第7話 肥満会談終了
「それで、どうやって痩せるかについて話し合うか」
場所を近くの酒場に移し、仕切り直し。まだ真昼だというのに、店内は客で賑わっていた。
景気の良い賑やかな声が聞こえる。平和の証拠である。
ライムたちの目の前にも豪勢な料理が並んでいる。肉、肉、……肉。色んな生き物の、色んな部位が並んでいる。『食べないと、頭が働かないから』とトールが注文したのであった。
「それなんだがよ、昔の生活に戻ればいいんじゃないか? 冒険していたあの頃に。元々、俺たちは痩せてたんだからよ」
「確かに、貴様の言う通りかもな。あの頃は、移動や戦闘で体力をかなり消費していたからな。それに、食料も今ほど満ち足りてはいなかった。あの頃は、体に肉がつく余裕はなかった」
トールの意見に、リッツが同意する。肉体派のトールと、理論派のリッツの意見が合うのは珍しかった。いきなり、話し合いが完結しようとしている。まさかのトール、お手柄である。
「だが、昔の生活といってもどうする? 魔王を討伐し、魔族も好戦的な連中は一通り殲滅した。最早、冒険の目的が俺たちにはない。――いや、痩せるというのが目的であったか。どちらにせよ、どこへ行こうとそれは『冒険』ではなく、『旅行』で終わりそうだがな」
シニカルにリッツは笑う。
「それなら、山にこもって修行すればいい。俺はもとよりそのつもりだったがな」
「これ以上、強くなってどうする? 倒すべき相手もいないのだぞ?」
「それは……そうだな。ただの自己満足だ。けど、それで充分だ。俺は今より強くなりたい。昨日の俺より強い、今日の俺でありたい。」
トールは拳に力を入れて答えた。
「なるほど、貴様らしいな。だが、俺は別の方法をとらせてもらう。倒すべき敵がいない今、俺にはこれ以上の強さは必要ない」
リッツは立ち上がり、数枚の金貨を置く。
「また、一か月後ここの酒場で会おう。広場の銅像と同じ貴様らに会えることを願う」
「おい、まだ話は終わって――」
ライムの静止を無視して、リッツはそのまま去っていった。リッツもライムもマイペースな仲間であった。
「まぁ、いつものことだろ。それより、ライムはどうするんだ? さっきからずっと黙っててるが」
「そうだな……俺は――どうすればいい?」
「一緒に修行しようぜ。二人のほうが、いろいろできるからな」
トールの誘いにライムは乗った。二人は、熱い握手を交わす。
「じゃあ、とりあえず目の前のこいつらを最後の晩餐としようぜ」
「だなっ!」
そうして二人は、目の前の料理に貪りついた。
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