学生

@RuaSera

第1話

うわ、汚あい!その顔どうにかしたらどうなの?キモいんですけど。


笑い声が響く始業前の教室。びしょ濡れになり目に涙を浮かべる生徒を囲み、皆楽しそうに笑う。そこから1歩離れたところで、不気味に笑う女生徒がいた。


マジ桃子キショいんだけど。見るだけで吐きそう。あんた、本気で学校に来れないようにしてやろうか?


ハハ、美沙ひどーい!さすが!


いじめを指示し、傍観して楽しんでる上野美沙を見て、真穂は心底気分が悪くなった。

そんなことして何が楽しいんだ。美沙以外、もしかしたら次は自分かもって、絶対に思ってるだろ。

すると、真穂はトントンと肩を叩かれた。


おはよう、真穂。


あ、奈津!おはよう。


ちょっと、トイレ行かない?この空気、嫌だし。


そうだね。


真穂が級友である西条奈津と教室から出ようとしていることを美沙は見逃さなかった。


浪川さんたち、どこに行くの?そろそろ授業始まるけど。


それはこっちのセリフだよ、と思いつつ、真穂は笑顔で答えた。


ちょっとトイレ。そんなに時間かかんないから。


すると美沙はあっさり、そう、と言い目をそらした。奈津は安心した表情で扉を閉める。教室から少し離れると、奈津はどっと息を吐き出した。


やばかったー!上野さんめっちゃ怖かったね。目付けられてたらどうしよう。


そんな心配ないでしょ。私たちがチクリに行くとでも思ったんじゃない?まあそんな余計なことしないけど。


真穂は何でそんなに余裕なの!おもちゃにされたらおわりでしょ!


おもちゃねぇ、と真穂は呟いた。美沙は、気に入らない者をおもちゃと称して酷いいじめを行うのだ。ただ、親が代々続く教育界とのパイプのある病院の経営者、さらに本人も何でも完璧な美少女で、彼女は嫌われるどころか人気を博し、クラスの中心人物だった。

美沙のグループの者を始め、クラスの者達は積極的にいじめを行う。真穂や奈津などのタイプは珍しいくらいだった。ただ、そんな状況に、真穂は、


皆、自分を悪者にしないでいじめができる状況に喜んでるんでしょ。あとから問題になれば上野さんのせいにすればいいんだし。


と分析していた。



美沙ーっ!今日も遊ばない?春の家OKだって!前ハマってるスマホゲームあるって言ってたじゃん!


あ、ごめん。今日はちょっと真希子と勉強。


え、馬場さん?勉強って、テスト終わったばっかじゃん。


いや、頭のいい美沙のことだし、仕方ないよ、春!


そうだね。分かった。じゃあまた遊ぼ!


放課後。美沙に断られたグループの面々は話しながら教室を出ていく。そんな中、美沙は真希子と話していた。

真穂も奈津と話しながら教室を出るが、違和感を覚えていた。


何あれ。


何って?


いや、上野さんだよ。自分のグループの人より馬場さんを選ぶんだね。確か前もそんなことしてた気がする。


あー、そうだね。


何で?奈津、去年も上野さんと同じクラスだったよね?何か知ってる?


あー、多分上野さんにとって馬場さんは数少ない幼馴染みなんじゃないかな。


え、どういうこと?


奈津によれば、この真平中学校は、真行小学校、松元小学校と、一部選択制で中平小学校の生徒の進学先らしい。美沙と真希子はそんな数少ない遠方の中平小学校出身で、だから仲がいいのではという話だった。


そうだったんだ!でも、さすがに上野さんと馬場さんってタイプ違いすぎない?馬場さんは、いじめに反対しそうなタイプじゃん。そういえば前も止めてた気がするし。そんな人と仲良くするんだね。


私も、いくら幼馴染みとはいえ変だなって思った。いや、変っていうか、馬場さんが大切ならなんで彼女の反対するいじめなんかするんだろう。上野さん、それを除けば完璧なのに。


なんか気になるよねぇ。誰か理由知ってる人とかいないかな。


あ!そういえば隣のクラスの鈴本さん、 中平小学校の出身だって聞いたよ!


嘘!ちょっと聞いてみようかな。


興味が湧いた真穂は、早速翌日、彼女に話を聞きに行った。

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