人間が人間であることを証明できるもの、それは――

体内に“インプラント”したナノマシンが人々の生活を支え、彩る未来世界。
ツカサは大学時代の友人であるシグレからひとつのメッセージを受け取った。

『あなたは人間ですか?』。

それはふたりが当時語り合ってきた、人が人であることをどう証明できるかというテーマ。
ツカサはシグレに再会すべく、電脳空間に設置された“仮装会議室”へ向かう。

こちら、高度に機械化された世界においての人間であることの存在証明、それを巡る短編なのですが……驚くほど細やかで濃やかです。

練り込まれたSFなんですけど、「自分が人であることを証明するのは他者」という前提を最初に置いておいて、それをツカサと他キャラの“対話”で掘り下げていきながら余韻を引くオチを導き出す――実は計算された人間ドラマであるというのが最大のおもしろさです。

これが出せるのは筆者さんのセンスと技ですね。予想外な展開は一切ないのに引き込まれずにいられないんですよ。
ちょっとほろ苦い読後感を残す良作です。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)