第三話 星空

ミールは新たなる役目に従い研究所を出た。そこは北の極寒の大地だ。あたりは氷で覆われ、草木は生えず、目の前から痛いほどに雪がオートマタである体に叩きつけてくる。オートマタのため寒さに凍える心配はないが、吹き荒れる雪はオートマタの機体である自身を傷つけるかもしれない。そう思いおそらく人間が使ってだであろうコートを見に羽織る。とりあえず西へ向かおう。彼女はそう決意し、少しずつ吹雪く雪を進んでいく。




夜になり雪はだいぶ弱まってきた。視界も晴れ、夜空には満天の星が見える。夜空に輝く星々。もしかしたら一度目に見た時よりも綺麗かもしれない…一度目?なんのことだろうか。記録メモリーにはそんな情報はどこにもない。けれどこの星空をいつか、誰かと見た気がするのだ。そして決して忘れてはいけないものだった気がするのだ。分からない、わからない…



再び空を見ると、虹色のカーテンがかかっていた。あれをオーロラというのだろう。あまりに神秘的な光景に足が止まってしまった。ロボットに感情は無いはずだ。しかし何故こんなにも世界が見せる表情に心がふわふわとするのだろうか。これが感情というやつなのだろうか。

私はただただその光景に魅了され、オーロラが消えるまで眺めていた。


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最後の観測者 三月のうさぎ @reinforce

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