

 前回、SIの話をしたのは、天文における単位を書きたかったからで、これまでの投稿を見たら単位の話は出てるけど、ちゃんとやっていなかったなぁと思って。つまり、今回の前説ですね(^_^;)



 私たちが普段生活の中で使う長さ”や“距離二点間の長さといえば、ミリメートル、センチメートル、メートル、キロメートルくらいでしょう。前回書いたように、この中で国際的な基準となっているのは、メートルで、センチはメートルの百分の一、ミリメートルは千分の一、キロメートルはメートルの千倍。一番大きいキロメートルで、あなたはどのくらいの距離を想像できますか?

 実感として感じられるのは、たとえば通勤している距離とかでしょう。北海道稚内から沖縄那覇まで、大体三千五百キロメートル以上ありますが、そんな距離を実感として感じられる人はそう多くないと思います。


 しかし、天文学ではもっと大きな長さ、距離を扱います。たとえば、地球の円周は約四万キロメートルで、人間にとってはとんでもない長さですが、光の速さだと一秒間で七周半もできてしまいます。こんな具合に、扱う数値が大きすぎて、専用の単位を作ってしまうくらいです。


 ところで、四万キロメートルは四千万メートルですが、数字で書くと 40000000m となります。桁が多すぎて扱いにくいですね。そこで、このような大きな数値を表記する際には、乗数を使います。


   40000000m = 4×10^7


 この場合、「10^7」は10の七乗、つまり10を七回掛けたことを意味します。「^」は乗数を表す記号で、この記号を使わない場合には上付き文字で表します。この時、掛け合わせる数字を「底」、掛け合わせる回数を「指数」と言います。なお、掛け合わせる場合は「累乗」ですが、割っていく場合は「べき乗」といって、「10^-4」というようにマイナスの指数で表します。こうした乗数の表現は、天文学を扱う上でたくさんでてきます。目が滑りますが、ゼロが並ぶよりマシです。


 さて、光が一秒間に地球を七周半するのであれば、光が一秒間に進む距離は地球円周の七・五倍ということになります。計算すると約三十万キロメートル、正確には299,792,458mで、この長さを「光秒こうびょう」と呼びます。同じように、光が一日で進む距離を「光日」、一年間で進む距離を「光年こうねん」と言います。英語だと、「Light Year」ですね。一光年は、およそ九兆四千六百万キロメートル、9.46×10^15m になります。“光年は 時間じゃなくて 長さ”なのです。


 光年という単位は、別の恒星系までの距離や銀河系の直径などを表す際には便利ですが、太陽系の中を表すには少し長すぎます。なので、もう少し扱いやすい単位を使います。それが「天文単位」です。たとえば、太陽から木星までの距離を表す場合などに使われます。天文単位を表す記号は「astronomical unit」の頭文字を取って「au」が使われます。携帯電話の会社じゃありません。昔は「ua」という記号が使われたこともあります。地球と太陽の距離を基準にした長さで、SIとの併用が認められており 1au = 149,597,870,700m と定義されています。ちなみに、太陽ー木星間の距離は、およそ五・二天文単位です。


 天文単位を基準にした単位もあります。「パーセクparsec」です。「pc」という記号が使われます。1pcは年周視差が一秒角(時間じゃなくて角度)になる点までの距離で、簡単に言うと太陽と地球の間を直角三角形の短い辺として、太陽から垂直に線を延ばしたとき、地球から延ばした線と交わる角が一秒角(三千六百分の一)となる点と太陽までの距離となります。うーん、図で書けば一発ですけど、言葉で説明することは難しいですね。一秒角ってとても小さいので、直角三角形はものすごく尖った形になります。


 1pc = 約206,264au = 約3.26光年


 ついでに、質量(重さ)についても。


 SIはキログラムですが、やはり天文学的には小さくて、トンが使われることもおおいですがやはり足りません。まぁ、実際に計量することはないので、長さよりもシビアではありませんから、乗数を使った表記が多いですね。それでも、惑星の質量を扱う場合などは、太陽の質量を1とする「太陽質量」が使われます。記号は「M」に太陽のシンボルマークをつけたものになります。太陽のほかに、地球質量や木星質量を基準にする場合もあります。

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