初恋

こってぃー

初恋であり。これが最後の恋。

僕の初恋は中学2年生の頃だった。

この時、彼女に恋をしなければあんなに悲しまずにいられたのだろうか。

あの時から僕は、

絶対に叶わない恋と分かっていてもある一人を思い続けている。



さかのぼること10年前。僕が中学2年生の頃。

周りは皆、彼女と映画を観に行ったり、遊園地に行ったりなどデートをして、

良き青春を送っていた。

僕はそんな青春を送っている友達に嫉妬したのか。うらやましかったのか、

彼女を早く作って友達のように青春を送りたかった。


ある日、もうすぐ受験生だから勉強しようと思い、

まぁ母に勉強しろと言われたからなんだけど。勉強しに図書館へ行った。

春休みで日曜日だからかもしれないが、図書館はとても人がいた。

勉強ができるスペースも、勿論人がたくさんいる、ちょうど一席空いていた。

右には、高校生っぽい男。左には僕と同じくらいの身長の女子。

左の女子が凄く可愛かった。

とりあえす席に座って、問題集を開き問題を解こうとするが、

隣の子が気になって勉強に集中できない。

どうにかその子の事を知りたくて、何か良い方法はないかと考えていると、

やっぱり、思いつかない。いきなり話しかけても不審者扱いされて終わり。

どうしよう。。と困っていたとき彼女が立ち上がった。あぁもう帰るんだとがっかりしていたが

彼女は、荷物を持たずにどこかへ行った。

察するにトイレだと思う。   ここでひらめいた、紙にメアドを書いて

彼女の席に置いておけばいいんだと。でも彼女が携帯とか持ってなくて

連絡出来なかったり、ゴミだと思われて捨てられたら、終わりだ。

ここは、彼女が携帯を持っていることに賭けよう。

急いでメアドを書いて、彼女が帰ってこないか確認して

彼女がすわっていた、イスに置いた。

心臓がばくばくする。急いで荷物をまとめて、家に帰る。

「ただいまー」

「もう勉強終わったの?」

「席が空いてなかった」と誤魔化し急いで部屋に戻る。

ここでなぜかわからないがやっと安心できた。

紙があることに気が付いてくれたかな。捨てられてないかな。

とか、めっちゃ心配になって、気づいたら寝ていた。

お母さんに夕飯と起こされ、ご飯を食べる。

ご飯を食べてる時も、あの子の事を思い出してしまい、ご飯を食べることができない。

生まれてきて、14年まだ恋をしたことのない僕でもこれが恋ということに

気が付いた。僕はあの子に一目惚れしたんだ。

僕はあの子を意識していたけど、あの子は多分僕のことを意識していないと思う。

でも心のどこかでもしかしたら意識してくれてたのかもと勝手に考えてしまう。

「今日は食欲無いの?」母にそう聞かれた。

食欲が無いわけではないが。メールがきているか気になって

箸が進まない。

「うん」とりあえずここは、元気の無い感じで言っておこう。

早く部屋に戻って、メールが来ているか確認したい。

「無理して食べなくてもいいからね?」

「ごちそうさま」と言い、急いで部屋に戻る。

携帯をつけると、通知が来ている。メールだ。

手が震えてきた。恐る恐るメールを開いてみた。


{あの、図書館で私の席に手紙置いていきませんでしたか?

メアドが書いてあったので、メールしたのですが、間違えだったらすみません。}


良かった携帯持ってたんだ。と安心した。

でも、何て返信すればいいかがわからない。

恋をしたこともないし、女友達もいないし、返信に迷う。

悩んだ結果。


{こんばんは。どこにメアドを書いた紙を忘れていったかと

探してたところです。あの、多分隣の席で勉強してたんですけど、

わかりますか?}


と。送った、ここはやっぱり怪しまれないように偶然ということにしとこう。

もしかしたら覚えてくれてたりして と期待していたが見事に外れた。


{すみません。覚えてないです。}


やっぱり、そうだよね。ここは何かの縁ということでメールをして

仲良くなる!とか、どうかな。


{そうですか、これも何かの縁だと思うのですが、

よければ、このままメールしてもいいですか?}


今思い返してみたら、結構怪しかったと思う。

でも、彼女からの返信は思いもよらなかった。


{そうですね、私は中2女子です、奥菜静空おくみなしずくって言います}


少し警戒してそうだけど、すぐ年齢というか、学年を教えてくれるなんて、

嬉しいが、怖かった。


{僕は中2男子です。尾門湧貴おかどゆうきって言います。あの図書館にいたってことは、

学校はこの近くですか?

僕は第3中学校です}


{私は第1中学校です}


遠いとも言えないが、近いとも言えない、微妙なところだ。


{そうですか!図書館よく行くんですか?}


ここは、仲良い風に返信して、仲良くなろう。


{たまに行きます!今日は日曜日だし暇だから行きました!}


きた、これでどんどんメールしてけば仲良くなれるかも。

この後もたくさんメールをして、最初よりかは勿論距離が縮まったし

少しくらい好きになってくれたかな?と思っていた。

どうにか、恋話こいばなにもちこむことができた、


{好きな人っていますか?}


{いるよ!}


少し残念だったが、もしかしたら僕のこと好きかもとか

勝手に思い込んでいた。


{どんな人?}


{優しくて、運動がめっちゃ出来る人!}


この返信が帰ってきて、ものすごく落ち込んだ、この初恋は叶わないのか、

と、思うと涙が出てきた。


{あ、ねぇ}


{ん?}


{いや、なんでもない}


本当は彼氏がいるかとか、その人と付き合ってうるの?とか聞こうかと思ったんだけど

もしかしたら、これ以上悲しむことになるかもしれないから、聞くのをやめた。

静空さんは可愛いからモテるだろうし、彼氏くらいいると思う。

でも、僕はかっこよくなんかないし、静空さんとはつりあわないだろう。


{湧貴君がどんな人か知りたいし、顔も見てみたいから、今度一緒に勉強しない?}


静空さんは僕のこと不審者扱いしてないのかな?だから、一緒に勉強しようとか

言ってくれてるのかな?

