はしやすめ ~人種

 アメリカを中心に、黒人に対する人種差別撤廃の行動が広がりを見せています。コロナ禍の渦中にあって、十分な感染予防もないデモや集会はどうなの? とは思いますが、それ以上に、人種差別に対抗する運動がなぜ暴動や略奪に繋がるのか、日本人としては理解し難いですね。そもそも、人種差別ということが、理解しにくい事なのかも知れません。

 もちろん、日本にだって差別はあるし、容姿を馬鹿にする風潮は昔から変わりません。しかし、基本的には「単一民族」と呼ばれるように、あまり人種の流入がなかったことが、黒人を奴隷にしてきた欧米の歴史的認識とのズレを生んでいると思います。個人的には単一民族という考え方は違うと思っていますし、狭い国土の中で差別があってもタブー視してしまう傾向によって隠されてしまっていることが、人種差別を理解しにくい要因のひとつではないかと考えています。まぁ、コロナが流行し始めた頃に、アジア人という括りだけで差別的言動をとった欧米人が何言ってんだという気持ちも少しはあります。


 以前、国立科学博物館の先生に聞いた話ではっとさせられたのは、「そもそも『人種』という言葉がいけない。“種”としては黒人も白人も黄色人種も同じホモサピエンス」という言葉でした。人種を英語で言うと「レイスRace」、種を表す「スピーシーズSpecies」とは別の言葉で表されます。日本語だと、同じ「種」という文字が使われているので、混同されてしまうのです。


 肌の色や目の色、骨格などで「人種Race」が分類がされていますが、生物学的なSpeciesとしては、同じホモサピエンスです。アフリカで誕生したホモサピエンスが、アフリカを脱し、各地に散らばる過程で環境に適応した結果が、外見の違いに現れているに過ぎません。日差しが強い地域では目を護るように眉部分の骨が突き出すようになり、日照時間の短い地域では紫外線の刺激が少なくなるため肌の色が薄くなります。頭髪が薄くなるのも必要がないから薄くなるのであって、進化の結果なので禿を馬鹿にする人間は地獄に落ちるが良い。


 人種差別問題には、歴史的側面あるいは政治的側面が存在するため、話がややこしくなってしまいます。ヨーロッパ諸国は、アフリカやアジアを植民地化して搾取したり奴隷として働かせた過去がありますし(植民地については現在進行形のところも)、ナチス・ドイツによるユダヤ人やロマ(ジプシー)の迫害という消せない汚点もあります。アメリカだって先住民から土地を略奪して成立した歴史があります。

 もし、人類は等しくホモサピエンスという同種である、という科学的な視点を持っていれば、黒人だから、アジア人だからという区分けをして差別することは、まったく意味のない愚かな行為であるということが判ったはずです。






 ところで、生物学的分類と言えば、私たちの世代では


 界>門>綱>目>科>属>種


 でしたが、近年では界の上に「ドメイン」(ラテン語だと「レギオー」)という区分が増えているんですね。社会に出ると、こうした知識のアップデートが難しくなるのは、なんとかならんものかと思ったり。

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