『神々のいない星で』アイコントークの導入

「今回の話は、私が今こうやって喋ってるような”アイコントーク”。この手法がどのようにして発案され、導入されたかですね。マー私達の今の常識、意外と長い前置きがありました。そんな話ですね」


「今作(神々のいない星で)からアイコントークが導入になりましたね」





「異様に読みやすくなるわよね……」


「効果として何が絶大かというと”著者校作業”がやたら早く終わるんですよ……、時間にして25%くらい早く終わります」


「感想など見ると読者の方でも恩恵が大きいというのが解っていて、これは今後も続いていく感ね」


「しかしアイコントークの導入って、神々が最初なんですか?」


「いや、最初はもっと別、電撃が昔発行していた電撃文庫MAGAZINE。これでやっていた既刊(都市、クロニクル)紹介企画の連載で、導入されたわ」





「電マガは雑誌だったから、企画ネタは結構好きにやって良かったのよね。だから後は”アイコンが用意出来るかどうか”ってことだけど、うちはそれが出来たから」


「思ったより古い処で来ましたね!」


「そうね。その後、ホライゾンの世界観紹介企画の連載で用いられて、ちょっと面白い処で使われるの」


「? ちょっと面白い処?」


「ええ。アニメ版”境界線上のホライゾン”では、通神帯でのチャット部分でアイコンが出て、実質アイコントークになってるのよね」





「これはまあ、設定を映像化したらそうなる訳だけど、”本編”に準ずる処で私達のアイコントークが表に出たのは、これが始めて」


「――で? それが神々のアイコントークに繋がるんですか?」


「いや、実はちょっとワンクッションというか、ツークッションくらいあるの」


「…………」


「……左右クッション、とか、そんなことは考えてませんよ?」


「解るわ……、アンタ達だと左右まとめて一つよね……」


「――でまあ、話を戻すけど、実はアイコントーク、GTで導入される筈だったのね」


「GTで? それはどういう……」


「ええ。電撃文庫MAGAZINEの企画連載が好評で、アイコントークが良い、という反応が多かったの。だからGTを立ち上げるとき、ここでアイコントークを導入して、文字通りの”ガールズトーク”の賑やかさを出そうってことだったのね」


「それが出来なかったのは、何でです?」


「文庫の行数、フォントのフォーマットでは”二行分”の幅を持つアイコンが小さくなってしまったこと。また、当時の印刷技術ではアイコンが潰れてしまったのね。

 つまり形態と、時代的に無理だったという訳。

 実際に試験的なものを作って見て確認したけど、MURIでねえ……」


「アー……、勿体ない……」


「そういう意味では、ここでGTがGTAになったのは、当時出来なかったことを取り返すのと同時に、本来の姿になった感あるわね。見て貰えると幸いだわ」



▼『境界線上のホライゾン NEXT BOX GTA狼と魂【電子版】』

https://dengekibunko.jp/product/horizon/horizon_nextbox/322106001081.html



「ハイ、宣伝終了……、と言いたいけど、ここで終わりじゃないわよね?」


「ええと、今、ツークッションの内のワンクッションを聞いた感じです」


「そうね。じゃあもう一つのクッションは、やはりカクヨム」


「え? ……ああ、確かに神々はカクヨムの連載時から既にアイコントークでしたね……」


「いや、そうじゃないの。カクヨムでは先行的に”川上稔がフリースタイルでやってます”というのがあって、コレでアイコントークが導入されてたの。

 ”いつもの連中”がそれね」



いつもの連中「水着の変遷検証」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885551466/episodes/1177354054886687409



「――これがワンクッションなんですか?」


「ええ。まずコレが、ちょっと面白い流れで、元々カクヨム連載では”挿画が出せない”という話だったの」


「ああ、確かにカクヨムはそういう仕様ですよね……」


「ぶっちゃけ画像貼り付けと外部URLへのリンク許可は出すべきだと思うけどねー……。コレは要望定期的に出してるわ」


「挿画の話! 挿画の話! そしてアイコントーク!」


「そうねえ。――そんな感じで挿画不能って聞いていたんだけど、先行して公式連載されていた他作品が、挿画の表示をしていたのよ」


「つまり公式側では挿画の表示が出来たのね。こっちには一般と同じ仕様が公開されていただけだった訳。

 そこで交渉したのが、既に脚本表記で納品していた”いつもの連中”。コレのアイコントーク化だったの」


「アイコントークを真っ先に? 挿画じゃないんですか?」


「アイコントークのフォーマットはweb上で文章を見せる最適解の一つ。こっちはそう考えていたの。そして当時、カクヨムは今ほど名前が知られて無くて、更に言えば電撃はそこに後から入った後発だったのね。

 こちら(川上稔)に課せられたものって、つまり”結果を出せ”よね。だったら、自分のネームバリューだけじゃ無くて、こういうことやらなきゃ」


・他がやっていない

・webに適したリーダビリティ

・非連載の読み切り


「これに合致したのは”いつもの連中”だったのね。でもまあ、web担当者としてはアイコンを大量に置いていくアレを”意味あんのかな……”って思ってたようで」


「アー……、小説を仕事としてると、そうなりますよね……」


「そう。でも開始したら初回から公式連載の人気トップになったわ。以後もその流れが続いて、これは非常にインパクトのある結果となった訳」


「……その結果があったから、神々やNBのアイコントークもスタートした、と?」


「そうね。積み重ねと実績が大事だったと言えるわ。

 こっち(川上稔)はゲーム会社勤務で、多量のテキストをどう読ませるのが良いか、ということには経験があったから、そういう部分も活きてるわね」


・過去の経験(ゲーム会社での制作など)

・過去の作業(電マガ連載などのノウハウ)

・現在の実績(カクヨムでの結果)


「こういうものがあって、出版視野の神々でもアイコントークをスタート出来た訳。

 思いつきでやったことでもなければ、”川上稔は特殊だから”でもないのよ?」


「ただ、カクヨムの挿画の契機は、ちょっと面白いですね」


「そうね。自分は”出来ない”って言われて脚本版を納品していたもの」


「ちなみに電撃は新文芸におけるアイコントークのノウハウ蓄積があるから、アイコンさえ用意出来れば全ての本がアイコントーク化可能なの。これは読者の人達も憶えておいて欲しいことね」


「――自分の好きな作家や本のアンケートで”アイコントーク化”の要望を出したら、そうなる可能性があるってことですね……」


「うちの神々とかそういうのを読んで”こっちの方がいいな”って思ったら、変えられる可能性がある時代になっているということなのよね。いい時代になったもんだわ」


「レーベル単位でそれをやったら、インパクトありますね……」


「既にweb的リーダビリティの高い読み物としてソシャゲがあるものね。でもソシャゲより起動が速くてダイレクト感が高いものとして、自分的にはアイコントークを押すわ。製作コストも遙かに低いし。生き残りの方法の一つではあるわね」


「しかしアイコントーク、どういう発案だったんです?」


「元々、自分のサイトで日記書いていたんだけど、これでSSみたいなことやるとき、話主が誰か解りにくかったのね。いつもは日記だし。

 で、絵が一枚しか貼り付けられなかった仕様だったんだけど、顔絵を出すだけで見る人の反応が結構違って。

 そして日記をブログ化したとき、絵を一行単位で貼り付けられるのに気付いて、”いつもの連中”の素体を始めたら、コレがウケてねえ……。これが2006年くらいの話ね」


「ま、また古い話が来ましたね!」


「神々が2019年だから、一つのアイデアが商業に出るのが13年掛かったということね。物事は、諦めること無く、そういう気長なスパンで取り組んでいくといいって、そういう話ね」

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