それとも、断ったら実は誘拐目的でメールさせてきたとか、逆に不審者扱いされるかな?

どっちみち、今日知り合って、会おうとか言ってくるくらいだから

警戒してると思う。

断るべきなのか、でも断ったら不審者扱いされてメールできなくなるだろうし

友達すらなれなくなると思う。

よし、ここは警戒を解くためにも勉強しよう。


{うん!そうだね、暇な日いつ?}


{明日とか?}


あ、明日?早いな、まぁ春休みだしそんな感じか。

でも、早いほうが良いのかな?

そのほうが早く警戒を解いてくれると思うし、


{わかった 明日何時にする?}


{10時とかどう}


{わかった じゃあ明日の10時に図書館の前でいい?}


{うん! じゃあ今日はもう寝るね、おやすみ!}


{おやすみ}


時計を見てみると、1時を少し過ぎたところだった。

僕はだいたい休みの日は、結構夜遅くまで起きてるから、

まだ眠くはない。

屋根に上って、風でもあびてくるか、

僕の家は、屋根裏部屋の窓を開けると、屋根があって、屋根は四角いから

そこで、寝ようと思えば寝ることもできなくはない。

しかも、屋根は誰も来ない。

本当は屋根裏部屋の窓を開けると、ベランダのようなスペースがあるのだが

中1の時に、屋根に上ってみたくて、手作りのはしごをつけた。

このはしごは、屋根裏部屋に隠してあるから、見つかることはない。

つまり、はしごをかければ、僕だけのスペースとなるわけだ。

眺めも良いし。柵のようなちいさな壁もあるから、

寝転んだら、誰にも見られないし、落ちることもない。

いつも通り、はしごを付けて、屋根に上る。

4月の暖かい昼とは対照的に、少し肌寒い風が吹いている。

でも、快適だ。いつでもこれるようにと、ここには飲み物と缶詰や、

寝袋などがある。

ここで寝ることはあまりないが、一応寝たい時用に寝袋を前に買った。

ラジオを聴きながら、天気予報を確認する。明日が雨なら荷物を濡れないように

ビニールを被せとかなきゃいけない。

〈4月2日月曜日 東京天気晴れ 降水確率10%〉

雨が降る確率は少ないし、晴れのようだから

荷物はこのままでいいか。

夕飯をあまり食べていないから、お腹がすいてきた。

桃の缶詰を食べることにした。

賞味期限はまだまだだから、腐ってはないはず!

空けて一口食べてみる。

ん、、、、、、美味しい!

缶詰ってこんなに美味しいのか。

明日、いや正確には今日。

静空さんとの事を考えながら夜空を見ていたら

もういつのまにか寝ていた。


目が覚めたのは、朝日か日中の太陽に照らされていた時。

っは!と約束を思い出して

急いで携帯の画面を確認した。

       9時40分

やばい。図書館までの距離は近いわけではない。

このままじゃ約束の時間に遅れてしまう。

急いで、屋根から降りて、顔を洗って、歯を磨いて、服を着て。家を出た。

不運な事に。

途中携帯を家に忘れてしまった事に気がついて、

メールがきてるかどうか

気になるし、携帯を取りに帰った。

急いで家に帰り携帯を持って図書館が見えてきた。

9時58分だった。メールの通知があった。

開くと、


{おはよう、今日の約束覚えてる?}


と、来ていた。

しかも、メールが来たのは6時だった。

ここは寝てたと言い訳をしよう。


図書館に入って、昨日清空さんがいた席に向かう。

多分静空さんは僕の顔を知らないから

僕から話しかけなきゃいけないのか

と、思うと普段女子に話しかける事なんてないから、余計に緊張してきた。

いた。清空さんがいた。


「あ、あの静空さん」

「あ!湧貴君?おはよう!」

「う、うん おはよう!」


「君が湧貴君か~ 良い感じだね」

これが、お世辞かそうでないか凄く気になったが

僕は聞かなかった。 というより、緊張してて聞けなかった。


「どうも」

「昨日私だけじゃん?質問されたの、だから私も質問させて頂きます!」

「そうだね」

「じゃあ好きな人いますか~?」


いきなり、この質問か。好きな人って、僕の目の前にいる人が

好きな人だから。緊張する。


「い、いるよ」

「お~どんな子?可愛い?」

もちろん一目惚れしたんだから、うんしか答えられない。


「うん」

「湧貴くんって暇な時いつもなにしてるの?」

「家で、映画みたり寝てるかな」

「静空さんはなにしてるの?」

「友達とメールするか、本読んでる!」

「どんな本読むの?

「恋愛小説かな~笑」


話題が無い。ここで話を終わらせたらこれ以上仲良くなれない気がする。

どうにか話題を見つけようとしたけど、普段1人なのが悪いのか

どうやって話を振ったらいいかが、まったく分からない。

お互いにどちらかが話を振るのを待っていたからか

沈黙が5分ほど続いた。

しばらくして、話を振ってくれたのは静空さんからだった。


「湧貴君って女の子の友達とかたくさんいるの?」


いないけど。女子の友達が1人もいない自分が情けなくて

いない。って言っていいのか迷う。   迷ったけど正直に言うことにした。


「学校で別にいじめられてるわけじゃないけど1人だから、女子の友達もだけど友達自体いないんだよね」

「じゃあもしかして私が湧貴君にとって初めての友達だったり?」

「友達になってくれるの?」

「うん!」


正直驚いた。確かに最初に比べて仲良くはなったけど

警戒されてたわけだから付き合う以前に友達になれないと

勝手に思っていた。


「ありがとう。」

「そういえば湧貴君はさ、私が座ってた席に手紙忘れちゃったんでしょ?

