クトゥルフ暗黒関係
あきはる
狂信者
「神がいるならば、なぜ私を救わない?」
「こんなにも苦しんでいるのに」
「こんなにも祈り、あなたを求めているのに」
神とはそういうものではない
あなたは神について知らない
家族を失ったという男に向かって
そんな言葉が出そうになるのをこらえたことがあった
わたしも以前はこの人と同じようなものだったから
どんな言葉を投げかけても
どうにもならないことを知っていた
救われるには、自分でどうにかするしかない
わたしたちを救ってくれる神などいないのだから
わたしは不幸なことに
世界の真実を知ってしまった
いや、真実のほんの一部を
わたしが見て聞いて感じた神など
人間の体を通して理解できる限られたもので
断片にすぎず
それがすべてではないのだ
しかし、それでも
わたしが壊れるのに十分だった
人という肉の牢獄につながれたままでは
真実に至ることなど、できるはずもない
当然のことだ
知った、という言葉さえ
おそらくは不完全で不適切なのだろう
言葉はとても不自由で限界が近い
人間の
われわれ人間が触れてはいけない
あまりにも圧倒的で
その前では
ただ、ひれ伏すしかない
命をとらないで、と
しかし
わたしたちの言葉は届いてるはずがなく
それでも、人である限り
祈らずにはいられない
何かをすれば、何かが起こるなど
人間の勝手な思い込みにすぎないのに
それが受け止めてくれると信じて
ただひたすらに、むなしい祈りを捧げるしかない
それを神と名付ける
他にふさわしい言葉をわたしは知らない
わたしは神を知らないが知っている
神は神などではない
あんなものが神であってたまるか
「いあ いあ」
あゝ
愚か者どもの祈りが聞こえる
あれに祈りなど通じないのに
自分で何かができると信じているのだ
クトゥルフ暗黒関係 あきはる @03114
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