第8話 旧魔王城跡

「あー、疲れた、もう限界、久しぶりに、魔法使ったから」


ライムの転移魔法により、二人は旧魔王城付近の森に来ていた。トールの提案で、過去の自分たちを取り戻すために、強い魔物が多数出現していたこの場所を選んだのだ。当初は、カロリー消費のために歩いてそこまで行こうと思ったのだが、ライムが駄々をこねて転移魔法での移動となった。カロリーは魔力となって多少消費されたが、その分の疲労感がライムを襲っていた。ライムはミントととは異なり、魔法のスペシャリストではない。魔法と剣技が使えるバランスタイプ。悪く言えば半端者なのだ。そのため、簡単な転移魔法でも自身の魔力リソースを余計に使ってしまう。怠惰な生活をしていたため、尚更である。


「ご苦労さん。少し休め。俺は適当にここら辺の様子を見ておくからよ」

トールはライムの転移魔法に相乗りしていたため、全く疲れていない。だが、小腹は空いているようで、どこからか干し肉を取り出して、むしゃむしゃと食べ始めてた。


旧魔王城跡ーー『跡』という名前の通り、ここには城だった建物が存在しているだけで、魔物の気配はない。崩れた建物の合間に、草木が生い茂っている。空気も綺麗な感じがする。淀んだ魔力も感じない。ここで、魔王軍とーーそれらを率いる魔王と戦ったのか、とライムは物思いにふけっていた。

魔王が倒されてからは、主だった被害は出ていない。だが時々魔族と、魔物に襲われたという話は聞く。ライムたちが倒したのは『魔王』であった魔族、魔物すべてを殺しつくした訳ではないのだ。


ふと、ライムの視界に大きな骸が見えた。

大きさから考えて、オークの物だろう。オークの軍勢とも、沢山戦った。

斬って、

裂いて、

潰して、

燃やして、

色んな方法で、それらを倒した。

そして、俺たちは強くなった。

倒した数だけ、奪われる人間の命は減ったはずだ。オーク含め、魔族と比べ、人間はとても非力だ。そして、魔族と人間は共存できない。

魔族は人間を食べるからだ。

人間は、魔族にとっての食料。

魔族は、人間にとっての天敵。

倒さなければ、倒されてしまう。

滅ぼさなければ、滅ぼされてしまう。

俺たちは正しいことをした。

世界を平和にした。

人間の世界を守った。

ライムはそう、自分に言い聞かせ、視界に写った骸に剣を突き立てた。時間経過で劣化していたのか、骸はあっさりと砕け散った。


ため息と、腹の虫が鳴る。

思い出すのも、腹が減るのだとライムは思った。


ーー

だから、共存できないのであれば、これから魔物の残党を倒すのも正しいのだろう。主な目的が、ダイエットだったところで。

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異世界ダイエット物語 虹色 @nococox

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