誰にあの手紙渡す予定だったの?」


なんて答えよう。意図的にした行為とか言ったら絶対に警戒されるし、

嘘を付くのはいつかバレるし。どうしよう。

ここは、嘘を言おう。また警戒されるよりかはましだ。

いつか本当の事を言えばいい。


「実はねメアド忘れないように、メモしておいて

ノートに挟んで置いたんだけど開いたときに落としちゃったみたい。(笑)」

「そうだったんだ!もしかしてナンパする時に渡す用かな~って(笑)」

「え?」

「あ!冗談だよ(笑)」

「良かった(笑)」


少し話す声が大きかったのか、近くにいたおじさんに睨まれた。

僕がそのおじさんの方を見たからか、静空さんもその人の方を見ていた。

睨まれてからも小さな声で雑談して、お腹すいたな~と思って

時計を確認したら、1時30分だった。


「静空さんお昼ご飯とかどうするの?」

「湧貴君がどこか行って食べるなら私も行こうかな」

「どこか行きたいお店ある?」

「近い所がいい!」

「ここら辺だと、ハンバーガーかな?(笑)」

「じゃあそこ行こう!」


行く途中静空さんの友達がいたのか、手を振っていた

周りから見たらカップルに見えるのかな?とか妄想してるうちに


お店についた。歩いたから少し暑かったけどお店の中は、ほど良く涼しくて快適だった。

お互い食べたいのを注文した。

このハンバーガー店は美味しいし家からも近いから良く食べに来る。

僕は勿論、ポテトとビックハンバーガーとコーラだ。

この組み合わせは凄く美味しいし!

静空さんは女子中学生だからなのか、

あまりカロリーが多そうなのは注文してなかった。


「湧貴君ポテトちょうだい!」

「いいよ」


こういうやりとりは、恋人同士がやってるシュツエーションに似ている。

いわゆるリア充というやつだ。

元々彼女なんていないから、リア充とかは嫌だったけど

意外とこういうリア充のような行為も良いもんだと思った。

食べてる途中彼女の携帯が鳴った。


「ちょっと電話かかってきたら、電話してくるね!」


と、言い席を立った。

その電話の相手が誰なのかが気になる。

お母さんか、友達か。もしかしたら彼氏かもしれない。

彼氏がいるかもしれない。

電話の相手は友達だ。友達だ。友達だ。友達だ。

と、自分に言い聞かせ安心させようとしたけど、

やっぱり安心なんか出来なかった。


しばらくして静空さんが帰ってきた。

静空さんは、僕にこう言った。


「ごめん。彼氏が、いや用事ができて帰らなきゃいけなくなっちゃった」


大げさだが、一瞬時が止まったように感じた。


「あ、うん。わかった。ばいばい」

「ほんと、ごめんね!」


と、言い静空さんは僕の視界から消えていった。

一気に寂しくなった。いつも1人だから孤独に慣れているはずなのに

孤独感が僕を包んでいった。

たしかに、静空さんはさっき彼氏がと言いそうになっていた。

彼氏。いるのね。

どこかで彼氏がいるとは分かっていたのに。

分かっていたけど

信じたくはなかった。

でも今信じなきゃいけない。静空さんには彼氏がいるんだ。

しかも、彼氏に呼ばれて帰った。

当たり前だけどやっぱり

僕より彼氏が好きなんだ。

僕より彼氏を優先したんだ。

僕より彼氏の方が大切なんだ。

まだ、ハンバーガーが残っていたけどこんな状況では、喉を通らない。

申し訳ないけど、捨てて僕は家へ帰った。


家へ着いて。

僕はすぐに部屋に戻った。

悲しみ。孤独。絶望の感情しか頭の中に無かった。

たかが、用事が出来て帰っただけなのに、そんな些細なことだけだけど

僕にとっては、普通の10倍。いや100倍。大切なんだ。


この日の夜静空さんからメールが来ていた。


{今日はごめんね。急な用事で。}


せめて彼氏から呼ばれたからとか、本当の理由を言ってくれれば良かったのに。


{なんの用事だったの?}


ここはちゃんと真相を聞いておきたい。


{友達が、急用だから今すぐ来てほしいって。}

{友達って彼氏?}

{うん。}

{もういいよ!また今度勉強しようね}

{ほんとごめんね! うん、また勉強しよう}


本当は、彼氏からなんで呼ばれたの?とか聞きたい事はたくさんあったけど

面倒な人とか思われるの嫌だったし。これ以上悲しむのは嫌だったから

詳しくは追及しなかった。


この日から1週間ほどメールはしなかった。

静空さんは、僕からメールするのを待ってたんだと思うけど

僕はメールをしなかった。

一度メールをしようとしたけど、送る気になれなかった。

1週間ぶりにメールを送ってきたのは静空さんからだった。


{もうすぐ新学期だ! 湧貴君の学校はいつから始まるの?}

{4月10日からだよ}

{じゃあ、同じじゃん!}

{そうなんだ! ここら辺の学校は大体4月10日からかな?}

{多分そうだよね!}


新学期まであと1日。

多分他の人は、新学期やだとか行きたくないとか思ってると思うけど

僕は、学校でも家でも1人だから学校だからって別にどうも思わない。

今日は疲れたからもう寝ることにした。


次の日の朝。携帯を確認するとメールが来ていた。


{もう寝たのかな?}


昨日返信しないで寝たからだ。

どうせ今日は午前授業だから帰ってきたら返信することにした。


学校から帰ると、またメールが来ていた。


{学校初日なのに頭痛がするから学校休むことになった!}

{無理しないでね!お大事に}

{うん、ありがと}

{静空さんの彼氏って同じ学校の人?}

{昨年までは一緒だった!今は高校1年生だよ。}


年上かー。

よくありそうだな。部活の先輩とかと付き合うみたいな。


{部活の先輩とか?}

{うん そうだよ}

{静空さんの部活なに?}

{陸上部だよ!}


陸上部の先輩ってめっちゃかっこ良く

見えちゃうやつじゃん。

陸上部の先輩に、僕は勝てないと思う。


{すごいね!}

{ありがと}


静空さんから告白したのかな?それともその先輩から告白してきたのかな?


