後書き
あとがき
初めまして、
小説本編を読んでいただいただけではなく、こうして完全に趣味丸出しな後書きまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
小説をサイトに投稿するというのは初めての経験で、こんな無名の作家なんぞ誰の目にも留まらないと思っていたのですが、自分が想像していたよりも多くの方に読んでいただけて感激しております。
本当にありがとうございました!!!!
せっかくなので、ここでは本作を書くことになった経緯をお話したいと思います。
私は昔から電撃大賞に投稿することを目的に小説を書いていました。当時はまだ投稿サイトという存在を知らなかった為、自分の物語を多くの人に届ける為にはプロになるしかないと勝手に思い込んでいた訳です。
大賞に応募するということは、当然売れる小説を書く必要があります。
では何が売れるのかということを考えた時に、私が辿り着いた結論は『流行に乗っかる』というものでした。
そのため私は流行に乗っかれるような内容の小説を意識して書くようになります。
しかし、数年前のことです。私は気付いてしまったのです。
……あれ、これ全然楽しくないぞ
流行を意識し過ぎていたばかりに、書いていたのは自分が本当に好きな物語ではなかったのです。
作者とは、一人目の読者である。
誰の言葉かは忘れましたが、私はこの考え方こそ真理だと考えています。
ならば、私が楽しめていない小説を、一体誰が楽しんでくれるのでしょうか。
そんな事に悩んで、執筆から離れていた時期もありました。
そして、私は投稿サイトの存在を知ります。
丁度、『ソードアート・オンライン』や『魔法科高校の劣等生』が脚光を浴びてきた頃です。
私は雷に打たれたような衝撃を受けました。
こんな場所があるのか、と。
ここでなら、別に流行なんか意識しなくてもいいじゃないか!
そう感じた私は、流行や売れるという考え方を捨てて、ひたすら自分が好きなものを、好きなように書こうと執筆を始めました。
その結果、生まれたのが本作という訳です。
ゴリゴリに凝った設定と、ひたすらリアリティを追及した世界観。
意味深な伏線を張りまくって次巻に続く感じ。
必要以上に深く掘り下げたキャラクターを自由に動かす快感。
どんだけ説明するねんと思われても仕方ない量の設定に支配された異能バトル。
これら全て、私が好きなものなのです。
おそらくは、私が中学生の頃に読んだ『とある魔術の禁書目録』に非常に強い影響を受けていると推測できます。一巻を読んだ時の衝撃は今でも忘れません。あの作品を読んで、私は小説を書こうと志したと言っても過言ではないのですから。
当初、物語の始まりは九凪皆がラクニルに入学するシーンでした。
なんだかんだ言って、私は学園異能バトルが好きなんです。
でも書き続けていく内に、色々と不明な点が出てきました。
界術師って、そもそもどれくらいの数がいるの?
全員が戦闘をしたくない筈ですし、卒業したらでどんな風に生きていくの?
そもそも、界力という物質が存在する現代日本ってどんな感じなの?
考え方は? それがどういう風に生徒に影響してるの?
いきなりラクニルを舞台にした物語を書き始めても、自分の中でまだ風景がはっきりと見えてこなかったのです。キャラクター達の考え方や常識もどこか不自然で、説得力がない。作者である自分にも、界力という物質が当たり前となった世界の空気感が分からなかったのです。
だったら、まずはこの世界の事をよく知るべきなんだろうと思いました。
考え方、常識、風景、空気感。
この辺りは、実際に書かないと分かりません。やはり設定を考えるだけでは限度があります。実際に地の文で説明を書いている時に突発的に生まれた設定も沢山ありますし、そっちの方がリアリティを帯びているような気がします。
個人的には第3話(界力石盗難の事件の真相を追いかける話)が、この世界の雰囲気をよく表せているのではないかと思っています。
第3話のテーマは『界力の使い方』であり、戦闘に用いるだけが界力術なんじゃないんだという事を伝えたかった訳です。なんと言いますか、この世界に生きている人の情景が浮かんできませんでしたか?
