老人と友人の約束

明鏡 をぼろ

第1話

「またここで会おう」

そう誓ったあの日から900年もの時が過ぎた。

ひたすらその老人は待ち続けた。友人を待つためなら、会うためならなんでもできた。


最初に老人が死んだ時、老人は天国へと行った。行いの良い人だった。本来ならそこで幸せな余生を過ごせるが、老人は友人に会うためにすぐに転生した。


転生する時、昔に死んだ妻に会った。


「せっかく今会えたのにもう行ってしまうの?私と楽しい時を過ごそうは思はないの?」


妻は久しぶりに夫に会えてとても嬉しかった。

しかし老人は、


「それよりももっと有意義な時間を過ごしてくる」


といって行ってしまった。

妻は「行ってらっしゃい」としか言えなかった。


老人はなるべく死なないように自分を養いながらもいつまでも待ち続けた。死んでは生き返り、死んでは生き返り、その繰り返しであった。


老人は思った。

私はなぜこんなに会いたいんだろう。どうしてこんなに待てるのだろう。よほど私は会いたいんだろう。


ある日、老人のもとをある女性が訪ねて来た。

女性が口を開く前に老人が尋ねた。


「お主は私が会いたがっていた友人か、はたまた合わせてくれる者、又は友人の居場所を知っているものか。」


「いえ、違います。ただ、ずっとここで


老人は女性を殺した。


「無駄な期待をさせおって。邪魔だ」


それから何年か経ち老人が死ぬと、そこはいつもの場所ではなかった。


「ほら、そこの老人、早く来い!」


老人は気づいた。そこは地獄であった。


なるほど、人を殺した私は地獄に来たのか。早くあの場所へと戻りたいものだ。


閻魔大王の前まで来て老人は言った。


「どんな重い刑でもいいから、一番早く転生できるやつにしてくれ」

「老人よ、そんなに早くあの場所に戻りたいのか?」

「うむ」

「わかった、では一番重いが一番早く帰れる刑にしてやろう」


老人は喜んだ


「その刑は、


閻魔大王は重い声で言った


「一生あの友人には会えない刑だ」


老人は転生し続けるあまり、「目的があの友人に会うこと」から、「あの場所で待つこと」になってしまっていたのであった。

老人は苦しんだ。


確かに、一番重い刑であった。


ひぐらしが鳴いていた

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老人と友人の約束 明鏡 をぼろ @meugahi

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