{どっちから告白したの?}


何分も何十分経過した。

いつも返信が早い静空さんなのに、なぜか返信が帰ってこない。

聞いちゃダメな事聞いちゃったのかな。 謝ろう。


{ごめんね、答えたくなかったら答えなくてもいいよ}


1時間いや2時間以上が経過した、でもやはり返信はなかった。

頭痛が酷くて、寝たのかな? 倒れたのかな。

病気じゃなかったらいいけど。


2週間が経過しただろうと思う。

この日の夜静空さんからメールがきた。


{携帯を落としちゃって、ごめん!メール出来なかった。}


僕にはこれが嘘のように感じられた。理由なんてないけど

なにか他に理由があると思った。


{そっか、良かった。頭痛くて入院してるのかなって思ってた。}

{大げさだよ(笑)}

{そうかな?}

{そうだよ}


久しぶりの彼女とのメールはたのしかった。

次の日が、休みだからか僕らは時間なんか関係なく。メールをした。

深夜4時くらいで彼女から返信は来なかった。

今回は、寝落ちだと思った。

僕もめっちゃ眠かった、でも彼女はもっと眠かったと思う。

お昼時になり彼女からメールがきた。


{ごめん!寝落ちしちゃった}

{大丈夫だよ!}

{湧貴君って優しいんだね!}

{え? そんなことないよ! 静空さんのほうが優しいよ!}


正直凄く嬉しかった。好きな人から褒められたら誰もが嬉しいだろうけど

褒められた事なんてまったくない僕からしてみれば、

普通の人の何十倍も嬉しいだろう。

でも。ここで褒められて「そうでしょ!」とか言ったら

ナルシストとか思われるだろうし、あえて逆に褒めた相手を褒めよう。


{え、ありがと(笑)}


そっか、素直に喜んだら良かったのかな?

やっぱり普段から人と関わらないから、こういうやり取りはどう返して良いかが

まったく、わからない。

いつもは、1人に慣れておいた方が、いつか誰しも1人になるときが

あるのだから、孤独んい慣れる為に1人でいるのは良いこととか思ってたけど

どんな事にも、メリットがある分デメリットもあるのだな、と実感した。

でも、1人で居て不便に感じたことなんて1つや2つ程しか無い。

だから1人で居るのはメリットの方が多いと僕は思う。

でも、普段1人で居ない人達は、1人で居ることはデメリットの方が多いと思ってるんだと思う。

まぁ、いつも1人で居る人は1人が良いって言うけど

普段2人以上で居る人は、2人以上が良いって言うんだと思う。

僕は1人で居ることはを望んで1人で過ごしてるのに、

他の人は、僕を見てボッチじゃんとか可哀想とか思ってる。

ボッチって言葉は、好きじゃない。

1人で居る人を見下してるというか、そんな気がする。

恐らく今後も1人で居る人と

そうでない人が分かり合うのは

無理だと思う。少なくとも現時点では無理だ。

ってことは、僕は1人で居るのが好きだけど静空さんは

友達とかと居るのが好き。

つまり、僕と静空さんは相性が悪いのかな。

僕が、友達と居ることに慣れなきゃ付き合ってもすぐ別れちゃうかも。

まぁ、その前に静空さんには彼氏がいるから付き合うなんて不可能か。

けど付き合いたい。 せっかく少しだけでも距離を縮めることができたんだから

付き合いたい。このまま友達の関係で終わらせたくない。

そんな事を考えてるうちに静空さんに返信をするのを忘れてしまった。

そのまま色々考えてるうちに疲れたのかわからないが寝てしまった。

お母さんに夕飯だからと起こされご飯を食べた。

食べ終え部屋へ戻ると7時半だった。

そこでメールの返信をしてない事を思い出して急いで携帯を確認した。


{大丈夫?}


と、メールが来ていた。

多分静空さんは僕に何かあったのかと心配してくれたのだろう。


{ごめん! 気づいたら寝てた。}

{良かった、何かあったのかと思った}

{心配してくれてありがとう}

{なにかあったら言ってね。友達なんだから}


そうだよね、友達なんだよね。友達ってお互いを心配し合うのかな?

