ケツ割り箸クロニクル

@samuthing

女子高生とケツ割り箸.01

 なぁ、やめるんだ。話せば


「話せばわかるってあなた今までに何回言ったの?」


 そうじゃなくて、とにかくそれをやめるんだ。


「止まれと言って、やめろと言って、本当にやめた娘はこの世に何人いるのかしらね」


 屁理屈を並べてないで、まずその割り箸を抜くんだ。


「嫌よ。私は割るの、お尻で、割り箸を」


 そんな事をして何になる。意味なんて無いじゃないか。

 とにかく、今すぐその割り箸を抜いてお尻をしまってくれ。お願いだ


「逆転の発想ね、あなたは私から割り箸を取ってどうするの?それに何の意味があるの?」


 意味はある。


「あら、本当に。私が割り箸を割らない事であなたがどうなるのかしら」


 君のケツ割り箸を止めた事で僕は安心する。


「なるほど。キレイな理由ね。でもそれじゃあ私が割り箸を割らない理由にはならないわ」


 どうしてだ。なぜ君はそこまでして、大衆に尻を見せ、割り箸を割ろうとするんだ。


「あなたまだわからないの?なぜ食事をするの?なぜ呼吸をするの?なぜ歩くの?全部、したいからよ。身体が欲しているの。お尻で割り箸を割るという事に」


 意味がわからない。君を何度止めて何度溜息を付けばもうやめてくれるんだ。


「そうね、飽きたらかしら。それか、もっともっと情熱的で誘惑的で私の芯が温まるような事が見つかればそれを選ぶかもしれないけれども」


 わかってるんだろう。


「何が?」


 そうか、悲しい事だ。本当に。


「自分で自分の身体の事位わかってるわ。今とぼけた事は謝るわよ」


 それでも、それでも割るっていうのか。


「そうね、まだ満腹じゃないのよ」


 初めて見た君のお尻は奇麗だった。こんなにも人間のお尻は美しいのかってな。顔がキレイだとか、身体付きがグラマーだとか、そんな次元の話じゃない。人の部位で感動したのは君のお尻が初めてだ。


「なに、告白してくれてるの?」


 ああ、そう取ってもらっても構わない。これは独白であり告白なんだろうと思う。でもな、これでもう終わりだよ。


「へぇ、なるほどね」


 ああ、聞こえるだろう。


「ええと、この音だと3台、4台かしら。私一人だけよ?そんなに必要ないと思うけれど」


 いや、必要だ。君を諦めさせるっていう意味でもな。


「捕まったら、私はもう割り箸は割れないでしょうね」


 ああ、木の箸とはお別れだと思った方がいい。


「ふふ、ならこの割り箸を割る一番の理由が出来ちゃったわ」


 いいよ、それなら。最後の最後だ。見届けてやる。


「なにそれ、心変わりっていうの?それとも冥土の土産?」


 日本語を間違えてる。


「私難しい事はわかんないのよ。わかんないからこんな事やってるんだろうけど」


 わかってるじゃないか。


「私頭は良いからね」


 その箸を折ったら、もう君は自分の意思では二度と割り箸は折れなくなるだろう。


「そうでしょうね、捕まっちゃったらもうお終いだわ」


 そうじゃない、冗談を言うのももう終わりにしよう。


「嫌よ、私からユーモアを取ったら何も残らないわ」


 もう限界なんだ。君のお尻は。

 見た所、座る所か仰向けで寝る事すら叶わなくなってるんだろう。


「良いのよ、これで。本当に、本当に分かっていた事だから。たぶん、私は最初の一本目を折った時点でこうなる運命だったのよ」


 だったらなぜ続ける。


「あなたね、わかっててやめられる事ほどこの世で面白く無い物は無いのよ。そんな物始めるまでもないんだから。私はね、割り箸に恋をしたの。恋をする少女を止められる物なんて、この世に無いんだから」


 だったなら。僕は君のお尻に恋をしていたのかも知れない。


「そう。なら御免なさい。あなたが恋した私の奇麗なお尻はこんなにも無残な姿になっちゃったわ」


 違うよ。


「なに、汚いお尻でも良いっていうの?変態の類?」


 割り箸を折ってる君のお尻が世界で一番美しいと思った。


「今のはちょっとキたわ。それ私の中のパンチラインね」


 パンツはいつでも出していただろう。


「パンチラじゃないわよ。あなたの事見直したけど、一生軽蔑するわ」


 もう救急車が来る。担架の準備も出来てるぞ。割るなら


「それ以上言わなくてもいいわ。近づいてきてる事位私にだってわかるんだから。私を連れてくなら本当に1台だけで良かったのに。馬鹿みたい」


 割ってくれ。最後に見届けたい。


「良いわよ。よく見ておいて。私とあなたの恋愛が終わる瞬間を」

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