似た者同士
※サーバルとかばんちゃんが付き合っている表現があります。
お酒を飲む表現がありますが、未成年者にお酒を飲むようにすすめる作品では ありません。20歳を越えてから飲みましょう。
場所はカフェ、日差しが暖かい日にフレンズ達が紅茶を飲んでのんびりとしている。
「はい、どぉぞ!はいどぉぞ!...ん、お客さんかな?」
熱心に紅茶を配っていたアルパカは新たにやって来たお客さんの姿を見る。
「あれぇ、サーバル久し振りー。どうしたのぉ?」
一人でやって来たサーバルはいつもの元気が無く、少し震えると大きな声で言った。
「あのね...かばんちゃんをリードしたいの!!」
「一体どおしたの、理由を聞かせてよぉ」
「ええっとね、かばんちゃんと私はつがい何だけれど...よくその事を他のフレンズに話すの、そうしたらかばんちゃんが恥ずかしがって「い、いきなり言うのは...」って言うの!服の裾を摘まみながら言って可愛いなって...」
「あの子なら言いそうだねぇ、でも話ずれてるよぉ」
「みゃっ、ごめんね...それでね、夜寝る前にちゅーするんだけど...かばんちゃんが上手で全然リードできないの!いつも流されちゃって...勿論私がリードする事もあるけど、いつの間にかかばんちゃんがリードしちゃってるの!」
「だから...サーバルがリードしたい、ってことぉ?それなら良いのがあったような...」
「えっ、本当!?」
「これなんだけどぉ、わいん?って言うらしいね」
「わーい!ありがとうアルパカ!」
「あっ、栓抜きを忘れずにねぇ!」
「わ、ありがとう!また来るねー!」
元気いっぱいに腕を振り、大事そうに瓶を抱えながらサーバルはカフェを後にした。
「うーん...心配だなぁ」
「...私が見に行ってあげる」
「ほんとぉ?んじゃお願いしようかなぁ」
一方その頃...
今日も川を渡り、フレンズを運んでいたジャガーは真上に昇る太陽を見て息をつき、休憩をしていた。
「ん...あれ、かばんじゃないか」
「あ、ジャガーさん...あの、差し支え無ければ相談に乗って欲しいんですが...」
「良いよ、一体どうしたの?」
「えっと...サーバルちゃんが恥ずかしがってくれないんです!」
「おおっと、理由もちゃん聞いてもいいかい?」
「あ、ごめんなさい...サーバルちゃんと僕はつがいになったんですけど、サーバルちゃんがよくそのお話を他のフレンズさんに話すんです。僕は恥ずかしくなっちゃうんですけど、サーバルちゃんは全然そんな様子無くて...あ、でもちゅー...きすをする時は僕がリードできて、その時のサーバルちゃんが可愛いくて...」
「うんうん...あれ、話ずれてるよ?」
「あっ、ごめんなさい、つい...それで、僕はどうしても恥ずかしいのは治せそうに無いんです、だから...」
「サーバルが恥ずかしがってくれるようなもの?それならあっちの方に猫科の動物が好む木の実があるよ。恥ずかしがるかどうかは全然分からないけど...」
「本当ですか!?あっちですね、ありがとうございました!」
「迷わないようにねー」
悩み事がすっかり無くなったようにかばんは大きく手を振る、そしてその方角へと走り出した。
「...なーんか心配だな」
「私が見に行こうかー?」
「わっ、カワウソいつの間に!...じゃあお願いするね」
「かばんちゃんどこ行ってたのー?」
「ちょっとそこまで。サーバルちゃんこそどこ行ってたの?」
「うんと、ちょっとね!」
ロッジアリツカの一室。サーバルとかばんは一つのベッドに腰掛けていた。
「そうだ、サーバルちゃんが好きそうな木の実があったんだ」
「私も!かばんちゃんが好きそうな飲み物貰ったんだー!」
「じゃあ、交換しよっか」
「わーい!」
一人は大きな瓶を、一人は大きな鞄を持っては向かい合って笑う。
「...あれ、開かないな」
「あっ、栓抜きを使うね!」
ぽんと気の抜けた音がして瓶の蓋が開いた。
「ありがとう...サーバルちゃんは飲み物なのに、木の実でごめんね」
「いいのいいの!この木の実とっても良い香りだし!ありがとうかばんちゃん!」
「えへへ...どういたしまして」
どこかそわそわ落ち着かない気分のまま、月明かりだけが刻々と時間を告げていた。
植物も寝静まった夜中、4つの目が窓から見える。片側はトキ、片側はカワウソの瞳。その瞳は部屋の中にいる2つのフレンズを見ていた。
すっかり床にこぼれたマタタビの上でぺしゃんこになった鞄を片腕でぎゅっと抱き締めるサーバル。頬はすっかり赤く染まって口には枝がくわえられている。落ちている木の実の幾つかにも噛み跡が残っていて、崩れているものもあった。しかしそんなのは気にせず多大な量のマタタビの上でころごろと転がる上機嫌なサーバルは最早ただのイエネコに近かった。
その隣にはひしゃげたコップを握り締め、同じく床に寝転がっているかばんの姿が。瓶の中身は半分程無くなっている。潰れたコップに少しだけ残っているがそれは見事に床に零れていた。此方も同じく頬を赤く染めていて、口元はだらしなく開けられている。いつもの真っ直ぐな表情を見ていたフレンズならば誰もが今の彼女を見れば驚くであろう。
「様子を見てきたけど、これは...」
「何あれ!2人とも幸せそー!」
「ううん、邪魔しちゃ悪いわね...貴方も一緒に戻りましょう?」
「まぁ、あれを邪魔するのは面白そうだけど可哀想だからね!ジャガーの所に帰ろっと!」
泥酔し、ふわふわ気分でありながらもしっかりと繋がれた手を見やってから2人のフレンズは静かにその場を後にした。
□■□■□
2人とも似たり寄ったりなさばんなコンビのお話。正直に言うと酔った2人が見たかっただけです。本当は翌朝未だに夢うつつなサーバルと2日酔いに苦しむかばんちゃんが「相手の可愛い所を見られなかった!!」と後悔する様子も書きたかったけど、その尊さは私には書けませんでした。でも酔った二人が書けて良かったです。
けものフレンズ「たんぺんしゅう」 あおぞら @ohima1721
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