けど、それより静空さんが心配だ。

携帯を落として連絡を出来なかったのなら修理してるはずだけど

2週間で修理が終わるのかな?と疑問だ。


{友達ってお互いを心配し合うの?}

{当たり前でしょ、だって友達じゃん(笑)}

{そうだよね、じゃあ静空さんも何かあったら言ってね友達なんだから。}

{うん!ありがと}

{今日はなんか疲れてるからもう寝るね}

{うん、おやすみ}


本当はもうちょっとメールしたかったけど、寝落ちして心配されたら

申し訳ないから。今日はもう寝ることにした。 

 次の日、なぜだか分からないが静空さんとはメールをしなかった。

僕がメールをしなかった理由は、なんてメールしたらいいか分からなくて、

静空さんからメールが来るのを待っていたからだ。

けど、いくら待ってもこの日は静空さんからメールが来ることは無かった。

次の日の朝学校に行く準備をしていると静空さんからメールが来た。


{おはよう! 月曜日の朝はいつもの朝と違って

眠いし本当に嫌いなんだよね(笑)}


昨日はメールが来なかったから、少し心配したけど元気そうで何よりだ。

少し学校へ行く時間までは余裕があったからメールを返すことにした。


{同じく月曜日の朝は嫌いなんだよね(笑)}

{やっぱり?そうだよね(笑) じゃあ学校行ってきます!}


じゃあ僕も少し早いけどそろそろ学校行こうかな。


僕の通っている学校の人数は別に多いわけでもなくてひと学年

2クラスしかないから、新学期にクラス替えをしても誰も違和感とかは

ないらしいが、僕はクラスの人とはあまり喋らないからほぼ皆が

新しいクラスメートに見える。

なぜほぼかと言うと、良く僕が1人なのを気づかって僕に近寄って来る

学級委員がいるのだが、その人とまた同じクラスだから

別に皆が新しいクラスメートとは思っていない。

なぜ僕に寄って来るのだろうか。

僕は好きで1人でいるわけなんだから1人にしてくれればいいのに。

前にその人から「なんでいつも1人でいるの?」と聞かれた事がある。

僕は隠す事もないし、普通に「1人でいるのが好きだから」と答えたのだが

そのせいで逆に心配されている。

多分この人は、他のいつも1人でいる人と話したことがないからだと思う。

いつも1人の人は大体『1人が好きだから』と答えると思う。

こういう時にやっぱり、<普段誰かといる人>と<普段1人の人>は

僕だって、静空さんと付き合う為に

いつも友達とか誰かといる人を理解しようとしているけど

やっぱりまだまだ疑問な事がいくつもある

だから理解し合うのは難しい事だと思う。


そしてあの元学級委員は、元学級委員ではなく現学級委員として

また僕の方へ寄ってきた。


授業が終わり。 いつも通り家へ帰ろうとしたら

あの現学級委員に、「一緒に帰らないか?」と誘われた。

正直迷惑だったが、これを断るとこれから毎日しつこく

一緒に帰ろうと付きまとって来るからやむを得ず了承した。

帰り道。「今日習い事とか予定がなにもないからこれから

図書館とかで勉強しない?」誘われ

なぜか断りづらくてこれも了承してしまった。

待ち合わせ場所と時間をと時間を決めてお互い家へ帰った。


家へ帰りなぜ図書館へ行く約束をしてしまったのだろうと考え、今からでも断ろうと思ったけど、勿論連絡先など知らないわけだから。知らないからやむを得ず図書館へ向かった。