現役女子大生の黒鐘明日美や界力省に務める八地直征、豊田隆夫、川島というキャラクターは、世界観を分かりやすく伝える為に少し考えて肩書きを付けました。物語の舞台を架空の都市である九天市ではなく東京にしたのも、実はリアリティを増す為の策略だったりします。
小説で現代を舞台にした場合、私は考える最も大切なことは、その世界観が地に足の付いたものかどうかという点です。突拍子もない設定を無理やり現代世界に付け加えただけでは、どうしても読者がすんなりと物語の世界に入っていけないはずです。
だって、その世界の景色が見えてこないじゃないですか。
出版物のようにイラストがあれば話は別かもしれませんが、残念ながら、私の作品にイラストはありません。であれば、イラストで伝えるべき情報量を文章に入れ込む必要があるのです。
そのせいで、第一章の序盤は説明の繰り返しで非常にテンポが悪くなってしまいました。他の場面でも説明が入るせいで読みにくくなっている部分が多々あります。
一応、会話形式にすることで少しでも読みやすくするという工夫はしてみましたが、どこまで効果が出ていることか……
これからも、こんな感じで必要以上に設定を説明して風景や空気感を伝えていくと思います。
どれだけの人が私の趣味に共感してくれるかは分かりませんが、スタイルを変えずに楽しく小説を書き続けたいと思っています。
できることなら、見放さずにこれからもよろしくお願いします!
では、ここからは『メソロジア~At the Beginning of Mythology~』の解説を。
本作の位置づけは『メソロジア』という長編小説の前日譚になります。いきなり前日譚かよと思うかもしれませんが、上記してきたような理由で書かなければ気が済まなかったのです。
メソロジアの始まりは、九凪皆がラクニルに入学するシーン。
これは私がメソロジアという物語を思い付いた時に決めたことです。
本作の目的は二つ。
一つ目は九凪皆の戦う理由を明確に示すこと。
二つ目は界術師がいる現代日本の風景を描くこと。
どうでしょう、無事に伝わっていますでしょうか?
本作のテーマは、正しさ。
作中で前川みさきも言っていますが、正論すぎる正論は、暴論です。
状況があります。人間関係があります。経緯があります。感情があります。
何か問題が起きれば、上記したもの以外にも様々な要素が複雑に絡み合っている筈です。それらを全て踏まえて、全員が納得するような答えを出すのは不可能ではないでしょうか。きっと、こういう絡み合ったものを無視すれば正論すぎる正論になると思う訳です。
じゃあ、どうすればいいか。
前川みさきが辿り着いた結論は、自己犠牲。
全員が納得するのは無理だ。でも、自分だけ不幸な目にあって誰かが助かるなら。
自分の不幸は我慢すればいい。痛みは無視すればいい。
それで、涙を流す誰かを笑顔に変えられるのなら。
全てを失った彼女は、きっとそう考えたのでしょう。
対して、ルリカの考え方は、自分の心に従うというもの。
きっと、これができれば一番良いんだと思います。作中でもルリカに言わせてますが、自分が真剣に向かい会って出した結論は、例え間違っていても、正しくないことはないと私は思う訳です。
これはそうであって欲しいという私の願望かもしれませんが、本当に悩み抜いて出した結論が正しくないと言われるような世界は悲し過ぎるじゃないですか。そこに正義がないのなら、一体どこに正義はあるんですか。この世界は、そんな夢も希望もないようなものではないと思いたいです。
それに玖形由美にも言わせましたが、子どもの内ならどんどん間違えてもいいんですよ。むしろ、少ないリスクで間違えられるのが子どもの特権なんだと、大人に片足を突っ込んだ今となっては思います。大人になれば失敗や間違いとは、そのまま一人では抱えきれない『責任』となって返ってきますし。
多分、九凪皆はこれからも多く間違えると思います。彼には、まだそれが許されるのですから。ただそれと同等の成功も得ることでしょう。リスクを負った分の報酬は得るべきなのです。報われない努力ほど、虚しいものはないのですから。
きっと、九凪皆が手に入れる本当の『正しさ』とは、多くの間違いと成功の先に用意されています。それが何であるか、まだ私の頭の中でも形にはなっていないので、みなさんと一緒に物語を追いながら見つけていきたいと思っています。
初期プロットではルリカという少女は存在しませんでした。行間2を書いている最中に突如として出現したと思えば(本当に指が勝手に描写し始めました)、第3話では界術師として大暴れを始め、その後は九凪皆に道を指し示すまでの存在になっていました。
性格や言動は少しやり過ぎた気もしますが、自分の心に従うという結論に行き着くようなメンタルの強さを持たせる為には、これくらいで良かったと今は思っています。まともな人間ならここまで純粋に自分の感情を表に出せないでしょうし。
ただこの結論を実行できるのは、精神的に、または物理的に強い人間だけなのかもしれません。一歩踏み出す為の勇気は、なかなか手に入るものではありません。一握りの人間だけが持つ才能のようなものだと思っています。この辺りをテーマに小説を書いてみても面白そうです。
さて、長々と書いてきました。まとめに入りたいと思います。
正しさとは、状況を安定させている空気だと思います。
所謂、暗黙の了解というやつです。
全員が幸せになれるような空間は存在しません。どれだけ平等を謳っていても、絶対に優劣は存在します。これはもう、人間が異なる考え方や能力を持っているから仕方のないことです。
なら、その不平等を誰かが一身に背負えば、大抵の問題は解決するんじゃないか?
