『電詞都市DT』インナースーツの始まり

「今回の話は、クロニクル以降、川上作品で標準となったインナースーツ。それがどういう経緯で生まれ、デザインされスタートしたかですね。つまり性癖の話ですか? アッハイ、解ってます。解ってますって。ええ。そんな話ですね」


「……DTということで、うちのコンテンツに興味ある人だと、何となく疑問に思うことではないかと考えますが……」


「歯切れ悪いわね? 何? 初合体コンテンツの話? DTじゃないわよ?」


「いえ、そうではなくて。――インナースーツの話です」


「アーハイハイ。そういうことね」





「うちのコンテンツで、今と同じ形というか、パーツ構成のインナースーツ(女性用)が出たのはDTが確かに初めてね」


「結構インパクトありましたね」


「作中では”軽装甲服”で、インナースーツではないのよね。

 なお、続くクロニクルでも、UCATの戦闘服はUCAT装甲服とか、そういう呼び名でインナースーツ呼称じゃないの」


「あれあれ? じゃあ、インナースーツという……、形はDTがとりあえずの初出として、呼び名はいつからなんですか?」


「インナースーツの表記が出るのは、OSAKA下巻のp152。主人公である勝意の鍛錬シーンね。下巻には”耐衝撃反射素材”というのもあるから、これで確定」


「確定? どういうことなんです?」


「ええ。耐衝撃反射素材=AntiShockReactArmour=ASRAというのは、うちのコンテンツ特有のセミパワードスーツで、私達のインナースーツもDTの軽装甲服やOSAKAのインナースーツもコレと同じものだから」


「どういうものなんです?」


「”衝撃を受けた箇所が圧迫硬化する”。つまり普段は軟質素材だけど、圧力が掛かるとその箇所が装甲化する訳」


「アー……、何となく解りますけど、それって、装甲服? であって、パワードスーツじゃないですよね?」


「内部からの圧迫でもそうなるのよ。

 つまりどういうことになるかと言うと、重量物などを持ち上げたり、受け止めた時、筋肉が膨張すると、そこが硬化するの。リフトアップ時、一度硬化して、全身を支えてくれるのね。

 あとはそれを下ろすか投げるか別の場所に置くかするとき、筋肉が収縮するから、硬化から解放されていくわ」


「アー……、つまり重量物を能動的にどうかしよう、という攻撃型のパワードスーツではなく、受動したときに受け止めなどの補助をしてくれる、防御型のパワードスーツなんですね?」


「そう、ASRAという素材自体に筋力増強システムは無くて、あるのは”耐える”ことへの支持ね」


「何でそんなものを発想したんです?」


「幾つか理由はあるわ」


・装甲服を考えたとき、ボディラインを崩してしまう装甲服は、常備品となり得ないのではないか。

・人工筋肉などの強化システムは、それ自体に防御性能を持つことが出来ないのではないか。


「特に後者の方が大きな問題を持つの」


「? 防御性能が無いのが、問題なんですか?」


「防御性能というのは、耐久度のことでもあるのね。だから義体とかで強化した場合、重い荷物を持ったら、義体側は耐えられても人体側が耐えられない……、そういう問題が生じるのよ」


「ああ、一部強化では、人体が耐えられる強度までしか義体は力を発揮出来ないと、そういうものですね?」


「そう。だからそういう場合、外骨格で補強するとか、パワードスーツにするとか、そういう発想になるの。でも、出来ればゴツゴツしないで、義体の格好良さを見せたりしたいじゃない?」


「その疑問に答えるには、ボディラインを阻害しないシルエットで出来ていて、防御性能に特化したものが必要ですね……」


「そう。そこで思ったのが装甲服という扱いの”素材”を作ればいい、ということだったの」


「だからASRAはホントの最低限要素のパワードスーツなんだけど、パワードスーツという名前から想像される”枠”を越えてるわ。ナイロンとか絹とか、そういうレベルで加工や種類があるから」


「私達の着ているものでは、このインナースーツもそうだけど、タイツや、スカートなんかも全部その効果を持ってますよね……」


「そう。”素材に装甲性能がある”とした時点で”普段から着るものでも装甲性能がある”ことになったの。

 これはファンタジーや現代モノに対してのファッションを改めて考える意味もあって、つまり戦闘するためにタクティカルスーツを着る必要が無くなったってことなのね」


「なお、ASRAのアイデアは何処からかしら……、と探したら、91年にある程度固めた設定を書いていたのを見つけたわ」





「91年! 随分ですね!」


「Armourのスペル間違えてるわねこの馬鹿」


「いやまあそれはそれとして、でもコレ、91年って、よく解りましたね……」


「ええ。こういうものがあるのよ」





「何ですか、この怨念帳、って」


「高校入ってから書き出したアイデアノート。それまではルーズリーフとかメモパッドに書いていたんだけど、散逸やまとまりが悪くて、ある程度頭の中にあるものを固め始めたのね。

 書き始めたとき、友人に見せたら”怨念を感じる”って言われたから怨念帳。後々にまたルーズリーフになったりしつつ、6年くらい書いてたかしら」


「……脱線ですが、契機は何なんです?」


「91年て言うとゲームセンターでストⅡが出たり、前年にSFCが出たり、メガドラなんかも勢いづいていく年でね? その中でゲーム企画者目指してたから、一気に発想が爆発したのよ。TRPGなんかも注目始まった頃で”何か作ろう”っていう連中には、ホント、変化と熟成が連続しまくる濃い時代だった訳」


「今の時代も遊ばれてるものの基礎が発生した時代……、としても濃いですよね」


「そういうこと。怨念帳のスタートは91年夏休み後で、このASRA設定はまだ年月表記の無い二冊目。年代表記はさっきの画像にある4冊めから(92/08)だから、このASRAが91年後記のネタだったと解るのね」


「ええと、じゃあ、形としてのインナースーツの始まりって、いつです?」


「あ、それもやっぱりOSAKAよ? 直接じゃないけどね」





「あ、OSAKAの夕樹ですね? これは一体……」


「ええ。自サイトの日記で出したASRAのデザイン。ASRAに、不足してる防御性を与える、というネタね。コレが1999年の7月。それまでにいろいろとアイデアがあったんだけど、まとめたのはここが起点だと思って良いわ。

 前開き、左右スカートとか、既に十年後の私達のインナースーツ+制服と同じ構造になってるのに注目ね」


「……思った以上に濃いめの話が出て来た気が」


「DTのコラムなのに、何を延々と違う話してんのかしら……、って感じね」


「しかし私達のインナースーツの原型が、三十年前のネタとか……」


「当時こっちは16歳だけど、それってつまり、16くらいで思いついたネタで一生食えるってことだから、何か作ろうって人はもう高校入ったあたりからの発想を捨てない方がいいわよ、ってことね」


「いやホントに、発想はいつのものでも大事ですね……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る