第108話 エピローグ
「人が山奥にこもって、勉学に励んでいるって時に
あんたは、そんな楽しい事してた訳」
夏休みを半ばを過ぎた登校日。
久しぶりに会った花菜子に、いずみさん失踪の顛末を語って聞かせた。
「楽しいって…大変だったんだから!車にはねられそうになったり
暴漢に襲われたり!」
ノックの音がして、ドアが開いた。
忍がもじもじしながら入ってくる。
「久しぶりね。もう、いずみさんには会った?」
あたしが話しかけると、バツの悪そうな顔をした。
「お姉様から聞いたけど、いろいろ大変だったみたいね」
「まぁね…」
曖昧に微笑む。
「あの…」
「何?」
「どうもありがとう」
頭を下げた忍の頬は微かに赤らんでいるように見えた。
それだけ言うと、回れ右をして、ドアの方へと歩き出す。
ノブに手をかけた瞬間、立ち止まり振り返った。
「美月さん」
「はい?」
「あの…ごめんなさい」
突然謝られても、意味が解らず、あたしはポカンとしていた。
「学芸会の白雪姫。お父様にお願いして、先生に頼んでもらったの。
私が主役になれるように」
あたしは肩を竦めてみせた。
「もう、昔の事じゃない」
忍のほっとしたような顔を見て、なんとなく距離が縮まった気がした。
あたし達は、案外似たもの同士なのかもしれない…
そう思った瞬間、忍がニッと笑った。
「でも、とてもお似合いだったわよ『おこりんぼ』」
「なんですって!ちょっと待ち…」
あたしが文句を言う前に、ドアは閉められた。
まったく、もう!
ふくれっ面をしてみたけれど、不思議と腹は立たなかった。
何故だか、涙が出そうになって、あわてて窓際へ移動する。
夏の空はどこまでも青く澄んでいて、眺めているだけで心の中まで
晴れ渡る気がした。
「それで、組長の事はどうするの?」
花菜子ってば…いつの間にか『組長』呼ばわりだ。
あたしが黙っていると
「え、もしかして、本当に結婚しちゃうの?」
うわずった花菜子の声が響いた。
「するわけ無いでしょ。あんな奴と」
でも…
”お友達”からなら始めてもいいかな…
太陽の眩しさに、目を細めながら
ふと、そんな事を思った…
―――FIN―――
最後までお付き合い戴き、ありがとうございました!
感謝、感謝ですm(_ _ )m
赤い約束 一ノ瀬 愛結 @akimama7
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