はやぶさ2と惑星防衛
この「雑ネタ」コラムも、前回の投稿で百話に到達しました、というのを投稿してから気が付きました。百個目というのは、かっこよく言えば通過点に過ぎませんが、ひとつの区切りではあるのでちょっと感じるものもあったりしますね。
さて、百一話目のネタは何にしようかと考えてみたのですが、前回「はやぶさ2」の話をしたのでそれに関連した話をしようかと思います。実は別の場所で書いたネタなので、どうしようかなぁとも思ったのですが、広く知られた方がいいと思ったので。
「はやぶさ」が打ちあがった後、宇宙研(JAXA統合前)では早くも「はやぶさの後継」が検討されました。しかし、「小惑星からのサンプルリターン」という「はやぶさ」と同じことをするのでは、予算が降りません。サンプルリターンの他にプラスアルファとして、学術的にできることは何か? いろいろなアイディアが出されたそうです。その中には、ローバーならぬモーラーで小惑星の内部を掘削して調査するというものもありました。ドリル付き探査機ですよ! 実現したら燃えるミッションになったのにw 掘削は無くなりましたが、爆破という形に変わって実行されたのはご存知の通り。
さて、いくつか検討されたミッションの中に、びっくりする計画がありました。二基の探査機を打ち上げ、先行する一基が観測、後から来た一基を小惑星に激突させるというものです。『JAXAは宇宙戦争を始める気か!』と思われた人がいるかもしれませんが(いないって)、これは学術的な実験のためでした。その目的は、どのようにして小惑星の軌道を変更できるか? というものです。ぶっちゃけて言えば、リュウグウにはやぶさ2をぶつけたとしても、(当て方にもよりますが)大きな影響はないでしょう。それでも、こうした実験を行って小惑星の軌道が変わる可能性を検討するのは、地球を防衛するためです。
地球軌道の近くに存在する小惑星などの天体を、「
ちなみに、「隕石が落下」という言葉は厳密にはまちがい。地上に落ちたものを「隕石」と呼ぶので、落下中は「小惑星」や「岩のかけら」などと呼ぶ方が正しい用法ですね。
さて、このような小惑星衝突から地球を守る研究や技術を「プラネタリーディフェンス」あるいは「スペースガード」といい、地球防衛会議という国際会議も隔年で開催されています。映画の「アルマゲドン」や「ディープインパクト」のような、小惑星が地球に衝突するというシナリオを科学者は真剣に議論しているわけです。
「アルマゲドン」で描かれたような、衝突する可能性がある小惑星に人が乗り込んでいって爆破する、なんて方法は現実的ではありません。では、どうするか? もっとも安全な方法は、地球に衝突しそうな小惑星の軌道を変える方法です。「はやぶさ2」で探査機を激突させるというアイディアも、こうした背景から生まれたものです。前述したように、探査機くらいの質量ではあまり軌道は変化しませんが、地球から遠く離れた場所であれば、地球衝突を避けることもできます。なお、物体を衝突させて軌道を変化させる技術を「キネティック・インパクター・テクニック」と呼びます。
衝突させる以外にも、軌道を変えるいくつかのアイディアが検討されていますが、現在の技術レベルで実現可能なものは衝突くらいです。核という方法もありますが、技術的以前に政治的にいろいろと問題がありますから。
(主に予算の関係から)「はやぶさ2」の衝突ミッションは実現しませんでしたが、小惑星の岩石を持ち帰りその組成を知ることも、プラネタリーディフェンスの一環と言えます。組成が分かれば、効率的な壊し方が見つかるかも知れません。
また現在、小惑星の軌道変更実験が計画されています。
現時点では、この研究の結果がどうなるか分かりませんが、隕石落下の恐怖を和らげることができるような成果を期待したいですね。
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