第2話

実際のところ、当時の小学生なんて彼氏彼女とかそんな概念はなくて「好き」に「ありがとう」か「ごめん」が返ってくるか、もしくは何も無いか。今の若い子は、今や保育園児でさえ彼氏彼女と言うんでしょうね。うーん、ちょっと理解し難い。まぁ今の世の中まだまだ子どものうちからでもメディアやSNSで色々な情報を得られる時代だから、よく分からなくて使っているのかも。最早、そうであって欲しい。そうであれ、世の中よ。

と、話がそれてしまったけれど、私の小学校六年生の時に抱いたその恋心を初めてバレンタインのチョコに忍ばせてみたものの、後ろの席の彼からは何のアクションも無かった。何も無いまま一ヶ月が過ぎ、あっという間にホワイトデー。その日は休日だったのだけど、母が「◯◯くんが◯公園に来てだって」と電話があった事をニヤニヤしながら私に告げた。いやいや、電話かわってよ。と思いながらも指定された公園に行くと、あれ?あれはまさか。そう、あのバレンタインの日、彼へチョコを一緒に渡した私のライバル、その子がいたのだ。「遅いよ〜」なんて、ちょっと待って、私がくる事知ってたのかな。一抹の不安を抱えながらその子とおしゃべりしていると、一台の車が止まった。後部座席から私たちの好きな彼が水色とピンク色の紙袋を両手に下げて降りてきた。普段からあまりニコニコしない彼。この時もいつもみたいにクールな彼にドキドキしながら、「ん。」と差し出された紙袋を私たちは受け取った。…水色か。私に差し出されたのは水色の紙袋。友達にはピンク。なんとなく、ピンクが良かったな、なんて。帰り際、「バレンタイン、ありがと」とまた控えめな声で囁いて帰って行った彼は、いつもクールなんだけど少しだけはにかんでいたようにも感じて私たちはそれだけでキャーキャーと湧き上がった。

ひとしきり、かっこよかった何だと言いまくった後、私たちは貰った紙袋の中を見る事にした。中に入っていたのは可愛いくラッピングされた箱。後から開けたらクッキー、だったんだけど、そんな可愛い箱よりも私の目に飛び込んできたのは、ノートの切れ端かなんかを折りたたんだような紙だった。

え、これは…

「ねぇ、中身一緒かな」なんて覗き込んでくる友達。あ、やばい。そう思ったときにはすでに遅くて、何それ!と私の手の中から見事に奪い取られてしまった。目にも留まらぬ早業。私は何が起きたのかすぐには分からなくてただ口を開けてぽかんとするだけだった。

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