はやぶさ2、帰路へ

 2019年11月13日、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」は小惑星リュウグウを離れ、地球への帰路につきました。はやぶさ2は一年後に地球に接近、回収カプセルを地上に投下します。二度のタッチダウンでサンプルが採取されていれば、太陽系形成のしくみを解明することに繋がるかもしれません。楽しみです。


 でも、どうしてリュウグウに行く時には三年もかかって、帰る時には一年なのかと疑問に思った人も多いでしょう。

 まず第一に、速度の問題。はやぶさ2は、イオンエンジンによる推力のほか、地球スウィングバイなども利用して加速しました。エンジンの加速だけでは、リュウグウにたどり着けない、たどり着けたとしてもすごく時間がかかったことでしょう。その一方で、リュウグウに追いついたとしても、そのままの速度では通り過ぎてしまうので、相対速度を小さくするために減速するなどの調整が必要になります。こうしたジレンマは、将来あるだろう太陽系外探査でも同じで、加速するだけでなく減速するしくみも考えないといけません。

 第二は、重力ポテンシャルの問題。リュウグウの軌道を見てみると、地球に近くはありますが、そのほとんどは地球軌道より外になります。軌道に関しては、下記のページで確認できます。


http://www.hayabusa2.jaxa.jp/science/ryuugu/


 巨大な重力の源である太陽を“下”とすると、リュウグウは地球よりも“上”になります。地球上でも昇るためにはエネルギーが必要なように、地球からリュウグウに“昇る”のもエネルギーがいることになります。

 その逆に、リュウグウから地球に“降りる”場合には、重力の助けがあるためそれほどエネルギーはいらないことになります。また、はやぶさ2は地球に接近してカプセルを投下した後、そのまま(上手く行けば)別の小惑星を探しに行くのでリュウグウ到達時のような減速は必要ありません。こうした理由で、一年ほどで帰ってこれるのです。

 

 はやぶさ2が地球へと戻る旅が、順調であらんことを。


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KAC2020用に【出張版】を書きました。内容は一部重複しています。

よろしければ、こちらもご覧ください。


はやぶさ2はUターンしない

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894551152/episodes/1177354054894551315


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