茅野さん

茅野さん

茅野（ちの）さんと出逢った四月九日の、風が強くて良かったです。

茅野さんがタイを直してくれました。袖口の匂い、くすぐったいです。

茅野さんと同じクラスになりました。二度目ましてで、笑ってました。

茅野さんは眼鏡な文学少女です。私と同じくらいの背です。

茅野さんはやっぱり図書委員です。だから私も図書委員です。

茅野さんは難しい本を読んでます。私はそれを見てます。見てます。

茅野さんがすずちゃんと呼んでくれました。茅野さんが言うとさわさわしますね？

茅野さんがタカハシさんと話してます。袖口だけは、嗅がないでお願い。

茅野さんと利き手の話をした時に、そっか、わかった。茅野さん、好きです。

茅野さんと雨に降られてつないだ手。ここから気持ち、伝わりません？

茅野さんが濡れた黒髪拭いてます。私のタオル、どうですか。どうですか。

茅野さんは女の子です。でも好きです。宇宙天気予報を見ます。

茅野さんに告白すると決めたので、屋上の鍵、あけてください。

茅野さんに好きですって言いました。困った顔はかわいかったです。

茅野さんは好きでもいいよと言いました。ありがとうで、いいんでしょうか。

茅野さんの「すずちゃん」の声、いつもより優しく長く聞こえてきます。

茅野さんは今日は冷たい顔でした。艶やかなんて思ってないです。

茅野さんは泣いていました。私には、わかりませんでした。（一緒に泣きました。）

茅野さんにキスして良い？と訊きました。卑怯ですよね、でも、でも、でも、でも。

茅野さんは、したあと笑ってくれました。はいいろの空を抜ければ夏です。