状況を安定させるような空気が生まれるんじゃないか?
終盤を書いていて、そんなことを思うようになりました。
皆さんは、何が『正しさ』だと思いますか?
前川みさきの誤算は、九凪皆という少年に恋をしてしまったことです。
そのせいで、自己犠牲を躊躇ってしまったのですから。
見つけた筈の本当の正しさに、わずかな疑念を抱いてしまったのですから。
ですが、前川みさきはこの結末に満足していると私は思っています。
否定された自分の正しさを、再び確認するという目的は達成できたのですから。
――私の代わりに、本当の正しさを見つけてよ。
この台詞は、メソロジアという物語の今後を決定付けると同時に、前川みさきの満足したという胸の
納得していないのは、その『方法』。
自分を殺すという最低の手段。
多くの涙を消した筈なのに、好きな相手の涙を流させてしまったという矛盾。
このような方法しか思い付かなかったことが、前川みさきの未練という訳です。
最終的に、前川みさきは自己犠牲という道を選びます。
その結果、九凪皆は大きな後悔に心を苛まれることになりました。
何故、前川みさきを止められなかったのか。
自分に足りなかったものはなにか。
前川みさきが目指した本当の正しさとはなにか。
この辺りが、今後の九凪皆の動機にもなってくるので注目してください。
では最後に、今後について。
メソロジアですが、続きます。それもかなり。
界力にしても、九天市にしても、ラクニルにしても、まだまだ語っていない設定があるのです。それに数年前から考え続けてきた多くのキャラクターが今か今かと頭の中で出番を待っているのです。
それを世に送り出さずには死ねません。
そもそもメソロジアってなんやねんと言う内容ですし、こんな所で物語を打ち切る気はありません。
果たして、私の頭の中にある物語をどれだけ文章にできるかは未知ですが、限界まで書き続けたいと思っています。
更に言えば、今回の小説で大きな反省点があります。
読後感が非常に悪い。
ですが仕方のない部分もあるのです。本作は九凪皆をラクニルに送り出すための物語。つまり前川みさきのような九凪皆を本土に繋ぎ止める存在がいてもらっては困るという訳です。
前日譚という前提で書き始めたせいで、始めから前川みさきが生存するというルートの話は頭にはありませんでした。途中で何とかして彼女を救えないかと試行錯誤しましたが、どのような場合でも、九凪皆がラクニルに旅立つ未来が見えずにこのような結末に落ち着きました。
これではいけない。
私が好きな小説は、もっと読後感が良い物語なのです!
という訳で、次巻以降は読み終わった後に胸がスカッとするような内容を書くつもりです。どうぞ、期待していてください!!
次巻の内容ですが、すでにプロットは完成して書き始めています。
舞台はラクニル。界術師の為に作られた学園島です。
しかし、主人公は九凪皆ではありません。
よって本編『メソロジア』はしばらくお待ちいただくことになります。
主人公は今後の物語で重要な役割を担ってくれる少年になります。
『メソロジア~ブラック・ストーム~』
主人公を変えて、サブタイトルも付けて、また別の側面からメソロジアの世界を描き出したいと思っております。現状で進捗率は60%ですが、ボリュームは本作よりは若干少ない程度になると予定しております。
更新予定は2018年4月です。何とか完成できるように頑張ります!
ここまで読んでくださった貴方には、重ねてお礼を申し上げます。
本当に、本当に、ありがとうございました!
今後とも書き続けるので、よろしくお願いします!!
やっと念願の学園異能バトルが書けるぜ
2017年12月某日
夢科 緋辻
メソロジア ~At the Beginning of Mythology~ 夢科緋辻 @Yumesina
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