チバニアン、第三ステップ通過

 チロリアンじゃない、ジバニャンじゃない、チバニアン。


 ちょっと前に話題になったので、覚えている人もいるでしょう。チバニアンとは、ラテン語で「千葉時代」を意味します。千葉は市原市にある地層「千葉セクション」が、これまで名前のなかった地質時代を示す「国際標準模式地」として認められれば、晴れてチバニアンという名称で呼ばれることになるというもの。国際的に認められるためには、いくつかのハードルを越えなければならないのですが、その第三ステップである国際地質科学連合IUGS国際層序委員会ICSを11月末に通過したそうです。


国立極地兼のリリース:

 地層「千葉セクション」の審査状況について ~GSSP認定へ向けて~(2019年11月)

 https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20191129-2.html


 あとは、IUGSで認められれば、中期更新世(約77万4千年前~約12万9千年前)が正式にチバニアンと呼ばれることになります。日本由来の名称としては、最初のものになります。中新世に「アキタニアン」と言う時代がありますが、秋田に由来した名称ではありません。Aquitanian(アクィタニアン)だし。

 地質時代の日本語表記は、下記を参照してください。


 地質系統・年代の日本語記述ガイドライン 2019年5月改訂版

 http://www.geosociety.jp/name/content0062.html


 チバニアンに関しては、チバニアンの名称を推進していた地質学者の方が、なぜか「捏造だ」と言い出して妨害活動にでたりして、ドタバタしちゃいましたけどね。なぜ、そんな行動にでたのか、推測はできるけれど真実は分かりません。でも、研究者ならば、自分の主張を科学的な裏付けとともに提示すべきであって、調査の妨害などをするべきではないと思います。間違った手法は、主張そのものの信頼性を損ないます。


 さて、千葉が名前を残すことになるかも知れない、地質時代とは何でしょう? 簡単に言えば、地質の変化による時代区分です。地球誕生から人類が文明を起こして記録を残すようになるまでの時代は、地面を掘り返して古い地層を調べることでしかできません。そこから何があったのかを推測するわけです。

 時代を区分するファクターは、発掘された化石や地層の状態です。チバニアンになるかもしれない時代は、地磁気の逆転による時代区分です。地磁気の逆転──いわゆる「ポールシフト」が起こったことで地質が変化したのです。

 ポールシフトという言葉には、「地磁気の逆転」と「自転軸の逆転」という二つの意味があります。オカルトやSFなどで使われるポールシフトは、後者の場合が多いですね。たとえば、「トップをねらえ!」や「新世紀エヴァンゲリオン」では、ポールシフトによって日本が熱帯・亜熱帯気候になっています。自転軸の逆転は、天体運動の話になるのでここでは置いておきます。

 地質時代の区分として使われるポールシフトは、前者の地磁気逆転です。極が入れ替わる現象で、チバニアンで示されるポールシフトは最新のもの(それ以降発生していないという意味)です。地磁気の逆転は、太陽などにもみられる現象ですが、その原因は分かっていません。

 今後、ポールシフトが起きる可能性は否定できません。実際、地磁気の極は移動しています。地磁気の極移動の経過を示したアメリカ海洋大気庁NOAAのページURLを置いておきます。


 Wandering of the Geomagnetic poles

 https://www.ngdc.noaa.gov/geomag/GeomagneticPoles.shtml


 では、ポールシフトが起きるとどうなるのか? 起こってみなければ分かりませんが、もし、急激にポールシフトが起きるとするなら、一時的に地磁気がゼロになることも考えられ、そうなればこれまで磁気圏という揺り籠に守られてきた人類の文明は、宇宙放射線に無防備で晒されることになるのかも知れません。個人的には、地磁気はゆっくりと(何百年かかけて)移動するのかなと思っていますが。


 地質時代が化石によって区分されると書きましたが、それはつまるところ「生物相の変化」に他なりません。逆の言い方をすると、各時代の終わりには生物相がドラスティックに変化している、「大量絶滅」が起きています(全部じゃないですが)。大きな大量絶滅はこれまでにオルドビス紀末、デボン紀末、ペルム紀末、三畳紀末、白亜紀末の五回起きています。中でも有名な白亜紀末(K-T境界)の大量絶滅では、恐竜が絶滅し哺乳類が台頭しました。この時は天体衝突が原因と考えられていますが、その他にも天体衝突や火山活動によって絶滅が起きています。

 ちなみに、千百六十万年前に起きた生物の説滅も、天体衝突が原因ではないかという調査結果があります。

 天体衝突イベント由来の新たなエジェクタ層を中新世の深海堆積物から発見

 http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20191120/


 小惑星が地球に衝突して人類絶滅というイベントが、あながち絵空事でもないと思える調査ケッケですよ。小惑星に対する防衛については、

 はやぶさ2と惑星防衛 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885557884/episodes/1177354054892310049

 をご覧下さい(お、つながった× 無理やりつなげた〇)。


【追記】

2020年1月17日、国際地質科学連合IUGSによって「チバニアン」が正式名称とされました。意外に早かったなぁ。

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