8.打ち水

投げられた水は弧を描いて延び揚がり

揚力を使い果たして頂点に達してすぐに

降下に移る ぶよぶよの

水の腹に空気のナイフが圧迫して割き

幾重もの分裂を促す

ナイフにくりかえし水は割かれ

速やかに微細な玉砂利にまでなれば

もうその粗大な暴力は届かずナイフの腹を

滑り落ちる水滴の集団 高表面積

熱が絡めとられていく

着地するころには

すっかり冷え

地表温度を吸い上げる

わななきはじめる水分子

地表を覆う薄い水の皮膜

盛んに流動し

中空に向かって組織は解散していく

あとには冷えた気流が残り

地表はまたすっかり乾いた

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描景 湿原工房 @shizuki

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