あの現学級委員はもうすでに図書館にいた。

約束の時間まではあと5分くらいあるのに早いなと思った。

やっぱり学級委員だからしっかりしてるなーと関心しながら

現学級委員の元へ向かった。


図書館へ入り勉強するスペースを確保して勉強を始めた。

少し経ってわからない問題があった。

僕は「わからない」など一切口に出していないのに

それを察したのか「どこか分からないところある?」

と聞いてきて。今度も僕は何も言ってないのに

「あー、ここ難しいよね」と言って。

解き方を教えてくれた。

正直とてもわかりやすかった。

2時間くらい勉強しただろうと思う。

疲れたーと思いながら背を伸ばしたら見覚えのある人がいた。

静空さんだった。

静空さんと付き合いたいわけではあるが、付き合ってるとか

噂されるのは嫌だから。

気づいていないふりをしようとした。

だが。もう遅かった。

静空さんは視線を感じたのかこっちを向いてきた。

勿論目が合った。

「あっ」とビックリしたようだった。僕に手を振ってきた。

ここはどうするべきなんだろう。


手を振り返してこの現学級委員に静空さんの事を教えて

付き合ってるとか噂されるリスクを背負うか。


手を振り返さないで噂されないが

静空さんを無視するのだから後で怒られるというか嫌われるかもしれないリスクを背負うか。


迷った結果手を振り返す事にした。 

できるだけ現学級委員に手を振った事を気づかれないように

でも、静空さんには見えるように手を振った。

学級委員なんだから周りをよ良く見ているわけだからか

手を振った事を気づかれてしまった。

現学級委員は僕が誰に手を振ったか気になったのか

僕の手の先を向いた。

もちろん静空さんと目が合っていた。

現学級委員は僕に

「知り合い?」と訪ねてきた。僕は心臓をバクバクさせながら小さく頷いた。

静空さんはこっちに寄ってきた。

静空さんは何を言うんだろうと考えようとしたが

僕に考える暇を与えずこう言った。

「今邪魔しないほうが良かった?」

僕は「大丈夫だよ」と答えようとしたがそれより先に現学級委員が

「いえいえ、大丈夫ですよ」と言った。

静空さんは僕の隣に座って僕にこう聞いた。

「お友達?」

なんて答えるべきなんだろう。友達になった覚えはないけど

違うとか言ったら逆にこの現学級委員に恨まれそう。。。

ここでも僕より先に現学級委員が答えた。

「はい! えっとあなたはー」

「私も湧貴君の友達です!」

うん、静空さんは友達だけど僕はいつこの現学級委員と友達になったのだろうか。

色々突っ込みたいところはあったけど今突っ込むべきではないと思う。

「お名前なんて言うんですか?」

和樹かずきです。そちらは」

「私は静空です」

「静空さんですか! よろしくお願いします」

「こちらこそ」

もしこの現学級委員と静空さんが仲良くなっちゃって

恋愛に発展したら、せっかくここまで頑張って距離を縮めたのに

それが台無しだ。

しかも、この現学級委員は友達が多いし、静空さんも友達が多いから

相性が良いはずだ。

最悪だ。どうしよう。

このまったく予想しなかったシチュエーションに

僕はとても混乱し戸惑っていた。

すると静空さんが「すみません、お手洗いに行ってきます!」

と、言い席をあとにした。

静空さんがいなくなったのを確認しているのか、静空さんがいなくなると

「もしかして湧貴君の彼女?(笑)」と聞いてきた。

意外な質問に戸惑ったが付き合いたいわけではあるが

今はまだ付き合っていないのだから正直に「違うよ、」と答えた。

「そっかー、なんか湧貴君が緊張しているように見えたから

付き合ってるのかな?と思って(笑)」

危ない。緊張しているのがそんなに分かりやすかったか。

「でも、もしかして好きなの?」

この質問にはさっき以上にビックリした、そして動揺した。

そんな動揺している僕を見て察したのか「ああそうなんだね(笑)」と

言い、ニッコリと微笑んだように僕は見えた。

その微笑み方からして僕の恋を妨害しようとしているのか。と勝手に

勘違いしていた。その逆でこの現学級委員は応援しようとしている事に

僕はまだ気づいていなかった。

静空さんがトイレから帰ってくるとこの現学級委員は、

「今日塾があるからもう帰らないと!」と言い、僕の方を見て

少し笑い小走りで僕らの前から立ち去った。

さっき勉強しようと誘ってくれた時には、今日は習い事がない日だから

と、言っていた。

だからこの時やっと、応援してくれている事に気がついた。

静空さんと二人っきりになった。

予想外な展開がいくつもあったから余計に緊張していた。

何を話せばいいのだろうか。

と、考えていると静空さんの方から話してくれた。

「さっきの和樹君って人面白そうだね!」

もしかして静空さんはあの現学級委員の和樹の事を気になっているのだろうか。

そしたら僕のこれまでの努力が全て水の泡となってしまう。

それだけはなんとしてでも避けたい。

「そうかな?」ここは頑張って静空さんの中での和樹の評価を下げなければ。

「そうだよ」 やっぱり和樹に興味があるのだろうか。

そう考えていると携帯がこ小刻みに揺れ始めた。

マナーモード中だったから何か通知が来たことはすぐに分かった。

携帯を確認すると和樹からだった。

【頑張れ!】ただその一言が送られてきた。

すると静空さんが「誰からのメール?」

なんでメールと分かったのだろうか、女の勘ってやつだろうか。

「和樹から」ここは正直にそう答えた。

「何てメール来たの?」

「頑張れ!」

「どういう意味?」

俺がどういう意味か知りたいよ。

勉強を頑張れということなのか、それとも二人っきりだから頑張れということなのか、考えると謎はますます増えてくる。

「わかんない」

「そっか」

なんか静空さんがガッカリしているように思えた。

やっぱり静空さんは和樹みたいなしっかりしてる人が好みなのかな。

俺なんか和樹の足元にも及ばない。

和樹は顔も良い方だし僕が和樹に勝てるところなんて、何一つとして無い。

そう考えていると静空さんに「大丈夫?」と聞かれていた。

っは、と目が覚めたように僕は静空さんの方を見る。

「何度も呼んだのに、まさか目開けたまま寝てた?」と真面目な顔で聞かれた。

「ちょっと考え事してた」

「なにか悩みがあるなら素直に言ってよ?前にも言ったけど友達なんだから。」

「うん、静空さんも何かあったら言ってね。」

「よし、じゃ今日はそろそろ終わりにしますかー?」

普段の俺なら断るところだが、今日はなぜか疲れているから

断ることはしなかった。

そのまま何かを考えながら家に帰った。

多分その時考えていたのは静空さんの事だと思う。

なぜって、静空さんとどうしたらもっと仲良くなれて付き合う事ができるか

それしかその頃僕の頭の中になかったからだ。

その後1ヶ月が経ったが静空さんとのメールが途絶えた。

もっと、恋愛以外の静空さんの事を考えるべきだった。


ある日お母さんが病気で近くの病院へ入院した、

お見舞いしようと病院へ僕は向かった。

病院に着きお母さんの入院している病室を探す。

お母さんが入院している病室の前に立った時、隣の病室の

扉が開いた。

お母さん以外に入院している人はたくさんいるんだから

それが当たり前だけど、その時の僕は開いた扉からどんな人が出てくるのか

妙に気になり開かれた扉を見つめていた。

すると。

扉の向こうから見覚えのある人が出てきた。


   静空さんだった。


なぜ静空さんはここにいるのだろう。

静空さんもお見舞いかな? でもそれにしては

入院中の患者が着るような服を着ていた。

まさか、静空さんが入院しているのか。

僕が静空さんの方をずっと見ていたからか、静空さんも僕に気がつき

目があった。

なぜだろう。 その時何秒、何十秒が経過しただろうか。

僕たちはお互いの目を見つめていた。

なぜいるかは触れてはいけない話題なのかな。

でも、それでも気になってしまう。

「なんでここにいるの?」

聞いたのは僕の方だった。

戸惑っているのだろうか、焦っているんだろうか。

静空さんがそわそわしているように僕は見えた。

「風邪引いたの」

風邪だけで入院するもんなのか。

その返答に納得してしまったのが1つの過ちだった。

それだけ言い静空さんはまるで、逃げるように僕の前から消えていった。


お母さんのいる病室へ入り。

少しいつも通り会話をした。

するとお母さんは僕にこう聞いてきた。

「このお隣の病室に湧貴と同じくらいの年齢の子が入院してるよ」

明らかに静空さんの事だ。ここは知らないふりをしよう。

「そうなんだ」

それだけ言い僕は家にっ帰った。


家に着きいつも通り部屋に戻る。

静空さんはなんで病室にいたんだろう。

風邪で入院ってあり得るのかな?

でも、もし嘘なら静空さんはなにかもっと大変な病気で

入院しているってこと。

僕は静空さんにメールをしようとしたけど

する勇気がなかった。

多分嘘をつくくらい重大な病気なんだと思う。

気づいたら寝ていた。

僕はある夢を見た。

夢なんて誰もが見るし普段別に夢の内容なんてまったく

気にしないし今日見たただの夢は夢なのに、

何故か僕の記憶に鮮明に残っていた。

内容は、静空さんが病気で死んでしまう夢だった。

これが予知夢でないことだけど僕はただただ願うしかなかった。


また日にちが経過した。


6月27日

今日は静空さんの誕生日だ。

もちろんプレゼントだって用意している。

だけどここ最近まったくメールなんかしてないし

病院で会ったのが最後でそこから1ヶ月以上が経過している。

今頃静空さんは何をしているのだろう。

冗談抜きで、生きているかどうかも分からない。

とりあえずお祝いのメールを送ろう。

誕生日なんて祝ったことないしめっちゃ緊張する。

なんて書いたらいんだろう。やっぱ軽めに書いたほうがいいよね。

【Happy Birthday

元気ですか? なかなかメールする機会がなくて

メール出来てなくてごめんね!】

これでいいかな? 勇気を振り絞って送信マークを押した。

10分くらいが経過した思う。

やっぱり返信は来ない。

何十分、何時間も携帯の前から離れず返信を待ち続けた。

だが、静空さんから返信が来ることはなかった。

こんな時静空さんと一緒の学校に通っている僕の友達がいたら良かったのに。

それからして、お母さんが僕にある事を話してくれた。

それは以前お母さんのいた病室の隣で入院していた静空さんの事だった。

「前にお母さんの隣の病室で入院してた人いるじゃん?

言うの忘れてたし、今さらだけどその子心臓の病気で入院してるんだって」

心臓の病気?

