気付けない優しさ(死表現あり)
「んん~...今日もいい天気でありますね!」
朝の日差しが家の中を照らす。ぐいーっと背伸びをしながらオグロプレーリードッグは大きな欠伸を漏らした。
「ビーバー殿は......まだ眠ってるのであります」
木のベッドの上で眠るアメリカンビーバーが見える。断りをいれてから梯子を下り、水を飲みにトンネルをくぐった。湖沿いの水のみ場で喉の乾きを潤す。ふと、「水を入れる桶があると便利でありますね」と呟く。後で作ってみようと意気込んだ。
「ビーバー殿ー!じゃぱりまんを持ってくるでありまーす!!」
返事は返って来なかった。きっと気付かなかったのだろうと思って、目が覚めるほど大量のじゃぱりまんを持って来ようとボスがいつもやって来るところへ走った。
「ボス!じゃぱりまんいつもより多く持っていってもいいでありますか?」
籠一杯にじゃぱりまんを積み上げたボスにそう尋ねた。返答はない。「それでは貰っていくのであります!」といつもより多めにじゃぱりまんを抱えて家へと戻った。
「ビーバー殿ー!持ってきたであります!」
梯子を下る途中何個かぽろぽろ落ちたが、一先ず残っていたじゃぱりまんを机に乗せて、落ちた物を取りに戻る。再び持ってきたじゃぱりまんも山の上に乗せてベッドに腰掛ける。
「先に食べてるでありますよー?」
がさがさ袋を開けながら未だに眠るビーバーを見ている。太陽はまだ真上にはないものの、なんだかいつもより寝ているような気がした。一人もぐもぐと食べ進む内に、さっきじゃぱりまんを何個も落としてしまったことを思い出す。そして、桶にそれを入れて運べば更に楽になるのでは、そう考え付いた。思い立ったが吉日なプレーリードッグは食べかけのじゃぱりまんを全て口に詰める。ほとんど落ちるように梯子を下りたプレーリードッグは地面に落ちた衝撃で喉を詰まらせたのか、「んんーっ!!!んぐーっ!」と呻いた。
「ぷっはぁっ...死ぬかと思ったであります...」
先ほど来た水のみ場にまたもやお世話になるとは思ってもいなかったと意気消沈する。それでも「あっ、でも桶を作れば心配ないであります!!」と一人言うとあっという間に立ち直り、ちょうどよく倒れていた木を適当に切り始めた。
「...うーん、でもどうやって作れば...」
何個か転がる丸い木々。そういえば、一度家にやってきたアライグマのアライさんがこんなものを探してると言っていたような気がした。「二つくらい残しておくであります!それでは、突撃でありまーす!!」と二つ横に避けておき桶を作り始めた。
「はぁっ...よし!完成であります!!」
円柱状の丸太の中を掘り抜く形で作ってみた桶は水をきちんと中に溜め込んだ。周りには丸い底に側面を貼り付ける形の桶もあれば、完成品と同じように掘り抜く形の桶もあった。そしてそのどれもに穴があいていたり、掘り抜き過ぎていたり、底の板が小さかったりしていた。倒れていた木を何個かに切り分けてすぐのものは避けておいたもの以外では一つもなくて、最後の一つだったことが伺える。
「早速見せにいくでありまーす!!」
満杯の水が揺れ、右に左に少しずつ溢れる。それも気にせず家への足を進めた。
桶の中の水が半分になってきた頃。自分の掘ったトンネルの扉を開けようとしたとき、空から声が聞こえた。
「ちょっと待つのです」
音もなく頭の翼をはためかせ、博士と助手が目の前に降りてきた。止まったせいで波が桶の側面でたち、前後に揺れた。
「最近、ビーバーを見かけませんが...一体どうしたのです?」
「え?ビーバー殿は家で寝てるでありますよ?」
「ならちょっと顔を見せるのです。その道具を運ぶのは我々に任せるのです」
梯子を登りながら桶を運ぶのは辛かったので、桶を二人に託して家に上がらせる。しかし二人はトンネルを使わず飛んでいって家へ。プレーリードッグは梯子を使った。
わくわくしながら梯子を登る。一人であれを作ったのならビーバーも喜んでくれるだろうと。水に濡れた足を何度か滑らせて、家の床から顔を出す。博士と助手はすでに部屋にいて、桶を床に置くところだった。
「ビーバー殿!博士と助手が来たであります!」
「いや...」
「博士!助手!残念ながらビーバー殿は眠って起きないのであります...用なら伝えておくでありますよ?」
「もう、いいのです」
二人は首を振る。プレーリードッグは特に気にすることもなく冷たいビーバーの手をぎゅっと握った。
「早くビーバー殿に見せたいであります!」
□■□■□
けものフレンズのアニメを見ていると、かばんちゃんの「食べられたら死んじゃうって...記憶がどうとかって...」というセリフがあります。私は最初、「何故「記憶が消える」と言っているのに死ぬという単語が出るのだろう」と疑問を抱きました。実際は動物に戻り記憶が無くなるのに。それじゃあ動物じゃなくてフレンズのままでいたら「死んでいる」と認識されないのか?と思ったのがこの作品。アニメ勢なのでフレンズの「死」というのはよく分かっていないのですが書きたくなって書きました。
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