第三話 王都へ 後編

 道中は特に何が起こることも無く、夕方頃に王都を囲う大きな壁が遠目に見える所までやってきた。

 「おー……デカイ壁だ」

 「……大きい」

 「一応この国の中心だからね~。これ位しないとね?」

 馬車が飽きたシルフィをウルカに載せて壁を眺めてると、サラ姉が隣に並んで来た。

 「ふーん……繁栄してるんだな」

 「……?……っ!」

 シルフィは突然犬耳をピンッと立て辺りをキョロキョロ見渡していた。

 「シルフィちゃん?どうしたの?」

 「……何か、いる?」

 シルフィの言葉に騎士団の人達は全周を警戒しだし、俺も探知魔法を使った。

 「ふふふ、警戒がおそいねぇ」

 母さんはずっと前から気付いていたようだった。

 「見つけた……魔物が十体と……人の気配が……五……いや、四か」

 「やっと気付いたようだねぇ、人は最初八人居たよ。サラ、何で探知魔法を使っていなかったのかな?」

 「気を抜いていました、申し訳ありません!」

 「エル、気配の強さは分かるね?」

 「ああ、オーガっぽいのが二つとゴブリン種……が今九になった」

 「オ、オーガってホント?」

 「うん、サラ姉とレオ兄じゃ、キツいだろうから俺が行く。シルフィ馬車に」

 「ん!」(コクリ

 シルフィが馬車に移ったのを確認してウルカを走らせた。

 「あ、ちょっと、エル君ま――!?」

 サラ姉の言葉を無視して一気にウルカのスピードをトップまで上げた。


 サラSide


 「もう、無視して行っちゃって…」

 「ふふふ、付いていったとしても、サラ、アンタじゃ足手纏いになるさね。アレは、二体のキングオーガさ」

 「ちょっ!師匠!!だったらエルの奴危ないんじゃ!?」

 「そ、そうですよ!わ、私達でもエル君の援護くらいなら…」

 「心配は要らないよ、エルは単独でサラマンダーを倒せるからね。」

 「……ゑ?」

 「マジ…ッスか?」

 「ああ、因みにエルはキングオーガは下位の魔物って認識してるからねぇ」

 お師様は膝に乗せているシルフィちゃんの頭を撫でながら何でもないように言っていた。

 「わ、私見に行ってみます!魔法士班私に続いて!……ハァッ!!」

 「「「「ハッ!!」」」」

魔法士の皆が動いたのを確認して、愛馬の腹を蹴りエル君が向かった方に駆けた。

 「大丈夫だとは思うけど……無茶だけはしないでね!」


 サラSideEnd


 ウルカを走らせて少ししたら戦っている音が聞こえてきた。

 「……彼処だな」

 少し先に砂塵や魔法を発動したときに発する光が見えてきた。

 「ウルカ、少し此処で待っててくれよ?」

 ウルカから降り、頬を軽く撫でてから身分を隠すためにマントを着直して、フードを目深に被り戦闘場所に向かった。

 『待て!アレク!下がるんだ!』

 『えっ?グァァァァ!?』

 『クソ!隊長!アレクがやられました!!』

 『皆!離れないで纏まって戦いなさい!魔法士は近付けさせないようにして下さい!』

『『『了解!!』』』

 近づくにつれ喧噪が聞こえてきた。

 「少し、急いだ方が良いか…」

 左腰に差している白亜を抜きながら走るスピードを上げた。

 『私を使うのは久しぶりですね、御主人様。』

 右手に持ってる白い刀白亜から声が聞こえてきた。

 「そうだな、最近は黒亜ばかり使っていたからな、今回は頼むぜ」

 『お任せ下さい、全ての敵を斬り伏せてみせますよ』

 「頼りにしてるぜ」

 白い輝きを放ち殺る気を見せている白亜に苦笑を浮かべていると、直ぐ近くに近付いていたらしく目の前に居たオーガ?をすれ違いざまに斬った。

 『むぅ……斬り甲斐の無い魔物ですね』

 「そう言うな、楽にやれるんだからそれに超したことは無いだろ?」

 『それはそうですが……』

 お気に召してない白亜を宥めながら回りに居た全ての魔物を倒した。

 『もう終わりですか……御主人様、後でお手入れお願いしますね』

 「ああ、任せてくれ」

 「あの、すみません、少しよろしいでしょうか」

 白亜を鞘に納めたと同時に女騎士から声を掛けられた。

 「…………」

 ここで話しをして身分がバレるのはダメだと思って女騎士を無視してウルカの居る方に走った。

 「あっ!ちょっと!?」

 焦ったような声が聞こえたがそのまま走り去った。

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