言葉の意味がまったく分からなかった。

言葉の意味を理解するのに時間がかかった

でも言葉の通り静空さんは心臓の病気だったんだ。

それだけをお母さんから聞き、何も言わず部屋に戻った。

やっぱり静空さんは病気だったんだ。

それも風邪の何倍、何十倍も重大な病気。

なんで静空さんは僕に嘘をついたの。

友達なんだから心配しあって、なにかあったら相談するって言ったのは

静空さんなのに、なのになんで相談してくれなかったの。

けど、そうだよねいくら友達でも静空さんには彼氏がいるんだから

普通、ただの友達より彼氏に相談するよね当たり前だよね。

でも、僕にも相談してほしかった。

もし静空さんが死んじゃったらどうしよう、

もう生きる希望なんて無くなっちゃうよね。

今までは静空さんがいたから頑張れた、でも静空さんがいなっちゃったら

生きている意味なんて無いよね。

もし天国とか地獄とか死後の世界があるのなら。

僕も死んで、死後の世界で静空さんに会おうかな。

静空さんが死んででしまったら僕も死ぬ。と僕は決めた。

命を無駄にするわけではない。

好きな人、死んでまで会いたい人に会いに行くために

僕は命を使うのだ。

もしそれを止めようとする人がいるなら

僕を止める前に、僕を説得する前に

静空さんの病気を治してください。

そして、携帯が光った。

静空さんから返信が来た。

【誕生日覚えててくれてたんだ、ありがとう

私こそメールできなくてごめんね】

ただそれだけの返信なのに、何故だろう胸が痛くなってきた。

でめお、良かった。

静空さんはちゃんと生きていた。

これでまた静空さんに会える。

【今度どこか遊びに行かない?】

送ってから気がついたけど、僕はデートに誘っていた。

【いいよ!】

これはデートの誘いにのってくれたってことだよね、

【行きたい所ある?】

【それは今度二人で決めよう】

【そうだね】

今決めても問題ないはずなのに、今度がいいってなんでだろう。

返信が来て。デートもしてくれるってことは

病気が治ったんだ!

僕はとても嬉しかった。

今までこれ以上の喜びがあっただろうか、

嬉しくて嬉しくて舞い上がっていた。

次の日、僕は静空さんに病気だったことについて

聞いてみることにした。

治ったんだから、隠すこともないし答えてくれるはず。

【静空さんが前に入院してた理由って病気が理由?】

でも、静空さんから返ってきた返信は、

【あれは風邪だよ】

なんで、まだ隠し続けるのだろう。

【もう正直に言ってよ、お母さんが教えてくれたよ】

【なんて】

【心臓の病気って、】

【そうなの。でも、もう治ったから心配しないで】

【良かった!】

病気っていうのは治っても辛かった事を思い出させるのは可哀想だったから

もう病気の事を聞くのをやめた。

治ってるんだし心配するような事も、もう無いし。

【今度また図書館でべんきょう勉強したい】

図書館で勉強か~懐かしいな。

【いいよ! いつ暇?】

【明日】

明日か、実は明日予定があったんだけど

久しぶりの静空さんとの勉強を優先することにした。

【わかった! 1時でいい?】

【うん】

久しぶりに静空さんに会える!

その嬉しさで胸がいっぱいだった

でも、なんで明日なんだろう。

明日は大雨ってニュースとか新聞とかでもやってるのに。

わざわざ明日図書館に行く必要なんてないと思う。

まぁ、いいか!


次の日。

ニュースや新聞などの予想は見事に的中した。

大雨だ。

でも、なにより静空さんに会えることがスゴく楽しみだった。

時間通り図書館へ着くと、まだ静空さんの姿はなかった。

30分後やっと静空さんが来た。

「ごめん、遅れちゃって」

「ううん、大丈夫だよ」

少し、雑談をしながら勉強を進める。

でも、しっかり者の静空さんが待ち合わせに遅刻するなんて

珍しい事もあるもんだなと思った。

静空さんは風邪なのかどうかはわからないが、時々咳をしていた。

少し体調が悪いのかな?とか思いつつあることを思い出した

誕生日プレゼントを渡していない。

せっかく頑張ってプレゼントを選んだのに家に忘れてきてしまった。

どうしよういつ渡そうか

多分今日はもう渡せないかな、だから今度一緒にまたここに来たときか

デートをする時に渡そう。

「あ、ちょっとお手洗い行ってくるね、」

とt、言い静空さんはトイレに行ってしまった。

なんか、この光景が懐かしく思えた。

初めて静空さんに会ったとき僕は静空さんがトイレに行ったときに

手紙をそっと席に置いた。なんかその時の光景に似ているように気がした。  でも、あの時とは違う。

僕は静空さんの友達になれたんだから。

そう思うと進歩したんだなと心の中で自分を褒めた。


それから10分。

静空さんが帰ってこない。

お腹痛いのかな?大丈夫かな?と、思っていたとき

静空さんの姿が見えた。

スゴく安心したのを覚えている。

目が悪くて静空さんの顔がハッキリ見えていたわけではないけど

少し表情が暗く顔色が悪かった。

でも近づくにつれて元気そうにも見えてきた。

本当は大丈夫だった?とかなにか聞くべきだったんだと思う。

だけどその時の僕はなんでトイレ長かったの?とか聞く勇気は無かったし。

少し失礼に感じた。

だからあえて何も聞かなかった。

「どうしたの?」と本来は僕が聞くはずなのに静空さんが聞いてくれた。

でも、逆にどうしたの?と聞きたかった。

「静空さん今日体調悪い?」

でも、聞かずにはいられなかった。

友達だから、でもそれ以上に静空さんの事が好きだから余計に心配してしまう。

「どうして?」

そうしてって。なんて答えればいいんだろうか、

「なんとなくだよ、」

「大丈夫だよ」

「なら良かった」

体調悪そうに見えたのは僕の勘違いか。

気づけばもう6時だった。きょうはもう解散することにした。

帰り道、静空さんの家を教えてもらった。

僕と同じ一軒家だった。


数日後

和樹からメールがきた。

「前に図書館で会った、静空さんさっき病院で見たんだよね」

どういうことだろう。

また入院しているってことか?

