第7話 お前らの頭の中のチート物語

我が祖国、人類連合共和国は世界と人類の平和のために戦争・思想統制・科学技術開発に重きを置いて成長してきた。思想に背く者はその命を、思想に背かないもののうち知識のある者は技術開発を、知識のない者は兵力を国に捧げなければいけない。


だからこの国に転生した者が安全に生き残る術はただ一つ。


「小テスト開始!」


「!」ペラッ


自分が科学技術の発展に貢献できるだけの才能を国に示すことである。つまり勉強が身を守る最善の方法という訳だ。幸い俺は記憶を前世から引き継いでいるから、中学1、2年くらいまでの科学知識はある。ただ


「・・・(くっそがああ)」


分からない。中学三年の知識すらもう俺にはない。そして


「ふぅーっ、先生終わりました!」


他のやつはどうやら理解しているらしい。公理その1を考えれば俺にチートなど特に付与されている訳ないのは明らかだった。前世で勉強してたやつが現世の転生チート能力に該当するのだ。


俺が転生時勝手に自分を特別視していただけで神様にしてみれば俺のアイデンティティなど他人それに比べ取るに足らないものだったのだ。


前世のラノベでは異世界転生すると必ずと言ってもいいほど特典が付いてきた。神様に魔法のスマホを渡されたり、武器やアイテムがくっついてきたり、特殊な才能が発言したり、前世の知識が役に立ったり、言葉が通じたり。前世では主人公に自己投影なんてしながら楽しんでたが、よく考えれば一番そこがラノベをつまらなくしている要素だとこの現世にきて気付かされた。


ラノベの作者は

『もしも自分が都合のいい立場ならどんなうれしいことが起きるか』

という妄想しかしない。だが本当に納得出来る、今必要とされている話というのは

『もしも自分が都合の悪い立場なら、その状況を運に頼らず打開できるか』

という話である。


運良くチートを手に入れたならそれで結構だ。だがどうすれば前世で何の特技も個性もなかったF欄出身酒パチンコ中毒者がこの世界で逆転できるのか、これが知りたいのだ。


「・・・(くっそ、分かんねえ。分かんねえよ・・・。)」


「はい、ではそろそろ答え合わせを始めます。まず第1問は〜」


誰か、教えてくれ。チートを手に入れる方法を。俺が他人を出し抜く方法を。

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特別な自分の異世界チート @ZuboshiUmeboshi

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