第2話 "春"---?

《"春"とはなんだろうか。出会いの季節、はたまた別れの季節なのだろうか。青春ということなのだろうか。一年で一番好きな季節は?と聞かれた場合、私は真っ先に春と答える。理由は言語化できないと思うが、強いて言語化するのであれば---》



 時は中学2年生の頃の話である。




「うわあ。教室に忘れものしちゃった…」

 と、頭の中で自分と会話をしながら、教室に向かっていた。

『----れ、-----のノートじゃん!-----ダ---セ-----アハハ---!!』

 …?よく目立っているクラスメイト2人だ。私の机のノー………!!!?




 最悪だ。私は記憶に残りやすい勉強法として、ノートに人物の落書きやキャラクターの落書きを付け足し、吹き出しに重要事項をまとめていた。そのノートは、アニメなどに偏見を持っている人間が見たら、嫌悪感を抱く様な見栄えであった。


 私は廊下に立ったまま耳を傾け、涙をこらえながら話を聞いた。




『あいつ、ノート見てニヤニヤしてると思ったらこんなこと書いてやんの。キモすぎだわ。はやく失せろって感じ。』

『わかる。ブスが学校来てるのマジで不快だわ。』




 ああ、やっぱり悪口か。さっきはよく聞こえなかったけど、十中八九悪口だという事は察していた。




 廊下で下を向く私に、通りすがったもう1人の女子クラスメイトが私に気付いた。この女クラスメイトは気が強く、私が苦手とする異性ランキング堂々の一位にランクインするのではないかというくらいの性格だ。


『何してんの?』

「…。」

 こいつもどうせ、私の書いたノートを見て笑うんだ。会話をしたところで無駄だ。


『入らないの?教室。』

「…。」

『ふうん。まあいいや。』

そういうと教室へ入っていく女クラスメイト。





『お、なあなあ!!!これ------のノート!くっそダサくね?』

『お前もそう思うよな?あのブスこのノートみてニヤニヤしてんの。すっげえ気持ち悪い顔してんの。アッハッハ!』


2人のクラスメイトが女クラスメイトに話しかけると、私の予想通りの返答をしていた。

『確かに、ノート見てニヤニヤしてんのは気持ち悪いわ』

笑いながら2人に同感する女クラスメイト。



「(やっぱり、こいつも一緒なんだ。結局誰かを蹴落とさなきゃ生きづらい世の中なんだ。)」

そう思っていた矢先、突然女クラスメイトの表情が真顔へと変わった。






『でも、人の愚痴ばかり言って笑ってるお前らの顔の方が、そいつより余程酷い顔してるよ。』







-------この瞬間、私の中の苦手とする異性ランキングが大幅更新された気がした。

私のノートを手に取ると、教室を後にする女クラスメイト。




『ほら、大事なものなんでしょ。手放したらダメだよ。』

「----ごめん。」

『そこは、謝るんじゃなくて感謝するところでしょ。』

そう言って女クラスメイトは微笑んだ。

---

『君の絵柄、私は好きだよ。よかったら今度は私描いてよ。』

「あなたの事よく知らないから描けないんだけど…」

『じゃあ明日私の家に来なよ。そこで描いて?』

「…わかった。」




私の出会いはここからだった。





"女クラスメイト"から"彼女"へと変わるきっかけとなった出会いだった----。

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"居場所" いそじん @isosi___n

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