でも。静空さんの病気はもう治っているはず。

どうして、また病院にいるのだろうか。

もしかして。

また心臓が悪くなったのか、

そんな、治ってもまた同じ病気になることがあるのか。

僕は何をすればいい。

お見舞いに行くべきなのか。

でも、また入院していることを教えてくれなかったってことは

お見舞いに来てほしくないということだよね。

どうすればいいんだよ。

僕はお見舞いに行くことにした。


病院に着いた。

静空さんを探した。でも病院へ広いからそう簡単に見つかるはずがなかった。

受付のような場所があって、そこへ行き僕は

「奥菜静空っていう子が入院していると思うのですが

病室がどこか教えて頂きたいのですが、」

「少々お待ちください」

受付に座っていた人はパソコンを操作して恐らく静空さんのいる

病室を探しているのだと思う。

「お待たせいたしました。えっとー、38号室ですね。」

「ありがとうございます」

僕は急いで35号室を探した。

35号室はすぐに見つかった。

なんて言って入ったらいいんだろう。

とりあえずノックをしてみた。

「はい」と返事があった。

僕はゆっくり扉を開き中に入る。

静空さんと目があった。

とてもビックリしていたと思う。

「どうしてここにいるの?」と静空さんが質問してきた。

「それはこっちのセリフだよ、なんで入院してるの?

病気治ったんでしょ?」

「治ったけど、少し体調が悪くなったからまた入院してるのー

大丈夫だから心配しないでね笑」

元気そうで良かった。

何を話そうか迷っていたけど、その迷っている間に

静空さんは寝てしまった。

よし帰るか。元気そうだけど明日もお見舞いに来ることにした。

家に帰り自分の部屋に戻った。

でも、元気そうで良かった。

とても安心した、このままずっと元気でいてほしい。

僕はそう願った。


次の日

今日は静空さんに会うのが楽しみだった。

なぜって、誕生日プレゼントを渡すからだ!

これで好感度が上がるかな?とか勝手に妄想していた

学校が終わり急いで家に帰り

プレゼントを手に取り全力で走り病院へ向かった。

なんて言って渡そうかな~ 

喜んでくれるかな?

色々考えながら走った。

病院へ着いた。

さすがに病院内だから走れなかったけど少し早めに歩いた。

僕は38号室の前に立ち、楽しみだけど緊張し少し震えた拳で

病室を扉をノックした。

返事が無かった。

中へ入ると、

僕が来ることを知らなかったからか静空さんは寝ていた。

しばらくすると、病室の扉が開いた。

白衣姿の男の人が入ってきた。

一目で、病院の先生だと分かった。

「静空さんのご家族の方でしょうか?」

僕は違います。と断ろうとしたけど、そんな有余を与えず

こう発した。

「最善を尽くしましたが今日が最後です。」

とだけ言い。去っていった。

最後?そんなわけない

だって、昨日まであんなに元気だったし。

意味が分からなかったが、意味はそのままだった。

静空さんが死んでしまうのか、

ってことは、まさか昨日は僕が来たから

元気に振る舞っていただけ?

無理してまで僕を安心させてくれたのか。

静空さんn目が開いた。

「ゆ、ゆうきくん。」

その声はとても小さく。まるで本当に死ぬ寸前のようだった。

「静空さん?大丈夫?」

「そこの、棚の手帳をとって。」

僕は急いで取った。

「それね私の日記。 大切な物だからゆうきくんが持ってて、、」

「なんで、大切なら静空さんが持ってなきゃ。」

「もう、私が持ってても意味ない。」

なんでそんなことを言うのだろう。

静空さんが布団の中から手を出した。

「に、にぎって。」かすかにそう聞こえた。

僕は優しく静空さんの手を握った。

でも、静空さんの手は、冷たかったし、力も入っていなかった。

「死なないよね。」僕はそう聞いてしまった。

静空さんは何も答えなかった。

「渡したい物があるの」そう言い僕は持ってきたプレゼントを渡した。

「誕生日プレゼント!」

「みせて、」

僕は中を開けてプレゼントを見せた。

「ありがとう。」

「これは手紙!あとで読んでね」

「今見たいの。」

僕がいる前では見せてくなかった。なぜなら、

ラブレターだからだ。

でも、見せるしかなかった。

僕は手紙を静空さんに見せた。

読み終わったのだろうか。静空さんの目から涙が出てきた。

「ありがとう。。最後まで心配させてごめんね。」

「なに、もう最後みたいな事言ってるの、

一緒に遊びに行くんだから、元気だして。」

「ねえ、ゆうきくん。

あの手紙は誕生日の時に書いたんでしょ、

今も私のこと、、す、すき?」

「好きだよ!静空さんの事好きだよ

だから、だからお願い。

病気なんかに負けないで。」

いつもは泣かないのに。僕の目から涙が出てきた。

「よかった。」

そう言い静空さんは微笑みながら目を閉じた。

病室内に、ピーっと音が鳴り響いた。

静空さんは最後まで僕の手を握り続けていた。

その後の事はハッキリ覚えていない。

でも、静空さんは死んでしまったんだ。

もう、生きる希望なんか無いよ。もう静空さんには会えないの。

僕も死のうかな。

そう思ったとき静空さんから受け取った日記が目についた。

中を開くと、そこには驚くような内容がいくつも書いてあった。


4月10日

彼氏と別れた。傷つく事をたくさん言われた。


5月6日

心臓がまた悪くなって入院。


5月27日

そろそろ心臓良くなるかな。


6月18日

目が覚めたらお母さんと先生が話していた。

寝ているふりをしながら話聞いてたら

もう死んじゃうかもだって話してた。


6月25日

一時的に退院。

もう死んじゃうから少し退院できたのかな?


6月28日

昨日、湧貴君から誕生日のお祝いのメールがきてた!


6月29日

久しぶりに湧貴君と勉強。もう長くは生きられないから

1日でも早く湧貴君に会いたい。


7月4日

また入院。


書いてあるのはこの日が最後だった。

一番最後のページに折られた紙が挟んであった。


[これは湧貴君に渡す予定の手紙。

でも、渡すのは私が死んでから。

だから、これが読まれてる時は私が死んだってことかな。

湧貴君、今までありがとう。

友達なんだから何かあったら相談するって言ったのは

私なのに相談しなくてごめんね。

私ね、湧貴君の事とがね好きなの。

でもね私は死んじゃうからこの恋は叶わないし、

湧貴君に迷惑かけちゃうから、言えない。

でも、私は死んでも湧貴君の事が好きなの。

いつかまた会えるといいね。

私の分まで生きてね。]


僕だって好きだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

初恋 こってぃー @applekosa2004

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