⑩別れを

「えっ、かわいいね!!」

「……」

「無視!?」

「繋ちゃんは恥ずかしがり屋さんなだけなんです!!だから、その、えっと……」



暗黒の鍋パーティーの後、アルバイトメンバーに安倍繋といちごちゃんが加わることになった。二人はまだ学生なので、土日のアルバイトだ。

繋は近所にあるワルで噂の高校の制服を着ており、長い黒髪と合わせると黒尽くめだった。先日ウドとデートに行ったらしく、ややゲッソリしたウドと白いセーターを着てツヤツヤした繋の姿が見ることができた。


大方ウドに「こういうのが差し色っで言うので、いいんじゃねぇが」とかで買って着たのだろう。繋の周りのモヤモヤした気配もほんのり桃色に色づいている。


ちなみに美少女二人は百合子さん考案のメイド服(喫茶店仕様)を着ており、ざわくんが気になったのはその衣装についてだった。

黒を基調とした上品なデザインで、おとなし目のフリルが二人の気品をより高めている。

いちごちゃんは普段から明るめの白とかピンクとかの服しか着ていないので、こういうシックなメイド服も意外と似合っていた。


「かわいい」

「えっ!?」

「声に出てた?ごめん……」


可愛らしい二人をなんの気なしに眺めていると、百合子はざわくんの額に滲む汗に気がついた。


「ざわ、顔色悪いわよ」

「あ、本当です!!青白いようで……」


いちごがざわくんの顔に触れようとする、しかし彼はそれの手を避けた。


「……ごめん、“僕”少し調子が悪くて」


そしてざわくんは倒れた。



その日、帰っては来なかった。

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奇妙な喫茶店の日常 ましろ @mashiro5678

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